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#1 毒殺における最低限の憶測【プロローグ】

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曽根崎結城そねざきゆうきくーんと、田中伊乃理たなかいのりさーんは、残念ながら亡くなったために二人とも欠席と――。って、このクラス死人ばっかりやないかぁぁぁい!」

 教室は相変わらず静まり返っている。みんなが姫乙の一挙手一投足に注目し、目を離そうとしなかった。死亡したと告げられるクラスメイトの机には、ことごとく花瓶に挿された菊の花が開いていた。

「あー、今のところ実は笑うところね。えー、滑ったので、続けますぅ」

 格好は黒のスーツで決めているくせに、独特の間延びした喋り方と、やはり坊ちゃん刈りがアンバランスで、その存在自体が不気味である。何よりも死んでしまったクラスメイトのことを笑い者にするような態度が恐ろしかった。人を人と思っていないとしか考えられない。それでも、まだまだ姫乙の出席確認は続く。

津幡央つばたおうくーん……も、死んでるのかぁ。いやいやぁ、ちょっと初っ端から飛ばしすぎじゃないかなぁ? きっと今回の事件を起こした復讐者は、随分とこのクラスを恨んでいたに違いありませんねぇ」

 異様だった。全てが異様だった。そもそも、姫乙は安藤達のクラス担任でもなんでもないのだ。それに、二ヶ所ある教室の出入口、姫乙の隣、そして教室の後ろがわの奥には、武装した兵隊みたいな格好の人間が立っている。これが当たり前になってること自体が異常である。

 迷彩服に黒の目出し帽をかぶり、そして頭には白いヘルメットをかぶっている。足元はアーミーブーツであり、小銃のようなものを構えていた。その小銃が本物であることは間違いなさそうだ。つまり、本物の銃を持った兵隊みたいな連中が出入り口を封鎖し、それどころか怪しい動きは許さんとばかりに配置についている。そんな非日常的な空間の中で姫乙が出席確認の真似事をしているのだ。これを異様と言わずして、何を異様と言うのだろうか。

中山春人なかやまはるひとくーん、沼田友希ぬまたゆきさーん……も死んでるとか、ちょっと死に過ぎだろぅ。――飛ばし過ぎじゃねぇ? ちょっとアベンジャー復讐者の奴、復讐し過ぎじゃねぇ? いくらやりたい放題できるからって、やり過ぎじゃねぇぇ?」
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