ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

鬼霧宗作

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ケース5 誕生秘話は惨劇へ【解決編】

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 鯖洲がさっさと車を取りに向かったことを、この場にいないというだけで見抜く辺り、なんだかんだで鯖洲とは良いコンビといえよう。彼女だって、有名メイド喫茶のナンバーワンというだけで、自分の元に来ることをお願いしたのであるが、その判断は間違っていなかったと思っている。

「残念ながら、もうお会計の流れですね……。どれ、ここは私が持ちましょうか」

 コトリは親名義のカードを持ってはいた。斑目には本当に申し訳ないが、今は使う気になれない。これまで、当たり前のように、窓辺野家の娘として、窓辺野コトリとして生きてきて、それを疑うことなんてなかった。でも、きっと両親は知っていたはずだ。なにせ、本物の窓辺野コトリの死を知っているのだから。知っていながら、ずっと知らないふりをしていたのだ。すでに父は亡くなってしまったが、母に対する疑心がないと言ったら嘘になる。窓辺野コトリとしての権利を使う気にはならなかった。

「あ、経費で落としますからお気になさらずに」

 斑目がこの場を持つ流れになっていながら、しっかり自分の財布を出そうとしていた千早。それを見た斑目は、彼女が口を開く前に先手を打ったようだった。

「そうですか。それでは、お言葉に甘えて」

 千早が財布をしまうと、鯖洲が戻ってくる。

「お、玄界灘も合流したな。それじゃあ、行くか」

 思い立ったら吉日というか、すぐに行動に移そうとするのは、鯖洲の良いところでもあり、悪いところでもある。単独で動くならば、そのせっかちな性格は悪くないが、複数人……チームとして動くとなると、時としてそれはスタンドプレーとなってしまい、周りの人間を振り回すことになってしまう。幸いなのは、そのことをこちら側がしっかりと理解していることか。

 会計後、カウンターに入って寡黙にカップを拭いていたマスターに礼を言うと、ぼそぼそと「またの来店を」と聞こえた。コーヒーの味は悪くないのに、店の立地とマスターの雰囲気で損をしているような気がする。まぁ、立ち入った話にさえ無関心のように振る舞ってくれたのはありがたいが。

 店を後にすると、堂々と路肩に停めてある黒塗りの高級車に乗り込む。斑目が助手席に乗り込む形となり、女性陣は全員後部座席に座ることになったのだが、それなりに狭いというか、肩身が狭かった。それは、これまで窓辺野コトリという人物を騙ってきた肩身の狭さか。それとも物理的な狭さがゆえか。
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