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すれ違う狂気
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負けは負けであり、堀口は仕方がなく全員にジュースを振る舞うことにした。桂はアルコールがないことに文句を言っていたが聞かなかったことにして、一同はやや日陰になったベンチのそばで休憩することにした。
「フィレンツェの怪物……って知ってるかい?」
同じ麦という理由で麦茶を選んだ桂は、それで喉をうるおしてから、唐突に口を開いた。しかし、堀口はもちろんのこと、誰もフィレンツェの怪物とやらを知らないらしかった。
「また殺人鬼ウンチクか? 桂も物好きだねぇ」
田之上がそう言うが、聞こえていないかのように桂は話し始めた。
「別名、イルモストロ事件。イタリアのフィレンツェで発生した連続殺人事件だねぇ。標的は全てドライブ中のカップル。ものの数年の間に八組ものカップルが殺害された。そして、この事件の犯人は、どういうことか被害者を殺害した後に、被害者の性器を持ち帰るという異常な行動に出ているんだよ。後に農夫の男が容疑者として逮捕されたが、犯行を否認したまま心臓発作で死亡した。最終的には未解決事件として処理され、今現在でも真相は明らかにされていない」
妙に詳しいというか、恐らく桂はこのような話が好きなのであろう。以前見せたように、ややうっとりとした表情で殺人鬼のことを語る姿は異様である。
それにしても、どうして雅はこの場面でおしるこを選んだのか。しかも冷たいやつ。そんなことを気にする堀口をよそに桂は続ける。
「容疑者の名前はピエトロ・バッチャーニ。係争中に死亡したけど、恐らくはこいつの犯行ではないかと言われている」
今回の事件に関与することならば歓迎するが、過去に起きた……しかも未解決事件の話をするなど、縁起が悪いことこの上ない。けれども、桂は自己陶酔するかのように続ける。
「他にも関与した事件があるとは言われているけど、このフィレンツェの怪物が確実に犯人だと思われる事件が発生したのは、1947年9月14日のこと。ぶどう畑の近くに停めてあった車の車内から、男女の死体が発見された。男は銃撃により即死、女には96箇所の刺し傷があったらしい。そして、女の性器にはぶどうのツルが差し込まれていた。中々にサイコなことをやらかしてるだろ?」
まるで、そこにデータベースとなる資料があるかのように、桂は口早にフィレンツェの怪物のことを語り続ける。
「フィレンツェの怪物……って知ってるかい?」
同じ麦という理由で麦茶を選んだ桂は、それで喉をうるおしてから、唐突に口を開いた。しかし、堀口はもちろんのこと、誰もフィレンツェの怪物とやらを知らないらしかった。
「また殺人鬼ウンチクか? 桂も物好きだねぇ」
田之上がそう言うが、聞こえていないかのように桂は話し始めた。
「別名、イルモストロ事件。イタリアのフィレンツェで発生した連続殺人事件だねぇ。標的は全てドライブ中のカップル。ものの数年の間に八組ものカップルが殺害された。そして、この事件の犯人は、どういうことか被害者を殺害した後に、被害者の性器を持ち帰るという異常な行動に出ているんだよ。後に農夫の男が容疑者として逮捕されたが、犯行を否認したまま心臓発作で死亡した。最終的には未解決事件として処理され、今現在でも真相は明らかにされていない」
妙に詳しいというか、恐らく桂はこのような話が好きなのであろう。以前見せたように、ややうっとりとした表情で殺人鬼のことを語る姿は異様である。
それにしても、どうして雅はこの場面でおしるこを選んだのか。しかも冷たいやつ。そんなことを気にする堀口をよそに桂は続ける。
「容疑者の名前はピエトロ・バッチャーニ。係争中に死亡したけど、恐らくはこいつの犯行ではないかと言われている」
今回の事件に関与することならば歓迎するが、過去に起きた……しかも未解決事件の話をするなど、縁起が悪いことこの上ない。けれども、桂は自己陶酔するかのように続ける。
「他にも関与した事件があるとは言われているけど、このフィレンツェの怪物が確実に犯人だと思われる事件が発生したのは、1947年9月14日のこと。ぶどう畑の近くに停めてあった車の車内から、男女の死体が発見された。男は銃撃により即死、女には96箇所の刺し傷があったらしい。そして、女の性器にはぶどうのツルが差し込まれていた。中々にサイコなことをやらかしてるだろ?」
まるで、そこにデータベースとなる資料があるかのように、桂は口早にフィレンツェの怪物のことを語り続ける。
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