BOOBY TRAP 〜僕らが生きる理由〜

鬼霧宗作

文字の大きさ
45 / 231
わがまま姫とそれが不愉快な仲間達【午後1時〜午後2時】

13

しおりを挟む
【午後1時55分 水落悠斗 公民館内一階】

 あの後、春日の提案で公民館内を一通り見て回った。特に注意したのは【トラッペ君】の存在であるが、しかしそれらしいものは一切見つからず、公民館は事実上の安全地帯であることが判明した。

 今後の方針として水落達が打ち出した結論は、この安全な公民館に滞在し、他の参加者を待つ――というものだった。幸いなことに公民館の二階からは外の道路が見渡せる。そんなに広い範囲とまではいかないが、それでも地上から探すよりかは参加者を発見しやすい。だから、三人で交代しながら、外を見張ることになった。

 雪山などで遭難した時は、闇雲に動くのではなく、一点に留まっていることがセオリー。そのほうが救助する方も探索しやすい。つまり、それと同じく、考えなしに動き回るのではなく、一点に留まっているほうが、他の参加者と遭遇できる可能性も高くなるのではないか――というのが春日の考えだった。他の参加者が動いていることが前提となってしまうが、どうすべきかガイドラインがない状態では、安全性を優先するのが正解だと言えよう。

 一階で休んでいた水落は、階段をのぼって二階へと向かう。そろそろ交代の時間だ。

「陸士長、何か動きはあったか?」

 すっかり呼び名が陸士長で定着してしつつある池田翼のところに行くと、水落は声をかけた。わざわざライフル銃のレプリカを抱えつつ、しかも窓の下に隠れるようにして外を伺っていた陸士長は、首を横に振った。二階の道路に面した廊下が、たまたま全てガラス窓になっているため、外を見張る分には申し分ない。

「残念ながら動きはなしだ。私達が思っている以上に街が広いのか。それとも、みんなが安全策を第一にして動かずにいるのか――」

 そう呟く陸士長の声は、なぜだかボリュームが絞られている。別に姿を隠す必要もなければ、声を聞かれて困ることもない。それなのに窓の下に隠れ、声のボリュームまで絞る辺りは、プロフェッショナルの流儀なのだろうか。ある意味、ここは戦場なのかもしれないが。

「そろそろ交代する。陸士長も少し休んだほうがいいよ」

 陸士長から少し距離をとったところに座ると、外を眺めてみる。公民館前の通りは一本。通りの向こうには小さな公園らしきものが見える。水落のスタート地点となった邸宅も確認できた。改めて辺りの景色を見渡してみると、どうやらこの辺りは住宅街のようだった。

「休むとかえって気が滅入ってしまいそうだ。私は訓練を受けているから心配しなくていい。まだ休んでいてくれ」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』

放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。 「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」 身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。 冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。 「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」 得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。 これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。

別れし夫婦の御定書(おさだめがき)

佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★ 嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。 離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。 月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。 おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。 されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて—— ※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

【短編】記憶を失っていても

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
 7年以上前の記憶のない平民出身のラチェルは、6年前に娘のハリエットを生んでからグリオス国のアンギュロスの森付近の修道院で働きながら暮らしていた。  そんなある日ハリエットは見たことのない白銀色の大樹を見つけたと、母ラチェルに話すのだが……。  これは記憶の全てを失ったラチェル──シェシュティナが全てを取り戻すまでのお話。 ※氷雨そら先生、キムラましゅろう先生のシークレットベビー企画開催作品です( ´艸`)

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

処理中です...