ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

鬼霧宗作

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ケース5 誕生秘話は惨劇へ【解決編】

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「たまたま非番ではありましたが、部下も一緒にいます。同行させていただいても?」

 実際、こんなことが起きた場合、警察の人間が同行して救急車に乗るなんてことがあるのだろうか。その辺のことは不明であるが、千早を部下ということにして同乗するつもりらしい。ここまで野次馬が集まらなければ、こんな芝居を打つ必要もなかったのであろう。

 斑目の言葉を待っていたかのごとく、千早が野次馬の中から抜け出してくる。ただ……その、緊張でもしているのか。前に出す足と手が一緒になってしまっている。とりあえず斑目の元へと合流できて、本人はほっとしているようだった。

「俺のことはいいから、さっきの奴を早いところ洗い出したほうがいい。あいつ、人を刺すことに抵抗がまるでなかった。かなりやべぇ奴だぞ」

 そう言いはしているが、けれども手のひらからの出血は止まらない鯖洲。思い切り刃の部分を握ったのだから、簡単に血が止まったりはしないだろう。コトリにだって分かる。その凶刃が、本来ならば自分に向けられていたことくらい。

「おそらくですが、洗い出したところで簡単に出てはきませんよ。それは、こちらの警察の仕事ですし、私がでしゃばるような場面じゃありません」

 周囲の野次馬には聞こえない程度の声量で言う斑目。サイレンはとうとう間近まで迫り、赤色灯が駐車場へと飛び込んでくる。野次馬なんて所詮は野次馬であり、救急車が到着するや否や、見せ物は終わったとばかりに店内へと戻り始めた。有事の際、自分にも危機が迫るかもしれないのに、悠長にスマホを向ける――野次馬は日本人の国民性ではないだろうか。

 救急隊員がこちらにやってきて、鯖洲の状態を確認する。ストレッチャーが運び出されようとしていたが、鯖洲がそれに乗りたくなかったのであろう。救急隊員を押し退け、救急車に向かって歩き出す。

「私はこういう者です。こちらの方々が一緒におられた方々で、同乗させていただければありがたいのですが」

 救急車など乗ったことはないが、しかし見た限り広いようには見えない。多くの人間が同乗することは想定されていないのであろう。

「いや、さすがにこの人数だと――」

「事態は一刻を争います。どうかご協力を」

 困った様子の救急隊員に、駄目押しとばかりに警察手帳を突きつける斑目。詳しいことをあえて伏せる辺りにリアリティーがある。
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