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楽しい休日 その1
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土曜日の朝。
のんびりと朝寝坊できる至福の時間。
いつもの癖で6時に目が醒めたわたしは、にんまりとして再び布団に潜り込んだ。
今日と明日は学校に行かなくていい日。
ああ、なんて素晴らしいのでしょう!
日頃の気遣い気苦労とは無縁の、まさにこころの開放日!
玄関のチャイムの連打さえ、今のわたしにとっては安らかな安眠へと誘う子守歌。
おやすみなさ―――
「おはよう麻実!ってまだ布団の中にいるのか?」
まさか。まさかね。空耳だよね。
「あらまぁ、この子ったら。ごめんね圭くん、いつもだったらとっくに起きているんだけど」
「いえ、おば様。きっと昨日の文化祭の疲れが残っているんだと思います」
「でも今日約束してたのでしょう?今起こすから少し待ってね」
約束?なんの話だろう。やっぱりこれは夢に違いない。
「大丈夫です、おば様。このまま寝かせてあげてください。麻実が起きてくるまで、よければ昨日の文化祭で撮った麻実の写真でも見ませんか?」
「まぁ、いつもありがとう!仕事で中々学校行事に行けないから、圭くんが撮ってきてくれる写真が主人とわたしの楽しみなのよ」
わたしは布団を跳ね飛ばす勢いで飛び起きた。
「ストーップ!!なに、写真て何?!」
「あら、おはよう麻実」
「おはよう、麻美!わはは、ひどい寝ぐせだな!」
キラキラの笑顔を振りまく圭に思いっきり枕をぶつけてやった。
「な、なんでこんな写真が・・・!!いつ!?いつ撮ったの?!」
リビングで見せられた写真の数々に、わたしは絶句した。
それも、ただの写真ではない。
角度、構図、光の加減さえ、まるでプロが撮ったとしか思えない”作品”の数々。
惜しむらくは被写体がわたしであるということ。
隠し撮りに違いないのに、そんなことを微塵も感じさせないカメラ目線ばっちりなわたしが多数写っている。
あまりの出来の良さに怒りを忘れて感動すら覚える。
「うふふ。麻実が恥ずかしがると思ってずっと黙っていたのだけれど、そんなに喜んでくれるなら早く見せればよかったわ」
いや喜んでないから!ツッコミどころあり過ぎてフリーズしてるだけ!
「おば様、僕おすすめはこの1枚です! めったに見られない麻実の笑顔!」
「ほんとね、良く撮れているわ!」
お母さんと圭が楽しく眺めている1枚。そこに映っているわたしは確かに笑っていた。
あれは多分、屋台のトランクフルトが思いのほか美味しくてにやけていた瞬間だ。
あんな一瞬を切り取るなんて、ますますこのカメラマンは只者じゃないな。
「ねぇ、誰がその写真撮ってるの?」
「もちろん、麻美専用カメラマンだよ」
もちろんって日本語の意味、なんだっけ。
「普段は野鳥のプロカメラマンをやっているよ。麻実を撮るスキルが野鳥の撮影に役立つと言って、喜んで受けてくれているんだよ。麻実はただ存在するだけでまわりの皆を幸せにして、すごいよな」
なるほど。本業は野鳥カメラマンか。後半は聞かなかったことにしよう。
「で、圭はこんな朝から何の用なの?」
「ひどいな麻実!『爆笑!!男子限定一発芸!』で優勝したらデートに付き合うって約束だったじゃないか」
ああ、あれか・・・絶対無理だと思ったのに。
圭ファンクラブの信者を舐めすぎていた。恐るべき組織票。
でもわたしだってせっかくの休日を圭に振り回されたくない。
「ごめんね、圭。昨日の疲れが残ってて、ちょっと今日はゆっくり休みたいんだ。デートはまたでいいかな?」
圭の前では病弱設定である。
腹痛・頭痛・生理痛。そしてオールマイティーな「疲れた」。
「そっか・・・昨日の今日だもんね。いいよ、今日はゆっくり休んで、デートはまた今度にしよう」
眉毛をすこし下げて、儚げに美少年が微笑む。
「ありがとう、圭」
わたしも残念そうに微笑みを浮かべ返す。
「ということでおば様。疲労回復に効くという酸素カプセルを家に取り寄せてますので、麻実は今日と明日、僕の家でゆっくり休養を取らせようと思います。滋養に良いメニューをシェフに作らせますので、2日間の昼食と夕食はこちらに任せて下さいませんか」
気遣うような笑顔でさらっと恐ろしいことを言う圭。
わたしは再びフリーズ状態となった。
「うふふ。それじゃあ、お願いしようかしら。麻実、圭くんちでゆっくりしてきなさい」
ああ、さようならわたしの休日・・・
のんびりと朝寝坊できる至福の時間。
いつもの癖で6時に目が醒めたわたしは、にんまりとして再び布団に潜り込んだ。
今日と明日は学校に行かなくていい日。
ああ、なんて素晴らしいのでしょう!
