280 / 391
ケース5 誕生秘話は惨劇へ【出題編】
57
しおりを挟む
「おい、こんなところで煙草を吸っている場合じゃないだろ?」
無視をされても食らいつく鯖洲に、男はただ首を横に振った。
「もう表に車は回してあるさ。それに、お客人の前でその態度はやめたほうがいい」
男に軽くあしらわれてしまった様子の鯖洲は、聞こえるように舌打ちをすると、紫煙を燻らせた。自然と男と目が合うと、まだ随分と長かったにも関わらず、煙草を消して男は頭を下げる。
「寺山――と申します。この度は、わざわざありがとうございます」
なかば分かっていたのであるが、目の前にいる男が寺山という男らしい。丁寧に挨拶してもらったことに恐縮しつつ頭を下げ返す。
「斑目といいます。どうぞ、よろしくお願いします」
寺山は鯖洲と話す時は別人であるかのごとく柔和な笑みを浮かべ「こちらこそ、よろしくお願いします」と一言。それを見た鯖洲が鼻で笑う。察するに、寺山と鯖洲は仲が悪いのであろう。
「――じゃあ、俺は先に行く。あんまり煙草臭ぇとお嬢と玄界灘がうるせぇからな。玄界灘のやつなんて自分でも電子煙草やってるくせによ」
そうぼやきつつ、体にまとわりついた煙を払うかの動作をする鯖洲。先にブースを出て、屋敷の中へと戻ってしまった。慌てて残りの分を吸ってしまうと、寺山に頭を下げてブースを後にする。ただでさえ広大な屋敷なのだ。置いていかれたら迷う自信がある。
裏口から屋敷の中に戻ると、どうやら待ってくれていたらしい。鯖洲が腕組みをして廊下の壁に寄りかかっていた。
「悪いな。俺はあいつが昔から気に入らなくてよ。あっちもあっちで、極道に偏見があるみたいで、あの様さ。あんまり気を悪くしないでくれや」
まさか、そんな点で気を遣ってもらえるとは思いもしなかった。斑目は「いえ、大丈夫です」と返した。見た目とは違い、様々なところに気を回せる人らしい。人は見た目で判断してはならないというが、まさしくその通りである。
「さて、お嬢と玄界灘も待ってるだろうし、表のほうに向かうか。まぁ、車に乗ってる時は寝てるだろうからよ。さっきみたいな諍いは起きない。心配せんでくれ」
誰かと誰かが険悪。それだけで第三者が気を遣ってしまうものである。それを理解している鯖洲は、きっと性根は優しい人間なのであろう。
鯖洲と一緒に表へと向かう。どこで追い越されたのかは分からないが、すでに車は表に回されており、運転席の側には寺山の姿があった。
無視をされても食らいつく鯖洲に、男はただ首を横に振った。
「もう表に車は回してあるさ。それに、お客人の前でその態度はやめたほうがいい」
男に軽くあしらわれてしまった様子の鯖洲は、聞こえるように舌打ちをすると、紫煙を燻らせた。自然と男と目が合うと、まだ随分と長かったにも関わらず、煙草を消して男は頭を下げる。
「寺山――と申します。この度は、わざわざありがとうございます」
なかば分かっていたのであるが、目の前にいる男が寺山という男らしい。丁寧に挨拶してもらったことに恐縮しつつ頭を下げ返す。
「斑目といいます。どうぞ、よろしくお願いします」
寺山は鯖洲と話す時は別人であるかのごとく柔和な笑みを浮かべ「こちらこそ、よろしくお願いします」と一言。それを見た鯖洲が鼻で笑う。察するに、寺山と鯖洲は仲が悪いのであろう。
「――じゃあ、俺は先に行く。あんまり煙草臭ぇとお嬢と玄界灘がうるせぇからな。玄界灘のやつなんて自分でも電子煙草やってるくせによ」
そうぼやきつつ、体にまとわりついた煙を払うかの動作をする鯖洲。先にブースを出て、屋敷の中へと戻ってしまった。慌てて残りの分を吸ってしまうと、寺山に頭を下げてブースを後にする。ただでさえ広大な屋敷なのだ。置いていかれたら迷う自信がある。
裏口から屋敷の中に戻ると、どうやら待ってくれていたらしい。鯖洲が腕組みをして廊下の壁に寄りかかっていた。
「悪いな。俺はあいつが昔から気に入らなくてよ。あっちもあっちで、極道に偏見があるみたいで、あの様さ。あんまり気を悪くしないでくれや」
まさか、そんな点で気を遣ってもらえるとは思いもしなかった。斑目は「いえ、大丈夫です」と返した。見た目とは違い、様々なところに気を回せる人らしい。人は見た目で判断してはならないというが、まさしくその通りである。
「さて、お嬢と玄界灘も待ってるだろうし、表のほうに向かうか。まぁ、車に乗ってる時は寝てるだろうからよ。さっきみたいな諍いは起きない。心配せんでくれ」
誰かと誰かが険悪。それだけで第三者が気を遣ってしまうものである。それを理解している鯖洲は、きっと性根は優しい人間なのであろう。
鯖洲と一緒に表へと向かう。どこで追い越されたのかは分からないが、すでに車は表に回されており、運転席の側には寺山の姿があった。
0
あなたにおすすめの小説
その人事には理由がある
凪子
ミステリー
門倉(かどくら)千春(ちはる)は、この春大学を卒業したばかりの社会人一年生。新卒で入社した会社はインテリアを専門に扱う商社で、研修を終えて配属されたのは人事課だった。
そこには社長の私生児、日野(ひの)多々良(たたら)が所属していた。
社長の息子という気楽な立場のせいか、仕事をさぼりがちな多々良のお守りにうんざりする千春。
そんなある日、人事課長の朝木静から特命が与えられる。
その任務とは、『先輩女性社員にセクハラを受けたという男性社員に関する事実調査』で……!?
