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最終章 お悔やみ様と僕らの絆
第六話
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江崎に遼子からメールが送られていたことは、犯人には知りえない情報だった。そして、この遼子からのメールこそが、犯人の正体を葛西に気付かせた決定打だったのである。たった二文字のメッセージが、これまで葛西の頭の中に混在していた情報を全て結び付けてくれたのだ。
「それじゃあ【あ行】における【お】を【か行】で打つと、どの文字になる?」
おばさんの表情が強張っていくのが見える。遼子のダイイングメッセージの存在を知らされ、そして目の前で自身の名前が浮き彫りにされるのだから、いい気分になる人間などいないだろう。
「――【こ】になるよな」
葛西が言わんとしていること。そこに犯人の名前が記されていることに気付いた江崎は、葛西へと答えた後に「そういうことか」と呟き落とした。
「かぁこ、同じように【か行】における【く】を【さ行】で打つと?」
「うん……【す】になるよね?」
葛西は佳代子の答えに力強く頷いた。つまり、遼子は『おく』と文字を打っている最中に力尽きたのではなく『こす』と文字を打っている最中に力尽きてしまったのだ。そして、この『こす』に続くであろう文字ならば心当たりがある。
「程島が正確にメールを打てていたならば、もっと早く犯人にたどり着けたのかもしれない。だが、彼女が最期の力を振り絞ったからこそ、こうして真相にたどり着くことができた。恐らく、この文字列に続く文字は『濁点』と『え』だと思う。これを続けて読むと――俺達の良く知っている人物の名前になるんだよ」
江崎、葛西、そして佳代子の視線がおばさんに向けられた。おばさんは困惑したかのように首を横に振った。
「これまでは当たり前のように【親しき仲にも礼儀あり条約】を守ってきたけど、紛らわしいからいつも通りの呼び方で呼ばせて貰うよ、おばさん――」
葛西はそう言うと、一呼吸を置く。沙織の母親であるおばさんが持つ、もう一つの立場のほうの名前を吐き出すために心の準備が必要だったのかもしれない。
「いいや、糸井先生……」
そう、江崎達の目の前にいたのは、沙織の母親であると同時に、三年一組の担任でもある糸井梢だった。
当然ではあるが、担任の先生が沙織の母親であることは、江崎はもちろんのこと葛西と佳代子も知っていた。他のクラスメイトはきっと知らないとは思う。沙織が学校で母親の話題を出すのを嫌い、極力話さないようにしていたから――。まぁ、離婚によってバラバラに暮らすことになった母親が担任だなんて話、喜んでしたがる娘などいないだろう。
「それじゃあ【あ行】における【お】を【か行】で打つと、どの文字になる?」
おばさんの表情が強張っていくのが見える。遼子のダイイングメッセージの存在を知らされ、そして目の前で自身の名前が浮き彫りにされるのだから、いい気分になる人間などいないだろう。
「――【こ】になるよな」
葛西が言わんとしていること。そこに犯人の名前が記されていることに気付いた江崎は、葛西へと答えた後に「そういうことか」と呟き落とした。
「かぁこ、同じように【か行】における【く】を【さ行】で打つと?」
「うん……【す】になるよね?」
葛西は佳代子の答えに力強く頷いた。つまり、遼子は『おく』と文字を打っている最中に力尽きたのではなく『こす』と文字を打っている最中に力尽きてしまったのだ。そして、この『こす』に続くであろう文字ならば心当たりがある。
「程島が正確にメールを打てていたならば、もっと早く犯人にたどり着けたのかもしれない。だが、彼女が最期の力を振り絞ったからこそ、こうして真相にたどり着くことができた。恐らく、この文字列に続く文字は『濁点』と『え』だと思う。これを続けて読むと――俺達の良く知っている人物の名前になるんだよ」
江崎、葛西、そして佳代子の視線がおばさんに向けられた。おばさんは困惑したかのように首を横に振った。
「これまでは当たり前のように【親しき仲にも礼儀あり条約】を守ってきたけど、紛らわしいからいつも通りの呼び方で呼ばせて貰うよ、おばさん――」
葛西はそう言うと、一呼吸を置く。沙織の母親であるおばさんが持つ、もう一つの立場のほうの名前を吐き出すために心の準備が必要だったのかもしれない。
「いいや、糸井先生……」
そう、江崎達の目の前にいたのは、沙織の母親であると同時に、三年一組の担任でもある糸井梢だった。
当然ではあるが、担任の先生が沙織の母親であることは、江崎はもちろんのこと葛西と佳代子も知っていた。他のクラスメイトはきっと知らないとは思う。沙織が学校で母親の話題を出すのを嫌い、極力話さないようにしていたから――。まぁ、離婚によってバラバラに暮らすことになった母親が担任だなんて話、喜んでしたがる娘などいないだろう。
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