お隣さん家の圭くんは

角井まる子

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楽しい休日 その2

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そうして無理矢理連れてこられた九条家。
実は我が家と九条家はお隣さんである。
お隣さんなんだけど、九条家の豪邸が半端ない敷地面積を誇っているため、我が家から九条家の正面玄関にたどり着くまで車で5分。歩くと15分。
しかも、これが地方ではなく都内という恐ろしさ。
これを果たして”お隣さん”と気軽に呼べようか。いや、呼べないだろう。
何も知らない小さな頃、わたしの家の隣は大きな公園か何かの施設だと思っていた時期もありました。

「麻実、どうしたの?顔が険しいけど」

そうでしょうとも。誰かさんのお陰です。

「やっぱり、昨日の疲れがひどいんだね。大丈夫、僕が後でマッサージしてあげるね」

「結構です!まったくもって大丈夫です!」

引きつりながら返答すると、「やっとこっち向いてくれた」と嬉しそうに笑う。

「僕に任せて。この前ジムのトレーナーに教わったから」

圭が「任せて」と言うならば、きっとプロ顔負けに習得したのだろう。
圭は昔からこうだ。どんなことも大人が驚くスピードで覚えて、自分のものにしてしまう。
その天才っぷりも、熱狂的な信者を作る原因の一つである。

学校だって、海外の有名な私立学校への進学が噂されていたのに、「麻実と一緒の学校で」という我がままから今日まで同じ学校に通わされている。そう、通わされているのだ。


わたしだって昔は今みたいに存在感薄い子じゃなかった。
むしろ我が強くて傲慢で、泣きべそかいて嫌がる圭を虫取りに連れまわしたりして遊んでた。
小学校低学年までの私の中での圭は、なんでも言う事聞いてくれるお金持ちで便利な子。
西洋人形のような綺麗な顔の圭を連れまわす度に、クラスの女子や周りの大人に対して優越感さえ感じていた。
圭には何を言ってもいいんだと、馬鹿な勘違いをしてた。
ええ、ほんとーに馬鹿でしたとも。

そんな関係性も、小学校3年生のクラス替えと共にガラっと一変した。
それまで、家が近所で幼馴染、そして同じクラスという事でずっと圭と一緒だったのが、クラスが離れて初めて自分に女子の友達がいないことに気付き、さらに今までの圭への振る舞いで自分が学校中の女子から嫌われていたという現実を目の当たりにしたのだ。
かといってそれまでの傲慢な性格が直ぐに変わるわけもなく、自分から周りに声をかけることも出来ず一人きりの状態で2年が経過。
一方の圭は、わたしから解放されて常に周りには友達に囲まれている状態。
圭がわたしに声を掛けようにも、圭の取り巻きの視線が怖くてわたしが逃げるような恰好になり、あまり関わらないように圭を避けるようになっていった。
5年生のクラス替えで圭と再び同じクラスになったときには、わたしはクラスの皆から無視され、圭はクラスの中心人物となっていた。


「麻実、何考えてるの?」

くっ・・・にっくきこやつの美貌は冴えわたる一方!
華の高校生活を送るはずが圭のせいで惨めにもコソコソと暮らす羽目に!
いやすべては幼き頃の自分が悪いんだけどね!

完璧な八つ当たりで睨みつけてやれば、なぜか照れたように頬を上気させる。

「麻実にそんなに見つめられると、恥ずかしいよ・・・」

あああ!唾を!このお綺麗な顔面に吐き捨ててやりたい!!
全ての元凶はこの憎らしいまでに整った顔面にある。
結局は顔!この顔さえなければ!圭がぶっさいくだったら!
確かに性格も良く穏やかで気遣い出来て賢く何でもできる奴だけど!
それもこれも顔面偏差値が人間性に200%以上のバフかけているに違いない。

砂を吐いたような顔のわたしと、少女のように頬を染めて照れる圭の姿に、運転席の岩井さんがクスッと笑った。

「圭さま、広瀬お嬢さま。まもなく着きます」

そうして目の前に広がる大豪邸。
お城かと突っ込みたくなる、玄関前の広々とした車止めと見事な庭園。
並んで出迎えてくれる使用人たちの中から、上品にスーツを着こなした壮年の男性が車のドアを開け、エスコートしてくれる。

「圭ぼっちゃま。お帰りなさいませ。広瀬お嬢様、ようこそおいで下さいました」

「こ、小嶋さん・・・急にお邪魔してすみません。急ですよね、ご迷惑だと思うので―――」

「とんでもございません。お待ちしておりました。さあ、どうぞ中に」

最後の悪あがきもあっさりと交され、笑顔で迎えてくれる九条家使用人の皆さまにぎこちない笑顔で返しながら、嫌がる足を引きずるように車から降りる。

きっと圭が不細工でもこんなにお金持ちじゃあ経済力という強力なバフが掛かるに違いない。
ああ、世の中はなんて不公平なんだ!
わたしの平和で幸せな休日を返して!
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