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ケース1 密室殺人事件を妄想する御令嬢【出題編】
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走り去る車のエンジン音を聞いて、なんだか無性に虚しくなった。一体、自分はこんなところで何をやっているのだろうか。見ず知らずの土地に放り投げられ、しかもこれから買い出しをして戻らねばならない。お嬢様お世話係――確かに逃げ出したくなるような仕打ちばかりだ。
いっそのこと、このまま無視して帰ってやろうかとも考えた。大体、買い出しといっても、何を買って帰ればいいのか分からない。とりあえず食べるものと寝るために必要な寝袋か。いくら事故物件が好きでも、あのベッドに直接寝ようとはしないだろう。――まさか、シャワーが浴びたいとか言い出しはしないだろうな。
不安が入り混じる中、一里之はホームセンターの中へと足を踏み入れる。時刻的にピークは過ぎたのか、随分と客入りが少なかった。
店内には、確かにトラックの貸し出しをするという旨の表記があった。ただ――例えば日を跨いでトラックを借りるなんてことは可能なのだろうか。もはや不安しかない。
それでも思いつく限りのものを買い込んだ。そして運命の時。レジで会計をしている最中に、一里之は窓辺野の名前を出した。
「あの、可能であればなんですけど、窓辺野不動産にツケておいて貰えませんか?」
ここは会社から離れた場所にあるホームセンターだ。会計の額によっては自腹でも構わなかったのであるが、さすがに財布の中身だけでは足りない金額になってしまった。ゆえに、駄目で元々の精神で言ってみる。すると、レジをしてくれた女性店員が、少し宙へと視線を泳がせた。やはり、窓辺野不動産でのツケには無理があったか。
「まぁ、こんな遠方までわざわざありがとうございます。窓辺野不動産様ですね? 領収書はどうなさいますか?」
その言葉に一里之は大きく溜め息を漏らした。会社はそこそこに大きな会社であるが、離れた場所にある店舗でさえツケがきくなんて思わない。手広く事業をやっているからこそからなのか。
「あ、はい。お願いします。それと――トラックをお借りできたらありがたいのですが」
勝手にこんなことをして会社から怒られないだろうか。いまだに会社に対して低姿勢な自分に嫌気がさす。いやいや、こんなわけの分からない仕事を与えられたのだ。これくらいのことをしても罰はあたらない。
トラックは本来ならばその日のうちに返却しなければならない決まりらしかった。しかしながら、女性店員さんが上の人間に掛け合ってくれて、翌日の返却でも構わないということになった。窓辺野不動産――どこまでの力を持っているのか。
いっそのこと、このまま無視して帰ってやろうかとも考えた。大体、買い出しといっても、何を買って帰ればいいのか分からない。とりあえず食べるものと寝るために必要な寝袋か。いくら事故物件が好きでも、あのベッドに直接寝ようとはしないだろう。――まさか、シャワーが浴びたいとか言い出しはしないだろうな。
不安が入り混じる中、一里之はホームセンターの中へと足を踏み入れる。時刻的にピークは過ぎたのか、随分と客入りが少なかった。
店内には、確かにトラックの貸し出しをするという旨の表記があった。ただ――例えば日を跨いでトラックを借りるなんてことは可能なのだろうか。もはや不安しかない。
それでも思いつく限りのものを買い込んだ。そして運命の時。レジで会計をしている最中に、一里之は窓辺野の名前を出した。
「あの、可能であればなんですけど、窓辺野不動産にツケておいて貰えませんか?」
ここは会社から離れた場所にあるホームセンターだ。会計の額によっては自腹でも構わなかったのであるが、さすがに財布の中身だけでは足りない金額になってしまった。ゆえに、駄目で元々の精神で言ってみる。すると、レジをしてくれた女性店員が、少し宙へと視線を泳がせた。やはり、窓辺野不動産でのツケには無理があったか。
「まぁ、こんな遠方までわざわざありがとうございます。窓辺野不動産様ですね? 領収書はどうなさいますか?」
その言葉に一里之は大きく溜め息を漏らした。会社はそこそこに大きな会社であるが、離れた場所にある店舗でさえツケがきくなんて思わない。手広く事業をやっているからこそからなのか。
「あ、はい。お願いします。それと――トラックをお借りできたらありがたいのですが」
勝手にこんなことをして会社から怒られないだろうか。いまだに会社に対して低姿勢な自分に嫌気がさす。いやいや、こんなわけの分からない仕事を与えられたのだ。これくらいのことをしても罰はあたらない。
トラックは本来ならばその日のうちに返却しなければならない決まりらしかった。しかしながら、女性店員さんが上の人間に掛け合ってくれて、翌日の返却でも構わないということになった。窓辺野不動産――どこまでの力を持っているのか。
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