縁仁【ENZIN】 捜査一課 対凶悪異常犯罪交渉係

鬼霧宗作

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事例2 美食家の悪食【エピローグ】

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 意を決して認可証を読ませると、三人で固まって独房に飛び込む。今日の坂田はベッドの上に腰をかけ、待っていたとばかりに、こちらを見据えていた。

「くくっ――そろそろ来る頃だろうと思ってたんだ」

 毎日毎日、坂田はただただ無為むいな一日を過ごしている。それこそ、縁や尾崎とは比べ物にならないような無為な一日を。ある意味、これが坂田に対する罰なのではないかとも思う。刑務作業もなければ、規律正しい生活が強要されるわけでもない。良い言い方をすれば自由なのであるが、この小さな独房の中で与えられる自由など、きっと苦痛でしかないだろう。時間を潰す手段もないし、当然ながら娯楽もない。ゆえに、彼にとって事件の報告なんてものは、最大のエンターテイメントである。

 縁と尾崎は拳銃を構え、そして倉科は鉄格子に歩み寄る。報告がないとへそを曲げる坂田。アンダープリズンで無為な時間の辛さを知った縁は、なんとなく坂田がへそを曲げる理由が分かったような気がした。まぁ、同情する気は微塵みじんもないのだが。

「あぁ、例の事件の報告に来てやったんだよ。ありがたく思えよ」

 倉科の言葉に気分を悪くするような様子もなく、にたりと笑みを漏らす坂田。何もすることがなく、ただただ時間を潰すばかりの毎日を過ごしているだろうから、このような変化が嬉しいのであろう。それにしても不気味な笑いである。

「随分と上から目線で物事を言うなぁ。お前、いつからそんなに偉くなったんだよ?」

 そう言って悪態をつくが、けれども本人は楽しそうだ。このまま話に乗ってやっても坂田が喜ぶだけであるし、下手をすると呑み込まれてしまう恐れもある。それは倉科も分かっているのか、あえて坂田の言葉を無視して切り出した。

「今回の事件で逮捕された中谷なんだが、いまだに犯行を全面的に否定しているそうだ。いや、犯行そのものは認めているみたいなんだが、それがどうして罪になるのか理解できていないらしい」

 あぁ、そうだろうな――。倉科の言葉に、縁は妙に納得してしまった。対峙した時も、先生は自らの罪を罪だとは思っていなかった。法的な観点から見て、警察に捕まるということはルールとして知っているが、人を殺すという行為が罪であると認識している様子は見受けられなかったから。

「責任能力はあるだろうが、精神鑑定に回されるだろうなぁ。着々と裏付け捜査は進んでいるみたいだし、中谷が犯人である証拠も続々出てきているそうだ」
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