縁仁【ENZIN】 捜査一課 対凶悪異常犯罪交渉係

鬼霧宗作

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事例2 美食家の悪食【エピローグ】

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 大抵、このような猟奇的な事件になると、まず容疑者は精神鑑定へと回される。その結果が判決を左右させることがあり、時として罪に問えない場合もあるのだ。もちろん、それは仕方のないことなのかもしれないが、しかし殺された人間からすれば堪ったものではない。

「そもそも、そこにないものを認識しろって言っているようなもんなんだよ。罪の意識ってのは、誰かに教わるようなものじゃなくて、人が潜在的に持ち合わせているもんだ。それが欠落している人間に、罪の意識がどうのって言ったところで、分からねぇもんは分からねぇんだよ」

 坂田はさも当然とばかりに言うが、果たして彼自身には罪の意識というものがあったのだろうか。いや、恐らくどこかで仕入れた知識を披露しているだけで、彼にも罪の意識がないのだろう。そうでなければ九十九殺しなどという異名はとらない。

「俺には罪の意識が分からないって言うほうが分からんがな。しかも、中谷の場合は善行をしていたという認識まである。精神鑑定も時間がかかるだろう」

 日本の司法制度は、その罪の重さが決まるまでに時間を要する。これはシステム的に見ても仕方のないことなのであろうが、犯人が逮捕されたことを報じるのは、ほんのその時ばかりであり、判決が下る前に、世の中からは忘れ去られてしまう。犯人の逮捕をうけ、このセンセーショナルな事件も、ようやく世の中に報じられたわけであるが、この事件もいずれは世間から忘れ去られてしまうのであろう。それを上塗りするかのごとく、事件は毎日のように起きているのだから。

「で、その後新たに分かったことは? まぁ、警察は間抜けだから、あんまり期待はしていないがよ」

「だから、裏付け捜査が進んでいると言ってるだろ? お前が思っているより警察も馬鹿じゃないんだよ」

 売り言葉に買い言葉。坂田の言葉に対して食い気味に答える倉科。縁は犯人が逮捕されるまでは事件にたずさわっていたが、その後は立場的な都合で捜査に関わっていない。その後、何か新たに分かったことがあるのなら、もちろん知りたい。中途半端なまま推理小説を取り上げられたようなものなのだから。

「まず、驚くべきことに犯行は、ごくごく一般的なマンションの一室で行われていたことが分かった。しかも、高級と呼ばれる部類のマンションで、中谷が住むマンションとは別に賃貸契約が結ばれていたらしい」
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