縁仁【ENZIN】 捜査一課 対凶悪異常犯罪交渉係

鬼霧宗作

文字の大きさ
569 / 581
事例4 人殺しの人殺し【解決篇】

17

しおりを挟む
「話を元に戻すぞ。レジスタンスリーダーの件がどれだけお粗末だったかって話だ」

 もう、最大の謎は解けてしまっていた。レジスタンスリーダーが握っていた鍵。それは世界で唯一の屋上の鍵だった。それがなければ屋上に鍵をかけることはできない。しかし、倉科達が駆け付けた際、屋上にはしっかりと鍵がかかっており、そして現場にはレジスタンスリーダーと縁しかいなかった。

 犯人はどのようにして現場を立ち去ったのか――。縁の証言と現場の状況から、そのような謎が浮かび上がってきたわけであるが、蓋を開けてみれば答えは簡単だったのだ。

 犯人は現場から立ち去ってなどおらず、倉科達が駆け付けた時も、その場にいた。つまり、あれは巨大な密室でもなんでもなかったのだ。小さな廃ビルの屋上で起きた殺傷事件にすぎなかったのである。もちろん、姉である円が屋上から飛び降りた――なんて事実はない。なぜなら、円もまた倉科達が駆け付けた時、現場にいたのだから。

 坂田も倉科と同じようなことを並べ立て、円をとにかく貶す、貶す、貶す。それに対して、円は笑みを浮かべてみたり、支離滅裂な返事をしてみたりする。なんだか、子ども同士の意地の張り合いみたいに見えるのは、倉科だけなのだろうか。

「お前が現場にいて、レジスタンスリーダーを殺害した上で、妹のほうと人格交代をした。その際、妹にまた嘘でも吹き込んだんだろうなぁ。状況さえ把握できていなかった妹のほうは妹のほうで、お前のお粗末な嘘を信じちまったわけだ。まぁ、飛び降りた……なんて、後で調べれば嘘だと分かるような嘘だったわけだが」

 坂田はそこで呆れたかのように溜め息を漏らした。殺人蜂の事件。実際に殺害はされなかったが、その次に狙われた悪食。そして、屋上の密室で殺害されたとばかり思っていたレジスタンスリーダー。これらの全てを紐解く鍵は、たったひとつだけだった。

 ――山本縁と山本円は同一人物である。

 この事実ひとつだけで事件の意味が全く変わってくる。この事件には、頭を使って真剣に考えなければ答えが出ないようなダイイングメッセージは存在しなかった。屋上を密室にするためのトリックもなかった。実に単純明解な事件だったのだ。

「さて、これで分かって貰えたか? お前がどれだけお粗末なことをして来たかがよ。挙げ句、そのままのノリで俺を殺そうなんぞ百年早ぇよ」
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

処理中です...