縁仁【ENZIN】 捜査一課 対凶悪異常犯罪交渉係

鬼霧宗作

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事例4 人殺しの人殺し【解決篇】

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「さて、かなりお粗末だった殺人蜂の事件。それこそ、犯人を極端に限定してしまうダイイングメッセージを見落としたのは、どうかと思うぜ。ただ、レジスタンスリーダーの件はもっと酷い。お粗末、乱暴、無計画のオンパレードだ」

 くどいようだが、坂田は真犯人を暴くために推理を並べ立てているのではない。いかにして円を貶すか――それだけのために、本来ならば犯人を辿るための推測を利用している。犯人は分かっているし、犯人自身もそれを認めている。それなのに、坂田の口からは新事実が語られていくというのは、中々に斬新なやり方だと思う。

「坂田、ちょっと待って欲しいっす……」

 話の展開についていけなくなったのか、そこで尾崎がストップをかける。坂田は面白くなさそうに「なんだよ?」と、視線を投げかける。

「実害はなかったっすけど、悪食の件も――そういうことなんすよね?」

 悪食は円の魔の手を免れていた。それは悪食本人が、軟禁される身であったからだ。とんでもない事件を起こしてしまった人間なのだから、精神的な面を調べるにしても、裁判を待つ身だとしても、外で自由に放し飼いされているわけではない。凶悪殺人鬼に保釈なんて言葉や制度は存在しない。

「殺人蜂が殺されたんだから、次は悪食が殺されるに違いないわ――。私はそれを阻止しなければならないから、チョンマゲさん、そっちはよろしくお願いします。やっぱりお姉ちゃんが悪食を狙っていたわ。私がなんとかしなくちゃ――なんとかなったわ。良かった……っていう、壮大な一人芝居をしていただけなんだよ。わざわざこの街から離れてローケーションを整えてなぁ」

 本人は冗談半分、円を貶すため半分なのであろうが、体をくねくねさせながら急に女言葉を使い出した坂田は、気味が悪い以外のなにものでもなかった。言動のインパクトが強すぎて、あまり坂田の言葉が頭に入ってこなかったが、つまりは縁と円――もとよりひとつの体を共有している人格同士がイタチごっこをしていたということになるのだろう。円のことを別人だと思い込んでいる縁はまだしも、自分のことを客観的に把握してしまっている円のほうは、全てを分かった上で一人芝居をしていたことになるのだから、狂っているなんてレベルではない。

「縁は自分のことをチョンマゲだなんて言わねぇっす……」

 どんなに抗おうとも、どれだけ否定しようとも、今回の事件の犯人は円であり、縁と円が同一人物であることは揺るがない。ぽつりと否定した尾崎の一言は、明らかに元気がなかった。
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