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紅茶の香りと決意
9話 やさしい午後と、夫たちの話
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ひとしきり社交界の話題で盛り上がったあと、
サロンには、ほっと息をつくような柔らかな空気が流れた。
片隅では、子どもたちの笑い声が弾んで聞こえる。
ルシアンはカップをそっと置き、ふと今朝の出来事を思い出した。
――レオニス様、今ごろ大丈夫だろうか。
「少し、お聞きしたいことがありまして……」
小さく困ったように微笑みながら声をかけると、エレナたちが興味深げに視線を向けた。
「実は今日、レオニス様がユリルクを職場へ連れて行かれたのです。
職場に子を連れて行っても、よいものなのでしょうか……?」
その言葉に、アイリスは目を丸くし、オリシアは口元を押さえて驚きの表情を浮かべる。
エレナも思わず声を漏らした。
「えっ……職場に、お子さんを……?」
セリウスは苦笑して肩をすくめた。
「普通は、職場に子を連れていったりはしないな」
ルシアンは少し困ったように言葉を継いだ。
「やはり、普通はそうですよね……。
でもレオニス様は、まるで当たり前のように仰って……」
エレナは思わず微笑む。
「さすがレオニス様ですね……」
ルシアンは頬を少し赤らめ、打ち明けるように言った。
「私が安心してお茶会に来られるようにと……。
ご自分でユリルクの面倒を見るから、任せてくれと……」
アイリスは頬を染めながら息をついた。
「まぁ……なんてお優しいのかしら」
オリシアもにこやかに頷き、
「本当に、頼もしいご主人ですね」とつぶやいた。
セリウスは少し照れくさそうに微笑み、
「……レオニス殿らしい。家族に甘い方だからな」と言葉を添える。
エレナは目を細めて微笑んだ。
「そんなご主人なら、安心してお茶会に来られますね」
⸻
和やかな空気が流れ、話題は自然と夫たちの話へと移った。
「そういえば、オリシア様のご主人はどんな方なのですか? とても仲が良いと伺っております」
ルシアンが興味をにじませて尋ねると、オリシアは頬を染めて微笑んだ。
「あら……うふふ、そうですね」
彼女は胸元のネックレスにそっと指を添える。
「最近、主人はお花が好きなようで、仕事で訪れた国の花をいつも持ち帰ってくれるのです。
このネックレスも『君に似合うと思って』と贈ってくれたものなんですよ」
その声音には愛情が滲み、サロンの空気がふわりと温かくなる。
「まぁ、素敵!」
エレナが目を細めて微笑む。
「オリシア様とレアーヌ子爵様は恋愛結婚でしたよね。本当に憧れますわ」
「ええ、皆さまにも祝福していただいて……」
オリシアは頬を赤らめ、うふふと照れ笑いを浮かべた。
エレナは話題をそっとアイリスへと向ける。
「そういえば、アイリス様のご主人は? 商会のご様子などお聞きしたいわ」
グロウル男爵家は古くから大きな商会を営んでいる。
その言葉に、控えめなアイリスの瞳がぱっと輝いた。
「うちの主人は、最近、隣国から珍しい本を仕入れたそうなのです。
手触りが素晴らしくて、紙からほんのり香りがして……。この国では滅多にお目にかかれない品で――」
夢中で話すアイリスの顔は、生き生きとしていて、
ルシアンたちは思わず笑みを浮かべた。
「はっ……申し訳ありません。商会の話となると、つい……」
アイリスが照れくさそうに頬を赤らめると、
エレナは楽しげに笑う。
「いいえ、とても面白いお話でしたわ。アイリス様の新しい一面を知れて嬉しいです」
「本当に。いつもより生き生きしてらして、素敵でした」
オリシアも頷き、サロンには明るい笑い声が広がった。
「本当に。いつもより生き生きしてらして、素敵でした」
オリシアもにこやかに頷き、セリウスやルシアンも微笑む。
アイリスは照れながらも、少し誇らしげに微笑んだ。
サロンには、花の香りにも似た柔らかな笑い声が広がっていった。
━━━
エレナは紅茶を口にしながら、ふと笑った。
「皆様のご主人、本当に素敵ですわね」
オリシアが少し頬を染め、
「あら、エレナ様のご主人も芸術的で素敵ですわ。私の国でも有名でした」と返す。
「まぁ、光栄ですわ」
エレナは嬉しそうに笑い、少し照れたように目を伏せた。
「昔からの仲でしてね。私が作曲したり歌ったりすると、いつも最初に褒めてくれるのです」
その穏やかな表情に、皆の顔も自然とほころんだ。
やがてエレナは視線をセリウスへ向ける。
「セリウス様のご主人は、騎士団長様ですよね。普段はどのような方なのですか?」
セリウスは一瞬言葉を探すようにしてから、
「普段は厳格で真面目だが、家では驚くほど穏やかなんだ。
先日も夕食が遅くなったとき、わざわざ待っていてくれて……そういう優しさが、私は嬉しい」
と静かに微笑んだ。
エレナは優しく頷く。
「騎士団長様、とても素敵な方ですね」
ルシアンも穏やかに笑いながら、
「皆様のご主人、本当に素敵です」とつぶやく。
セリウスは少し照れたように視線を逸らし、
「……お互い様だ」と小さく返した。
⸻
そのとき、外から子どもたちのはしゃぐ声が響いた。
「そうですね、そろそろ庭に出て少し散歩するのはいかがでしょうか?」
エレナが微笑んで立ち上がると、オリシアもにこやかに頷く。
窓から差し込む光が紅茶の琥珀色を透かして揺れた。
ルシアンはその光景を見つめながら、静かな安堵を覚える。
――今日のことを、早くレオニス様に伝えたい。