しっかり女子×お気楽男子の織りなす、人事系ミステリー!
死者からのロミオメール
青の雀
ミステリー
公爵令嬢ロアンヌには、昔から将来を言い交した幼馴染の婚約者ロバートがいたが、半年前に事故でなくなってしまった。悲しみに暮れるロアンヌを慰め、励ましたのが、同い年で学園の同級生でもある王太子殿下のリチャード
彼にも幼馴染の婚約者クリスティーヌがいるにも関わらず、何かとロアンヌの世話を焼きたがる困りもの
クリスティーヌは、ロアンヌとリチャードの仲を誤解し、やがて軋轢が生じる
ロアンヌを貶めるような発言や行動を繰り返し、次第にリチャードの心は離れていく
クリスティーヌが嫉妬に狂えば、狂うほど、今までクリスティーヌに向けてきた感情をロアンヌに注いでしまう結果となる
ロアンヌは、そんな二人の様子に心を痛めていると、なぜか死んだはずの婚約者からロミオメールが届きだす
さらに玉の輿を狙う男爵家の庶子が転校してくるなど、波乱の学園生活が幕開けする
タイトルはすぐ思い浮かんだけど、書けるかどうか不安でしかない
ミステリーぽいタイトルだけど、自信がないので、恋愛で書きます
罪悪と愛情
暦海
恋愛
地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。
だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――
剣客逓信 ―明治剣戟郵便録―
三條すずしろ
歴史・時代
【第9回歴史・時代小説大賞:痛快! エンタメ剣客賞受賞】
明治6年、警察より早くピストルを装備したのは郵便配達員だった――。
維新の動乱で届くことのなかった手紙や小包。そんな残された思いを配達する「御留郵便御用」の若者と老剣士が、時に不穏な明治の初めをひた走る。
密書や金品を狙う賊を退け大切なものを届ける特命郵便配達人、通称「剣客逓信(けんかくていしん)」。
武装する必要があるほど危険にさらされた初期の郵便時代、二人はやがてさらに大きな動乱に巻き込まれ――。
※エブリスタでも連載中
(学園 + アイドル ÷ 未成年)× オッサン ≠ いちゃらぶ生活
まみ夜
キャラ文芸
年の差ラブコメ X 学園モノ X オッサン頭脳
様々な分野の専門家、様々な年齢を集め、それぞれ一芸をもっている学生が講師も務めて教え合う教育特区の学園へ出向した五十歳オッサンが、十七歳現役アイドルと同級生に。
子役出身の女優、芸能事務所社長、元セクシー女優なども登場し、学園の日常はハーレム展開?
第二巻は、ホラー風味です。
【ご注意ください】
※物語のキーワードとして、摂食障害が出てきます
※ヒロインの少女には、ストーカー気質があります
※主人公はいい年してるくせに、ぐちぐち悩みます
第二巻「夏は、夜」の改定版が完結いたしました。
この後、第三巻へ続くかはわかりませんが、万が一開始したときのために、「お気に入り」登録すると忘れたころに始まって、通知が意外とウザいと思われます。
表紙イラストはAI作成です。
(セミロング女性アイドルが彼氏の腕を抱く 茶色ブレザー制服 アニメ)
題名が「(同級生+アイドル÷未成年)×オッサン≠いちゃらぶ」から変更されております
怪蒐師
うろこ道
ホラー
第8回ホラー•ミステリー大賞で優秀賞を受賞しました。ありがとうございました!
●あらすじ
『階段をのぼるだけで一万円』
大学二年生の間宮は、同じ学部にも関わらず一度も話したことすらない三ツ橋に怪しげなアルバイトを紹介される。
三ツ橋に連れて行かれたテナントビルの事務所で出迎えたのは、イスルギと名乗る男だった。
男は言った。
ーー君の「階段をのぼるという体験」を買いたいんだ。
ーーもちろん、ただの階段じゃない。
イスルギは怪異の体験を売り買いする奇妙な男だった。
《目次》
第一話「十三階段」
第二話「忌み地」
第三話「凶宅」
第四話「呪詛箱」
第五話「肉人さん」
第六話「悪夢」
最終話「触穢」
※他サイトでも公開しています。
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
裏切りの代償
中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。
尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。
取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。
自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる