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ケース4 ロンダリングプリンセス誕生秘話【出題編】
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ふと、その時のことである。千早のほうからスマホの着信音らしきものが流れる。ひと昔前は着信メロディーやら、着うたなんてものもあったが、一周回ってシンプルなデフォルトの着信音に世の中は落ち着いた。もっとも、千早ならば着信メロディーなどが流行っていても、デフォルト設定で使っていそうなものだが。
「すいません、少し失礼します」
断りを入れるとスマホを取り出す千早。ディスプレイを確認すると、部屋の外へ。部屋に残されたのは愛の母親と一里之だけ。なんとなく気まずい。
「あの、愛って……あんまり家族のことを話したがらなかったっていうか、なんか関わらせたくないみたいで。だから、今まで挨拶すらできなくて」
今さらになって、ようやく愛と交際していたことを知られ、そして千早に後押しされる形で挨拶をした一里之。なんとなく気まずくて、それっぽいことを言いたかったのであるが、しかし口から出てきたのは苦し紛れのような言い訳だった。確かに、愛は家族のことを話したがらなかったし、一里之が関与しないようにしていた節がある。もしかすると親子仲が悪いのかとも思ったのであるが、そうでもなさそうだ。
「あぁ、もしかしたらそうかもしれないわねぇ。だって――」
「一里之君、斑目さんから呼び出しです。興味深いことが分かったらしいので、今から警察署に向かいます」
愛の母親の言葉を遮るかのごとく千早が言う。斑目にも協力を要請していたのだろう。
「え? あぁ――」
会話を途中でぶった斬られてしまったことに戸惑っていると、千早は頭を深々とさげて愛の母親に挨拶。
「では、またお聞きしたいことがあったらお邪魔させていただくと思います。その時は是非ともご協力をお願いします」
いや、まだろく話も聞けていないではないか。どうしていいのか分からずに戸惑っていると、千早が強引に一里之の腕を引っ張り上げた。
「――行きましょう。斑目さんが待っています」
思い立ったが吉日とばかりに、せわしなく家を出ようとする千早。こんなにせっかちで短気な性格ではなかったと思うのだが。
「そ、それじゃあ。その、ご馳走様でした」
お茶をいただいた礼をすると、なかば千早に引きずられるようにして家を後にした。
「どうしたんだよ、猫屋敷。あんなに慌てて家を出る必要なかっただろうに」
助手席に乗り込んだ一里之は、運転席ですました顔をしている千早に向かってクレームをつけた。事情はどうであれ、あの帰り方はさすがに失礼だ。
「すいません、少し失礼します」
断りを入れるとスマホを取り出す千早。ディスプレイを確認すると、部屋の外へ。部屋に残されたのは愛の母親と一里之だけ。なんとなく気まずい。
「あの、愛って……あんまり家族のことを話したがらなかったっていうか、なんか関わらせたくないみたいで。だから、今まで挨拶すらできなくて」
今さらになって、ようやく愛と交際していたことを知られ、そして千早に後押しされる形で挨拶をした一里之。なんとなく気まずくて、それっぽいことを言いたかったのであるが、しかし口から出てきたのは苦し紛れのような言い訳だった。確かに、愛は家族のことを話したがらなかったし、一里之が関与しないようにしていた節がある。もしかすると親子仲が悪いのかとも思ったのであるが、そうでもなさそうだ。
「あぁ、もしかしたらそうかもしれないわねぇ。だって――」
「一里之君、斑目さんから呼び出しです。興味深いことが分かったらしいので、今から警察署に向かいます」
愛の母親の言葉を遮るかのごとく千早が言う。斑目にも協力を要請していたのだろう。
「え? あぁ――」
会話を途中でぶった斬られてしまったことに戸惑っていると、千早は頭を深々とさげて愛の母親に挨拶。
「では、またお聞きしたいことがあったらお邪魔させていただくと思います。その時は是非ともご協力をお願いします」
いや、まだろく話も聞けていないではないか。どうしていいのか分からずに戸惑っていると、千早が強引に一里之の腕を引っ張り上げた。
「――行きましょう。斑目さんが待っています」
思い立ったが吉日とばかりに、せわしなく家を出ようとする千早。こんなにせっかちで短気な性格ではなかったと思うのだが。
「そ、それじゃあ。その、ご馳走様でした」
お茶をいただいた礼をすると、なかば千早に引きずられるようにして家を後にした。
「どうしたんだよ、猫屋敷。あんなに慌てて家を出る必要なかっただろうに」
助手席に乗り込んだ一里之は、運転席ですました顔をしている千早に向かってクレームをつけた。事情はどうであれ、あの帰り方はさすがに失礼だ。
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