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紅茶の香りと沈黙
34話 小さな約束の朝
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その日、朝からルシアンは慌ただしく動き回っていた。
ユリウスと一緒に、まだ慣れない手つきでサンドイッチを作っていたのだ。
パンにバターを塗ると、「そこ、ちょっと塗りすぎかも」と笑い合い、レタスを手でくしゃっとしながら盛り付けを工夫する――
広いキッチンには、ふたりの明るい声が軽やかに響いていた。
この朝の忙しさは、前日の朝食がきっかけだった。
ルシアン、ユリウス、ユリルク、そしてレオニスがテーブルを囲んだ穏やかな朝のこと。
レオニスがふとカップを置き、ぽつりと言った。
「明日は天気がよさそうだ。ピクニックにでも行くか」
その言葉に、ユリウスの顔がぱっと輝いた。
「ほんとう?じゃあ、ピクニックのお弁当は僕が作るよ!」
無邪気にそう叫ぶ姿に、ルシアンは思わず笑みをこぼし、うなずいた。
「じゃあ、一緒に作ろう。サンドイッチなら簡単で、ユリルクも食べやすいよ」
そうして迎えたこの朝、料理長に少し手を借りながら、ふたりは心を込めて具材を重ねていた。
ハムとチーズの定番サンド。ゆで卵をつぶしてマヨネーズで和えた、優しい味の卵サンド。
ユリウスは「これはお父様の分」「これはユリルクの」と嬉しそうに分けていく。
ルシアンはそんなユリウスの姿を優しく見つめながら、心の中で思う。
(こうして少しずつ、日々が暖かさを取り戻していくのだな……)
―――
今日は、穏やかな風がそよぐまさにピクニック日和。
朝からの準備に追われ、馬車に揺られて花畑へ向かう。
一面に色とりどりの花が咲き誇り、風に揺れながら迎えてくれるようだった
「わあ!」
ユリウスが真っ先に駆け出し、その後を追うレオニスも草花の間ではしゃいでいる。
ルシアンは大きな木陰にシーツを敷き、ユリルクを膝に抱えてその様子を見守った。
「ふふ、ふたりとも元気だね」
まだよちよち歩きのユリルクは、兄と父が楽しそうに遊ぶ姿が気になるらしく、小さな手足で一歩一歩ふらつきつつも必死に近づこうとする。
そんな姿に、ルシアンは自然とほほえみがこぼれた。
(なんて幸せな光景だろう)
けれど胸の奥には、ふとした痛みもあった。
――ここに、レティーナ様もいてくれたら。
それは叶わぬ願いだと自分でもわかっている。
けれど、あの優しい笑顔がこの場所にあったなら、もっと温かかったに違いない、とどこかで願ってしまうのだ。
そんな時、遠くから声が響いた。
「お母様!」
「ルシアン!」
顔をあげると、花を抱えたユリウスと、ユリルクを抱いたレオニスが近づいてくる。
「見て見て!素敵なものを作ったんだ」
息を弾ませながらユリウスが差し出したのは、草花で編んだ小さな花冠だった。
「頑張って作ったんだよ。お母様にあげるね」
そっとルシアンの頭の上に載せるその仕草に、ルシアンの胸の中にやわらかな光が灯った。
(……ああ、幸せだ)
過去の傷も、悔しさも、悲しみも――すべてがこの瞬間に溶けていくようだった。
ルシアンは優しくユリウスの頭を撫で、穏やかな笑みを浮かべた。
「ありがとう。とっても素敵だよ」
花の香りに包まれ、家族の笑顔が午後の光の中でキラキラと輝いていた。
この手に抱くぬくもりは、永遠に消えることのない記憶となる。
ユリウスと一緒に、まだ慣れない手つきでサンドイッチを作っていたのだ。
パンにバターを塗ると、「そこ、ちょっと塗りすぎかも」と笑い合い、レタスを手でくしゃっとしながら盛り付けを工夫する――
広いキッチンには、ふたりの明るい声が軽やかに響いていた。
この朝の忙しさは、前日の朝食がきっかけだった。
ルシアン、ユリウス、ユリルク、そしてレオニスがテーブルを囲んだ穏やかな朝のこと。
レオニスがふとカップを置き、ぽつりと言った。
「明日は天気がよさそうだ。ピクニックにでも行くか」
その言葉に、ユリウスの顔がぱっと輝いた。
「ほんとう?じゃあ、ピクニックのお弁当は僕が作るよ!」
無邪気にそう叫ぶ姿に、ルシアンは思わず笑みをこぼし、うなずいた。
「じゃあ、一緒に作ろう。サンドイッチなら簡単で、ユリルクも食べやすいよ」
そうして迎えたこの朝、料理長に少し手を借りながら、ふたりは心を込めて具材を重ねていた。
ハムとチーズの定番サンド。ゆで卵をつぶしてマヨネーズで和えた、優しい味の卵サンド。
ユリウスは「これはお父様の分」「これはユリルクの」と嬉しそうに分けていく。
ルシアンはそんなユリウスの姿を優しく見つめながら、心の中で思う。
(こうして少しずつ、日々が暖かさを取り戻していくのだな……)
―――
今日は、穏やかな風がそよぐまさにピクニック日和。
朝からの準備に追われ、馬車に揺られて花畑へ向かう。
一面に色とりどりの花が咲き誇り、風に揺れながら迎えてくれるようだった
「わあ!」
ユリウスが真っ先に駆け出し、その後を追うレオニスも草花の間ではしゃいでいる。
ルシアンは大きな木陰にシーツを敷き、ユリルクを膝に抱えてその様子を見守った。
「ふふ、ふたりとも元気だね」
まだよちよち歩きのユリルクは、兄と父が楽しそうに遊ぶ姿が気になるらしく、小さな手足で一歩一歩ふらつきつつも必死に近づこうとする。
そんな姿に、ルシアンは自然とほほえみがこぼれた。
(なんて幸せな光景だろう)
けれど胸の奥には、ふとした痛みもあった。
――ここに、レティーナ様もいてくれたら。
それは叶わぬ願いだと自分でもわかっている。
けれど、あの優しい笑顔がこの場所にあったなら、もっと温かかったに違いない、とどこかで願ってしまうのだ。
そんな時、遠くから声が響いた。
「お母様!」
「ルシアン!」
顔をあげると、花を抱えたユリウスと、ユリルクを抱いたレオニスが近づいてくる。
「見て見て!素敵なものを作ったんだ」
息を弾ませながらユリウスが差し出したのは、草花で編んだ小さな花冠だった。
「頑張って作ったんだよ。お母様にあげるね」
そっとルシアンの頭の上に載せるその仕草に、ルシアンの胸の中にやわらかな光が灯った。
(……ああ、幸せだ)
過去の傷も、悔しさも、悲しみも――すべてがこの瞬間に溶けていくようだった。
ルシアンは優しくユリウスの頭を撫で、穏やかな笑みを浮かべた。
「ありがとう。とっても素敵だよ」
花の香りに包まれ、家族の笑顔が午後の光の中でキラキラと輝いていた。
この手に抱くぬくもりは、永遠に消えることのない記憶となる。
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