5 / 61
おっさん、綾華のご両親と話す
しおりを挟む
はい? それはどういう意味でしょうか。
まるで、出来ちゃった婚の責任を取る男の台詞。
思わずあっけにとられる俺を尻目に彼女は一人で納得している。
どう突っ込んでいいか迷っていると、ドアがノックされた。
「お入りになって」
彼女が返事をすると、高そうなスーツと和服を着た中年の男女が入ってきた。
スーツ姿の男性の方には見覚えがある。TVで時々みる四条総裁だ。
と、言うことは隣の和服の女性は四条総裁の奥さんだろう。
思わず、姿勢を正そうとしたが左足の太ももが傷んだ。チャラ男に刺された箇所だ。
「あぁ、そのままの姿勢でいてください」
男性が微笑みながら少し低めのダンディな声で止めてきた。
四条グループの総裁というから威圧感のある人かと思ったが全然違う。
相手を包み込むかのような雰囲気で安心感がある。
「この度は、娘を救ってくれてありがとうございます。怪我をさせてしまって本当に申し訳ない。治療費や足のリハビリ代などは、当家が責任をもって負担します」
そう言い、俺なんかに向かって深々と頭を下げてきた。奥さんと彼女あやかも同じ様に下げてきた。
日本有数のグループ企業の社長家族に揃って、こういう態度を取られると逆に居心地が悪い。
「頭を上げてください。俺は大したことしていません。むしろ、こちらこそ、お世話になってしまい申し訳ありません」
「いや、娘から経緯は聞いています。周りの大人たちが見知らぬフリで去っていく中、君だけが助けてくれたと。それにナイフを持った相手に怯むことなく、娘をかばってくれたと。君が居なければ、娘がどうなっていたことか。本当に感謝していている」
……なんだろう、若干良心がいたむ。
でも、さすがにあの場面で彼女を見捨てたら人間として終わる気がしたし。
「娘に聞いたところ、会社をクビになってしまったとか。再就職先も責任を持って紹介しましょう。どこか希望の会社はありますか」
「お父様、それについてはわたくしに考えがありますの」
彼女が笑顔で四条総裁へ話しかけた。
待て、さっきの台詞を言うつもりか?
「わたくし、若宮様の人生をお世話差し上げたいの」
先程より具体性のある発言に、四条総裁が固まった。
そりゃ、そうだろう。大事な高校生の娘がいきなり妻になりますとも取れる言葉を口にしたんだ。
相手は恩人とは言え、素性の知らない男。
いや、太ももを治療して家に泊めている以上、俺の素性はとっくに調べられているかもしれない。
病院で治療したなら健康保険証が必要だったろうし。
四条グループの力をもってすれば、大した経歴のない俺なんてすぐに分かるだろう。
もし、仮に素性に問題ないと判断されても、父親として娘の発言を平然としては受け止められないだろう。
しかも、相手がこんな禿散らかし気味で肥満体型の四十歳のおっさんだ。
奥さんはどうなのだろうとみてみると、何やら目をキラキラさせていた。あらあらまあまあ、という顔だ。
いや、そこは総裁と一緒に心配すべきでしょう奥さん。
四条総裁は引きつり笑顔のまま彼女へ向き直る。
「綾華、ちょっと部屋の外で話そうか。すまない、ちょっと待っててくれるかな」
まるで、出来ちゃった婚の責任を取る男の台詞。
思わずあっけにとられる俺を尻目に彼女は一人で納得している。
どう突っ込んでいいか迷っていると、ドアがノックされた。
「お入りになって」
彼女が返事をすると、高そうなスーツと和服を着た中年の男女が入ってきた。
スーツ姿の男性の方には見覚えがある。TVで時々みる四条総裁だ。
と、言うことは隣の和服の女性は四条総裁の奥さんだろう。
思わず、姿勢を正そうとしたが左足の太ももが傷んだ。チャラ男に刺された箇所だ。
「あぁ、そのままの姿勢でいてください」
男性が微笑みながら少し低めのダンディな声で止めてきた。
四条グループの総裁というから威圧感のある人かと思ったが全然違う。
相手を包み込むかのような雰囲気で安心感がある。
「この度は、娘を救ってくれてありがとうございます。怪我をさせてしまって本当に申し訳ない。治療費や足のリハビリ代などは、当家が責任をもって負担します」
そう言い、俺なんかに向かって深々と頭を下げてきた。奥さんと彼女あやかも同じ様に下げてきた。
日本有数のグループ企業の社長家族に揃って、こういう態度を取られると逆に居心地が悪い。
「頭を上げてください。俺は大したことしていません。むしろ、こちらこそ、お世話になってしまい申し訳ありません」
「いや、娘から経緯は聞いています。周りの大人たちが見知らぬフリで去っていく中、君だけが助けてくれたと。それにナイフを持った相手に怯むことなく、娘をかばってくれたと。君が居なければ、娘がどうなっていたことか。本当に感謝していている」
……なんだろう、若干良心がいたむ。
でも、さすがにあの場面で彼女を見捨てたら人間として終わる気がしたし。
「娘に聞いたところ、会社をクビになってしまったとか。再就職先も責任を持って紹介しましょう。どこか希望の会社はありますか」
「お父様、それについてはわたくしに考えがありますの」
彼女が笑顔で四条総裁へ話しかけた。
待て、さっきの台詞を言うつもりか?
「わたくし、若宮様の人生をお世話差し上げたいの」
先程より具体性のある発言に、四条総裁が固まった。
そりゃ、そうだろう。大事な高校生の娘がいきなり妻になりますとも取れる言葉を口にしたんだ。
相手は恩人とは言え、素性の知らない男。
いや、太ももを治療して家に泊めている以上、俺の素性はとっくに調べられているかもしれない。
病院で治療したなら健康保険証が必要だったろうし。
四条グループの力をもってすれば、大した経歴のない俺なんてすぐに分かるだろう。
もし、仮に素性に問題ないと判断されても、父親として娘の発言を平然としては受け止められないだろう。
しかも、相手がこんな禿散らかし気味で肥満体型の四十歳のおっさんだ。
奥さんはどうなのだろうとみてみると、何やら目をキラキラさせていた。あらあらまあまあ、という顔だ。
いや、そこは総裁と一緒に心配すべきでしょう奥さん。
四条総裁は引きつり笑顔のまま彼女へ向き直る。
「綾華、ちょっと部屋の外で話そうか。すまない、ちょっと待っててくれるかな」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
バイト先の先輩ギャルが実はクラスメイトで、しかも推しが一緒だった件
沢田美
恋愛
「きょ、今日からお世話になります。有馬蓮です……!」
高校二年の有馬蓮は、人生初のアルバイトで緊張しっぱなし。
そんな彼の前に現れたのは、銀髪ピアスのギャル系先輩――白瀬紗良だった。
見た目は派手だけど、話してみるとアニメもゲームも好きな“同類”。
意外な共通点から意気投合する二人。
だけどその日の帰り際、店長から知らされたのは――
> 「白瀬さん、今日で最後のシフトなんだよね」
一期一会の出会い。もう会えないと思っていた。
……翌日、学校で再会するまでは。
実は同じクラスの“白瀬さん”だった――!?
オタクな少年とギャルな少女の、距離ゼロから始まる青春ラブコメ。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる