上 下
143 / 468
#2 ぼくとわたしと禁断の数字【糾弾ホームルーム篇】

27

しおりを挟む
 姫乙の返事を聞いて、安藤はふと考える。この状況を切り抜けるには、果たしてどうしたら良いのか。もっと具体的に言ってしまえば、見つけてしまったのだ。これ以上、誰も死なずに済む方法を。

 簡単だ。この段階でクラスメイトと協議をして、この中に潜んでいる【ナンバーキーパー】の正体を暴けばいい。このゲームはあくまでも【糾弾ホームルーム】内で行われている【レクリエーション】にすぎないのだから、当然ながら【糾弾ホームルーム】さえ終わってしまえば、ゲームも続行できなくなる。そして【糾弾ホームルーム】を終わらせる条件は、制限時間が訪れるか、アベンジャーが糾弾されるかのいずれかだ。

「だったら、現段階でみんなと議論をしておきたいんだけど」

 きっと伊勢崎の狙いもそれなのだ。議論を行っている以上、姫乙もゲームを進行させることができないと思われる。すなわち、足止めという意味でも【糾弾ホームルーム】を優先させるメリットがある。

「えぇ、今は【糾弾ホームルーム】の最中ですからねぇ。もちろん、活発に意見交換を行っていただいても結構ですぅ」

 言ってしまえば時間稼ぎではあるが、ゲームが行われない以上、誰も死にはしない。このゲームは勝利する手段がなく、負けないことが重要になってくる。そう――負けさえしなければいいのである。

「だったら、早速だけど議論のほうに入ろう。ここまでの流れを見て、誰が【ナンバーキーパー】なのか。分かった人はいるかい?」

 周囲に全くの相談をせずに始めてしまった伊勢崎であるが、彼くらいの強引さが今は必要なのかもしれない。正当な流れで考えれば、姫乙に言われるままにゲームを続行していてもおかしくなかったのに、そこから良い意味で脱線したのだから。しかし、これはこれで正当な脱線。だったら最初から用意されていた抜け道とでも言うべきか。

「げ、現状では断定できないけどさ――。う、疑われて当然のようなことをした奴は、い、いるよなぁぁ」

 伊勢崎の意図を汲み取ってやるのであれば、ここで自然と議論が活発化するような空気を作ればいい。だからこそ、伊勢崎も周囲に意見を求めるような形で第一声を発したのであろうが、意外なことに真っ先に反応を示したのは星野崎だった。話に割り込むような強引さを感じるのは、どこかで星野崎を無意識に避けているのであろう。だからこそ、彼が輪の中へと無理矢理に入り込もうとしているように感じてしまうのだ。
しおりを挟む

処理中です...