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#2 ぼくとわたしと禁断の数字【糾弾ホームルーム篇】

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 姫乙は何事もなかったかのごとく淡々と言ってくれるが、とりあえず簡単にやってみた【不定数ナンバーコール】で、6人もの仲間が死んだのだ。チーム戦にすれば一度に多くの人が死ぬことなんて分かりきったことなのに、まるで反省点のように語られるのは面白くない。

「それとぉ、平和的に全員が無事に【アントニオ】成立でゲームから抜けるなんて、間抜けな終わり方はデスゲームの尊厳を損ねてしまいますねぇ。ですから、次からこうしまぁぁぁす。これまで通り【アントニオ】でゲームから抜けるのはありですがぁ、仮に1人を除いて全員がゲームから抜けてしまった場合、残った1人は強制的に負けとみなしますぅ」

 安藤達を置いてきぼりにして改定されるルール。まず、根本的にチーム戦から個人戦へとシフトするらしい。そして大きく変わるのは【アントニオ】に対するルール。ついさっき、安藤達は全チームが【アントニオ】を成立させるという、平和的な着地点を見つけた。もし仮に【10】が【デスナンバー】として指定されていれば、本当に全チームがゲームから抜けるという結末になっていたことだろう。しかし、次からはこれが許されない。姫乙の言っていることをさっきのチーム戦に重ねて考えるのであれば、安藤達のチームと本田達のチームがゲームから抜けた時点で、残った根津のチームは負けということになる。

「さてぇ、それを踏まえた上でぇ、次の【デスナンバー】を【ナンバーキーパー】に決めて貰うことにしますぅ」

 改悪されたルールに一同が戸惑う中、けれども姫乙はそれが当然だとばかりに話を進める。教室の後ろのほうでは、ころころと変更されるルールを、全国民に分かりやすく説明しなければならないため、アンジョリーヌが難儀しているようだった。この空間の中にあって、しかしアンジョリーヌ達は決して敵ではない。さっきの彼女の毅然きぜんとした態度を見て、そう思ったのは安藤だけではないだろう。

「姫乙、その前にひとつ確認。これは【糾弾ホームルーム】でもあるんだよねぇ?」

 ちらりとカメラのほうへと視線をやる仕草は、まるでクラスメイトの死などなかったかのように爽やかであり、一瞬だけ見せた笑顔は、明らかにカメラの向こう側を意識している。お通夜のような雰囲気さえ漂っている中で、彼は――伊勢崎は平常運転のようだった。

「えぇ、その通りですぅ。あくまでも諸君らは【糾弾ホームルーム】の時間内で【レクリエーション】をしているにすぎませぇぇぇん」
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