探偵残念 ―安楽樹は渋々推理する―

鬼霧宗作

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5.安楽樹は渋々推理する

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 これは第一の事件にも言えることだが、外部の人間が犯人だったとすると、なんでもありになる。どれだけ内部の人間にアリバイがあっても、犯行が成り立ってしまう。なぜなら、犯人は外部の人間だから。実にシンプルではあるが、しかしなかなかたどり着けない部分でもある。多少なりともミステリのお約束というものを知っているミス研のメンバーが集まっていたからなおさらだ。

「……それで、ここまでの話が君の想像であることは分かったよ。でもね、君の想像の話だよね? なんだか、犯人だと決めつけて話が進められているみたいだけど、他の可能性だってあるじゃないか。可能性のひとつでしかないのに、俺を犯人だと決めつけるのはどうなんだい?」

 これまで、だんまりを決め込んでいた管理人が言う。安楽がたどり着いたのは、幾つもある可能性のひとつに過ぎず、他にも可能性がある限り、全ての可能性を考えるべき――とでも言いたそうだ。さらに管理人は続ける。

「それに、この店は馴染みの店でね。店員はもちろんのこと、客もほとんどが顔馴染みだ。こんなところで根拠もなしに人を侮辱して、もし間違っていたらどうするもりだ? 責任は取れるのかい?」

 続いて管理人の口から出たのは、なかば脅しに近いものだった。ここが管理人の馴染みの店で、しかも安楽から殺人犯扱いを受けている。当然、間違っていれば彼の信用問題にも関わっててくる。言われて辺りを見回すと、屈強そうな男達に取り囲まれていた。いいや、みんなテーブルについているだけで、取り囲まれているように見えるのは蘭の思い込みのせいだろう。

「もちろんですよ。なぜなら、決定的な証拠がありますから。そう、あの細川さんが残してくれた決定的な証拠がね」

 一歩も譲らず、管理人の言葉にも動じていない安楽。おそらく、いや間違いなく彼には決定打があるのだ。そうでなければ、ここまで落ち着いてはいない。そして、細川が残したものといえば――ダイイングメッセージだ。

「さて、おさらいもかねて、みんなとも第三の事件を振り返っておきたい。彼は地下室で見つかった。その直前、アリバイがあったりなかったりする人がいるんだけど、この際、アリバイなんて考える必要はない。だって、犯人は外部の人間なんだから」

 やたらと【外部】という言葉を強調する安楽。嵐の孤島で、実のところ犯人が外部の人間だったというのは、ミステリとしてはいささかナンセンスなのかもしれない。
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