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#4 放課後殺人ショー【糾弾ホームルーム篇】

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 正解をあらかじめ知っているからこそ、姫乙は正確なジャッジを下すことができる。姫乙ジャッジメントだかなんだか知らないが、しっかりと根拠のある審判を姫乙は下しているのである。当たり前だが、その審判に誤りがあってはならない。安藤達の生死を左右させるものであるし、そこに間違いが起きるのであれば、そもそも【糾弾ホームルーム】そのものが成立しない。

「つまり、絶対に間違えたりすることはないと?」

 どうにも芽衣は、奇妙な部分にこだわっているようだった。姫乙は事件のことを把握している。それこそ、監視カメラのひとつやふたつが使えなかったとしても、アベンジャーが誰なのかは知っているし、どのように犯行を実行に移すのかも聞いているはず。様々な要因を統合して考えても、この【糾弾ホームルーム】の審判を下せるだけの条件は整っているだろう。そうでなければ、全てが根底から崩れてしまう。

「えぇ、何を今さらおっしゃるのですかねぇ? 確かにぃ、今回は材料が少ないですしぃ、現場の調査にも少しばかり手こずってしまった印象がありますぅ。ですがぁ、この姫乙が責任をもちましてぇ、真実を諸君らに問い、そして真実と寸分もたがいなく審判しなければならないのですよぉ。間違いなど許されるわけがないのです」

 人の命が左右されるのだから、姫乙は自分の立ち位置にそれなりの矜持きょうじと覚悟を持っているのだろう。そうでもなければ、法案のモデルケースとして2年4組を好き放題にできるわけがない。その責任の重さがあるからこそ【糾弾ホームルーム】は存在する。その責任の重さがあるからこそ、姫乙は奔放な言動が許されているのかもしれない。

「――そう、それを聞いて安心したわ」

 芽衣と姫乙のやり取りは、そこで終了となった。今さらになって芽衣は何を確認したかったのか。ごくごく当たり前のことを問う彼女の真意はどこにあるのだろうか。どうにも違和感があった。

 教室でのやり取りが繰り広げられている間に、アンジョリーヌが照明さんと音声さんのところへと向かい、リピート再生が要望されていることを伝えたのであろう。またしても映像が画面に映し出された。どのようにやったのか分からないが、数分くらいの映像が終わると、また頭から再生されるようになった。これで常に映像がリピートで教室内に流れることになる。

 材料が少なく、できれば映像にヒントを見出したいところ。そう思いつつテレビを見つめるが、しかし特に目新しいものは見つけられない。
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