12 / 61
おっさん、綾華のお手前を堪能する
しおりを挟む
「ごめんごめん、別に可笑しい訳じゃないし責めているわけでもないよ」
「……でも、笑いましたわ」
「ごめんね、なんか可愛いなぁって思ってさ。なんつーか、年相応の姿が見れたっていうか。今までの綾華さんはお嬢様みたい感じで少し接しづらい部分があったから」
涙ぐむのは止まったものの、今度は複雑な表情をされた。
その場で正座し直し、背筋を伸ばしながらも不安げな目で言ってくる。
「わたくし、そんなに接しづらいですの?」
「いや、接しづらいって言うか、住む世界の違くて勝手に気後れしちゃうっていうか」
「ふふふ、若宮様の方が年上なんですし気後れなんてしないでくださいませ」
「そう言われてもねぇ。努力はするよ」
言って直せるもんじゃないし、気にしない様になって慣れたら問題なんだけど。
とりあえず、変な誤解は解かないとな、そもそも世界が違うからかく恥も無い。
「あー、正直に言うと茶道なんてしたことないから、どう飲めばいいか分からなかったんだ。ほら、なんか茶碗をクルクル回すとかあるのは知っているんだけど」
「左様でしたか。気を使わせてしまい申し訳ありません、お気になさらずに飲んでくださいませ」
足の痺れから回復した綾華は棚から高級そうな羊かんを切り分けて懐紙にお盆にのせて運んできた。
俺も綾華と一緒に元の位置に戻り、おたがいに向き合いながら正座する。
懐紙に添えられた楊枝で羊かんを切り分けて口に運ぶ。
口の中に痺れる様な甘さが広がり、蕩けるような食感が口の中に行き渡った。
「美味い、何この羊かん。羊かんってこんな食感だっけ。甘みもまろやかだし、上品な甘みってこういうことを言うのか」
「恐れ入ります。お気に入りいただけたみたいで嬉しいですわ。代々お世話になっている京都の老舗の品ですの」
さすが千年王都の京都の味だ、格が違う。
そのまま出された抹茶を飲んだら、口の中の甘みが旨みに代わり滑らかに口を通り胃に染み渡った。
抹茶って苦いもんじゃなかったっけ、こんなに美味いもんだったんだ。
「ふぅ、美味かった。羊かんも抹茶もこんなに美味いって感じたのは初めてだよ」
「ふふふ、ありがとう存じます。ご希望であれば、いつでもお出しいたしますわ」
「いや、いつでも食べたいけど、食べ過ぎたら更に太りそうで困るなぁ」
「わたくしは若宮様がふくよかになられても気にいたしませんわ。だから、いつでもおっしゃってくださいませ」
……いや、既にふくよかを通り過ぎて、実は健康診断の結果が色々とやばいんですが。
なんかだかなぁ、都合がよすぎて逆に怖い、実はドッキリでしたぁって看板を持ったおっさんが出てきても可笑しくない状況なんだし。
思わず隠しカメラがないか室内を見渡してしまった。
「どうか、いたしまして?」
「いや、どっかに隠しカメラがあるんじゃないかと……」
キョトンとした顔で顎に人差し指を当てて首をかしげる綾華。
お嬢様は隠しカメラという単語すら知らないのかもしれない。
知っていいたとしても、脈絡なく言われれば混乱するか。
変にとりつくろえばさっきの二の舞だ、ストレートに言った方が伝わるか。
「なんでもない。気にしないでくれ。なあ、それよりちょっと聞きたいことあるんだけどいいかな?」
「何でも聞いてくださいませ」
何でもって言われると卑猥なことも聞いていいのかという考えが頭をよぎるのは下種の極みだろうか。
そっち系の事もいつか聞いてみたい気もするが、聞いた瞬間に軽蔑されこの関係は終わるだろう。
終わってもいいとは思っているが、何もいま彼女を傷つけてまでする事じゃない。
それよりも、今は真面目な質問だ。
「あのさ、前に俺の人生をお世話するって言ってたでしょ。その、なんで俺なの? 俺じゃなくても若くて格好良くて頭もいい人たちは沢山いるでしょ」
そう、亡くなった兄の代わりなら俺じゃなくてもいいはずだ。
