ポケットのなかの空

三尾

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DAY5

70

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「怖いの?」
 今度の問いにも首を振る。うなずいてしまえば、恐怖の理由を説明しなければならなくなる。
 水元は何かを迷っているようだった。それとも葛藤しているのだろうか。彼の身体は、足場の不安定な場所でバランスを取ろうとしているように身動きひとつしなかった。
「響野が俺の意見だと思ってるのは、俺の意見じゃないよ」
 迷いに決着がついたのか、水元は言った。
「心配してる」
 そう、声がしたかと思うと、ポリエチレン袋の音と一緒に相手の腕が背中に回ってきて響野は抱きしめられる。
 ほとんど力のこもらない抱き方だった。そうしたければ、いつでも振りほどいて逃げていいのだと言いたげな。
 響野は水元のほうに首を動かす。顔の横にぼやけた茶色い髪の毛のかたまりがあった。やわらかな毛先が頬にふれてくすぐったい。首筋と肩のあたりは特に体温が高くていい匂いがした。
 ……逃げる代わりに、つかまれていないほうの手を背中に回して、相手の肩に頭をうずめる。
 キスがしたいな、と思った。
 叶わないなら、少しのあいだこうしているだけでもいい。
 水元の手が後頭部の髪にふれてくる。熱を持った指先に、促すようにうなじの毛をまさぐられた。


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