日頃の気遣い気苦労とは無縁の、まさにこころの開放日!
玄関のチャイムの連打さえ、今のわたしにとっては安らかな安眠へと誘う子守歌。
おやすみなさ―――
「おはよう麻実!ってまだ布団の中にいるのか?」
まさか。まさかね。空耳だよね。
「あらまぁ、この子ったら。ごめんね圭くん、いつもだったらとっくに起きているんだけど」
「いえ、おば様。きっと昨日の文化祭の疲れが残っているんだと思います」
「でも今日約束してたのでしょう?今起こすから少し待ってね」
約束?なんの話だろう。やっぱりこれは夢に違いない。
「大丈夫です、おば様。このまま寝かせてあげてください。麻実が起きてくるまで、よければ昨日の文化祭で撮った麻実の写真でも見ませんか?」
「まぁ、いつもありがとう!仕事で中々学校行事に行けないから、圭くんが撮ってきてくれる写真が主人とわたしの楽しみなのよ」
わたしは布団を跳ね飛ばす勢いで飛び起きた。
「ストーップ!!なに、写真て何?!」
「あら、おはよう麻実」
「おはよう、麻美!わはは、ひどい寝ぐせだな!」
キラキラの笑顔を振りまく圭に思いっきり枕をぶつけてやった。
「な、なんでこんな写真が・・・!!いつ!?いつ撮ったの?!」
リビングで見せられた写真の数々に、わたしは絶句した。
それも、ただの写真ではない。
角度、構図、光の加減さえ、まるでプロが撮ったとしか思えない”作品”の数々。
惜しむらくは被写体がわたしであるということ。
隠し撮りに違いないのに、そんなことを微塵も感じさせないカメラ目線ばっちりなわたしが多数写っている。
あまりの出来の良さに怒りを忘れて感動すら覚える。
「うふふ。麻実が恥ずかしがると思ってずっと黙っていたのだけれど、そんなに喜んでくれるなら早く見せればよかったわ」
いや喜んでないから!ツッコミどころあり過ぎてフリーズしてるだけ!
「おば様、僕おすすめはこの1枚です! めったに見られない麻実の笑顔!」
「ほんとね、良く撮れているわ!」
お母さんと圭が楽しく眺めている1枚。そこに映っているわたしは確かに笑っていた。
あれは多分、屋台のトランクフルトが思いのほか美味しくてにやけていた瞬間だ。
あんな一瞬を切り取るなんて、ますますこのカメラマンは只者じゃないな。
「ねぇ、誰がその写真撮ってるの?」
「もちろん、麻美専用カメラマンだよ」
もちろんって日本語の意味、なんだっけ。
「普段は野鳥のプロカメラマンをやっているよ。麻実を撮るスキルが野鳥の撮影に役立つと言って、喜んで受けてくれているんだよ。麻実はただ存在するだけでまわりの皆を幸せにして、すごいよな」
なるほど。本業は野鳥カメラマンか。後半は聞かなかったことにしよう。
「で、圭はこんな朝から何の用なの?」
「ひどいな麻実!『爆笑!!男子限定一発芸!』で優勝したらデートに付き合うって約束だったじゃないか」
ああ、あれか・・・絶対無理だと思ったのに。
圭ファンクラブの信者を舐めすぎていた。恐るべき組織票。
でもわたしだってせっかくの休日を圭に振り回されたくない。
「ごめんね、圭。昨日の疲れが残ってて、ちょっと今日はゆっくり休みたいんだ。デートはまたでいいかな?」
圭の前では病弱設定である。
腹痛・頭痛・生理痛。そしてオールマイティーな「疲れた」。
「そっか・・・昨日の今日だもんね。いいよ、今日はゆっくり休んで、デートはまた今度にしよう」
眉毛をすこし下げて、儚げに美少年が微笑む。
「ありがとう、圭」
わたしも残念そうに微笑みを浮かべ返す。
「ということでおば様。疲労回復に効くという酸素カプセルを家に取り寄せてますので、麻実は今日と明日、僕の家でゆっくり休養を取らせようと思います。滋養に良いメニューをシェフに作らせますので、2日間の昼食と夕食はこちらに任せて下さいませんか」
気遣うような笑顔でさらっと恐ろしいことを言う圭。
わたしは再びフリーズ状態となった。
「うふふ。それじゃあ、お願いしようかしら。麻実、圭くんちでゆっくりしてきなさい」
ああ、さようならわたしの休日・・・
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