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第一章 好奇心の代償【現在 七色七奈】
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自分ではほとんど寝ていないつもりであっても、なぜだか目覚めがスッキリとしている時がある。今の私がまさしくそれであり、大して寝てもいないはずなのに、意識だけははっきりしており、また眠気も綺麗さっぱり吹き飛んでいた。
時間を確認してみると、まだ午前の6時過ぎ。世の中において、これが早い時間なのか否かは分からないが、少なくとも私からすれば、かなり早い時間になる。むろん、こんなに早々と動き出すつもりはなかった。
人間というものは不便なもので、定期的にエネルギーを摂取しなければ生きていけない。しかも、エネルギーを摂取するように促すアラート機能付きだ。そのアラート機能――すなわち、私の腹の虫が小さく鳴いた。
朝食を購入するためにコンビニへと入る。おにぎりとカップサラダ、それにコーヒーを購入。レジへと持っていくと、初老くらいの恰幅の良いおばさんが、私のことを訝しげな表情で見てきた。
「お客さん、見ない顔だね――」
レジに商品を通しながら、初っ端からタメ口全開で話しかけてくるおばさん。もしかすると、相手は親愛の意味を込めてタメ口なのかもしれないが、私はこの田舎特有の……馴れ馴れしく話しかけてくる接客というのが、あまり好きではない。
「あ、はい。小さい頃はこちらのほうに住んでいたのですが」
正直なところ完全なる余所者というやつなのだが、しかしながら余所者扱いされるのが面白くなかった私は、かつてこの地に住んでいたことを負け惜しみのごとく漏らした。うまくあしらったつもりだったのだが、田舎というのは実に狭いことを思い知らされる。
「ここ十数年の間に、この辺りを出て行ったってことは――あぁ、もしかして七色さんところの」
あぁ、なんとも田舎というものは恐ろしい。都会は都会で近所付き合いが希薄だなんていうが、田舎は田舎で他人のプライベートスペースに踏み込み過ぎなのではないかと思う。それだけ田舎というものは世界が狭いわけだが。
両親が離婚した際、私は父と一緒にこの街を出た。この街の出身なのは母のほうであり、婿養子ではないものの、父が母の家に入る形で生活していたのだ。形式的に父の戸籍に母が入籍しただけであり、事実上の婿養子だったのではないか――と、大人になった今では思っている。
「は、はい。まぁ、そうですけど……」
そう答えると、私のことを値踏みするように見てくる店員のおばさん。本人に悪気があるわけではないのかもしれないが、私からすれば不愉快以外のなんでもない。
時間を確認してみると、まだ午前の6時過ぎ。世の中において、これが早い時間なのか否かは分からないが、少なくとも私からすれば、かなり早い時間になる。むろん、こんなに早々と動き出すつもりはなかった。
人間というものは不便なもので、定期的にエネルギーを摂取しなければ生きていけない。しかも、エネルギーを摂取するように促すアラート機能付きだ。そのアラート機能――すなわち、私の腹の虫が小さく鳴いた。
朝食を購入するためにコンビニへと入る。おにぎりとカップサラダ、それにコーヒーを購入。レジへと持っていくと、初老くらいの恰幅の良いおばさんが、私のことを訝しげな表情で見てきた。
「お客さん、見ない顔だね――」
レジに商品を通しながら、初っ端からタメ口全開で話しかけてくるおばさん。もしかすると、相手は親愛の意味を込めてタメ口なのかもしれないが、私はこの田舎特有の……馴れ馴れしく話しかけてくる接客というのが、あまり好きではない。
「あ、はい。小さい頃はこちらのほうに住んでいたのですが」
正直なところ完全なる余所者というやつなのだが、しかしながら余所者扱いされるのが面白くなかった私は、かつてこの地に住んでいたことを負け惜しみのごとく漏らした。うまくあしらったつもりだったのだが、田舎というのは実に狭いことを思い知らされる。
「ここ十数年の間に、この辺りを出て行ったってことは――あぁ、もしかして七色さんところの」
あぁ、なんとも田舎というものは恐ろしい。都会は都会で近所付き合いが希薄だなんていうが、田舎は田舎で他人のプライベートスペースに踏み込み過ぎなのではないかと思う。それだけ田舎というものは世界が狭いわけだが。
両親が離婚した際、私は父と一緒にこの街を出た。この街の出身なのは母のほうであり、婿養子ではないものの、父が母の家に入る形で生活していたのだ。形式的に父の戸籍に母が入籍しただけであり、事実上の婿養子だったのではないか――と、大人になった今では思っている。
「は、はい。まぁ、そうですけど……」
そう答えると、私のことを値踏みするように見てくる店員のおばさん。本人に悪気があるわけではないのかもしれないが、私からすれば不愉快以外のなんでもない。
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