BOOBY TRAP 〜僕らが生きる理由〜

鬼霧宗作

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わがまま姫とそれが不愉快な仲間達【午後1時〜午後2時】

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 ありがとう。君達の死は無駄にはしないよ――なんて、正義感あふれる良い子なら、そんな風に声をかけてやるのであろうが、残念ながら比嘉の心に正義感というものは皆無に等しい。同時に罪悪感というものも持ち合わせていない。ゆえに、自分がナイフを使って教室から追い出したことが、結果的に苗場兄弟の死に繋がったという発想もできない。その事実は認識できても、苗場兄弟が死んだのは、苗場兄弟が馬鹿だったからだと思っている。

 立ち上がって服を軽くはらうと、耳障りなメロディーが聴こえてきた。校内放送なのか町内放送なのかは不明だが、妙にノイズの混じったそれは、実に耳障りな距離で鳴り出したような気がする。音が変にこだましているように聴こえるのも、耳障りな音になっている要因だろう。以前のように音程の外れた学校のチャイムかと思ったが、今回のメロディーは違うらしい。キャンプファイアーの時に無理矢理歌わされた記憶のある曲――『遠き山に日は落ちて』だった。もっとも、気持ちの悪い音程の外れ方は相変わらずだが。

『せーの……みなさんにおくやみ申し上げます!』

 初めてアナウンスがあった時はウグイス嬢のような声でのアナウンスだったが、今回は複数の子どもの声だった。幼稚園のお遊戯会で、声を揃えて同じ台詞を吐いているような感じだ。後ろに流れる音程の外れた曲も相まって、単なる無邪気な子どもの声が不気味に思えてしまう。

『苗場健太さんと苗場康太さんが宮垣小学校で死にました。もう一度言います。苗場健太さんと苗場康太さんが宮垣小学校で死にました』

 ぴったりと息の合った無邪気な声は、そこから連想できぬような残酷な言葉を吐く。そのギャップが滑稽で、思わず比嘉は鼻で笑った。

『お二人の【固有ヒント】は、SGTに転送されます。それではみなさん、がんばってください!』

 一定のゆっくりとしたリズムを保ちつつ、恐らく街中へと垂れ流された放送は、そこでプツンと切れてしまった。メロディーも消え、静寂だけが残る。比嘉はSGTを取り出して確認をしてみる。けれども【固有ヒント】は転送されていなかった。多分、すでに苗場兄弟と【固有ヒント】を共有していたからであろう。

「あらかじめヒントを共有している奴が死んでも、何かしら特典は無ぇってことか――。まぁ、最終的に【固有ヒント】が手に入るのなら、こいつらと関わる必要もなかったわけか」

 落とし穴の中に視線を落とすと、比嘉は折りたたみ式のナイフを取り出した。刃を出し、天井に設けられている半球体に向かって突きつける。こちらの様子は、きっと監視カメラにて全て把握されているのであろう。小さく溜め息を漏らしてから、改めて半球体を睨みつけた。

「おい、どこのどいつか知らねぇけど、後悔させてやるよ。俺を参加させたことをな……」

 正攻法でなんてやるつもりはない。どこの誰に向かってなのかさえ分からない宣戦布告は、この時すでに狂気に満ちていたのであった。
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