そう思いながら、彼は穏やかに笑みを浮かべた。
サロンには、ほっと息をつくような柔らかな空気が流れた。
片隅では、子どもたちの笑い声が弾んで聞こえる。
ルシアンはカップをそっと置き、ふと今朝の出来事を思い出した。
――レオニス様、今ごろ大丈夫だろうか。
「少し、お聞きしたいことがありまして……」
小さく困ったように微笑みながら声をかけると、エレナたちが興味深げに視線を向けた。
「実は今日、レオニス様がユリルクを職場へ連れて行かれたのです。
職場に子を連れて行っても、よいものなのでしょうか……?」
その言葉に、アイリスは目を丸くし、オリシアは口元を押さえて驚きの表情を浮かべる。
エレナも思わず声を漏らした。
「えっ……職場に、お子さんを……?」
セリウスは苦笑して肩をすくめた。
「普通は、職場に子を連れていったりはしないな」
ルシアンは少し困ったように言葉を継いだ。
「やはり、普通はそうですよね……。
でもレオニス様は、まるで当たり前のように仰って……」
エレナは思わず微笑む。
「さすがレオニス様ですね……」
ルシアンは頬を少し赤らめ、打ち明けるように言った。
「私が安心してお茶会に来られるようにと……。
ご自分でユリルクの面倒を見るから、任せてくれと……」
アイリスは頬を染めながら息をついた。
「まぁ……なんてお優しいのかしら」
オリシアもにこやかに頷き、
「本当に、頼もしいご主人ですね」とつぶやいた。
セリウスは少し照れくさそうに微笑み、
「……レオニス殿らしい。家族に甘い方だからな」と言葉を添える。
エレナは目を細めて微笑んだ。
「そんなご主人なら、安心してお茶会に来られますね」
⸻
和やかな空気が流れ、話題は自然と夫たちの話へと移った。
「そういえば、オリシア様のご主人はどんな方なのですか? とても仲が良いと伺っております」
ルシアンが興味をにじませて尋ねると、オリシアは頬を染めて微笑んだ。
「あら……うふふ、そうですね」
彼女は胸元のネックレスにそっと指を添える。
「最近、主人はお花が好きなようで、仕事で訪れた国の花をいつも持ち帰ってくれるのです。
このネックレスも『君に似合うと思って』と贈ってくれたものなんですよ」
その声音には愛情が滲み、サロンの空気がふわりと温かくなる。
「まぁ、素敵!」
エレナが目を細めて微笑む。
「オリシア様とレアーヌ子爵様は恋愛結婚でしたよね。本当に憧れますわ」
「ええ、皆さまにも祝福していただいて……」
オリシアは頬を赤らめ、うふふと照れ笑いを浮かべた。
エレナは話題をそっとアイリスへと向ける。
「そういえば、アイリス様のご主人は? 商会のご様子などお聞きしたいわ」
グロウル男爵家は古くから大きな商会を営んでいる。
その言葉に、控えめなアイリスの瞳がぱっと輝いた。
「うちの主人は、最近、隣国から珍しい本を仕入れたそうなのです。
手触りが素晴らしくて、紙からほんのり香りがして……。この国では滅多にお目にかかれない品で――」
夢中で話すアイリスの顔は、生き生きとしていて、
ルシアンたちは思わず笑みを浮かべた。
「はっ……申し訳ありません。商会の話となると、つい……」
アイリスが照れくさそうに頬を赤らめると、
エレナは楽しげに笑う。
「いいえ、とても面白いお話でしたわ。アイリス様の新しい一面を知れて嬉しいです」
「本当に。いつもより生き生きしてらして、素敵でした」
オリシアも頷き、サロンには明るい笑い声が広がった。
「本当に。いつもより生き生きしてらして、素敵でした」
オリシアもにこやかに頷き、セリウスやルシアンも微笑む。
アイリスは照れながらも、少し誇らしげに微笑んだ。
サロンには、花の香りにも似た柔らかな笑い声が広がっていった。
━━━
エレナは紅茶を口にしながら、ふと笑った。
「皆様のご主人、本当に素敵ですわね」
オリシアが少し頬を染め、
「あら、エレナ様のご主人も芸術的で素敵ですわ。私の国でも有名でした」と返す。
「まぁ、光栄ですわ」
エレナは嬉しそうに笑い、少し照れたように目を伏せた。
「昔からの仲でしてね。私が作曲したり歌ったりすると、いつも最初に褒めてくれるのです」
その穏やかな表情に、皆の顔も自然とほころんだ。
やがてエレナは視線をセリウスへ向ける。
「セリウス様のご主人は、騎士団長様ですよね。普段はどのような方なのですか?」
セリウスは一瞬言葉を探すようにしてから、
「普段は厳格で真面目だが、家では驚くほど穏やかなんだ。
先日も夕食が遅くなったとき、わざわざ待っていてくれて……そういう優しさが、私は嬉しい」
と静かに微笑んだ。
エレナは優しく頷く。
「騎士団長様、とても素敵な方ですね」
ルシアンも穏やかに笑いながら、
「皆様のご主人、本当に素敵です」とつぶやく。
セリウスは少し照れたように視線を逸らし、
「……お互い様だ」と小さく返した。
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そのとき、外から子どもたちのはしゃぐ声が響いた。
「そうですね、そろそろ庭に出て少し散歩するのはいかがでしょうか?」
エレナが微笑んで立ち上がると、オリシアもにこやかに頷く。
窓から差し込む光が紅茶の琥珀色を透かして揺れた。
ルシアンはその光景を見つめながら、静かな安堵を覚える。
――今日のことを、早くレオニス様に伝えたい。
そう思いながら、彼は穏やかに笑みを浮かべた。
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