亡くなった兄ですら、年齢を計算すると二十六,七で俺よりも一回り以上若い。
何も好き好んで、こんな頭髪の薄い太ったおっさんを選ばなくてもいいだろうに。
綾華は困った顔で顔を赤らめながらも真剣に考えてくれているが、よくよく考えれば恋人同士ですら照れる困った質問か。
ましてや、俺は恋人でもないし流れのままに傍にいるだけで、一緒に住まわせてもらっているだけなのに。
明らかにデリカシーのない質問だ。
質問をとり消そうかと思った時、綾華は優しい目で俺を見てきた。
「……でも、笑いましたわ」
「ごめんね、なんか可愛いなぁって思ってさ。なんつーか、年相応の姿が見れたっていうか。今までの綾華さんはお嬢様みたい感じで少し接しづらい部分があったから」
涙ぐむのは止まったものの、今度は複雑な表情をされた。
その場で正座し直し、背筋を伸ばしながらも不安げな目で言ってくる。
「わたくし、そんなに接しづらいですの?」
「いや、接しづらいって言うか、住む世界の違くて勝手に気後れしちゃうっていうか」
「ふふふ、若宮様の方が年上なんですし気後れなんてしないでくださいませ」
「そう言われてもねぇ。努力はするよ」
言って直せるもんじゃないし、気にしない様になって慣れたら問題なんだけど。
とりあえず、変な誤解は解かないとな、そもそも世界が違うからかく恥も無い。
「あー、正直に言うと茶道なんてしたことないから、どう飲めばいいか分からなかったんだ。ほら、なんか茶碗をクルクル回すとかあるのは知っているんだけど」
「左様でしたか。気を使わせてしまい申し訳ありません、お気になさらずに飲んでくださいませ」
足の痺れから回復した綾華は棚から高級そうな羊かんを切り分けて懐紙にお盆にのせて運んできた。
俺も綾華と一緒に元の位置に戻り、おたがいに向き合いながら正座する。
懐紙に添えられた楊枝で羊かんを切り分けて口に運ぶ。
口の中に痺れる様な甘さが広がり、蕩けるような食感が口の中に行き渡った。
「美味い、何この羊かん。羊かんってこんな食感だっけ。甘みもまろやかだし、上品な甘みってこういうことを言うのか」
「恐れ入ります。お気に入りいただけたみたいで嬉しいですわ。代々お世話になっている京都の老舗の品ですの」
さすが千年王都の京都の味だ、格が違う。
そのまま出された抹茶を飲んだら、口の中の甘みが旨みに代わり滑らかに口を通り胃に染み渡った。
抹茶って苦いもんじゃなかったっけ、こんなに美味いもんだったんだ。
「ふぅ、美味かった。羊かんも抹茶もこんなに美味いって感じたのは初めてだよ」
「ふふふ、ありがとう存じます。ご希望であれば、いつでもお出しいたしますわ」
「いや、いつでも食べたいけど、食べ過ぎたら更に太りそうで困るなぁ」
「わたくしは若宮様がふくよかになられても気にいたしませんわ。だから、いつでもおっしゃってくださいませ」
……いや、既にふくよかを通り過ぎて、実は健康診断の結果が色々とやばいんですが。
なんかだかなぁ、都合がよすぎて逆に怖い、実はドッキリでしたぁって看板を持ったおっさんが出てきても可笑しくない状況なんだし。
思わず隠しカメラがないか室内を見渡してしまった。
「どうか、いたしまして?」
「いや、どっかに隠しカメラがあるんじゃないかと……」
キョトンとした顔で顎に人差し指を当てて首をかしげる綾華。
お嬢様は隠しカメラという単語すら知らないのかもしれない。
知っていいたとしても、脈絡なく言われれば混乱するか。
変にとりつくろえばさっきの二の舞だ、ストレートに言った方が伝わるか。
「なんでもない。気にしないでくれ。なあ、それよりちょっと聞きたいことあるんだけどいいかな?」
「何でも聞いてくださいませ」
何でもって言われると卑猥なことも聞いていいのかという考えが頭をよぎるのは下種の極みだろうか。
そっち系の事もいつか聞いてみたい気もするが、聞いた瞬間に軽蔑されこの関係は終わるだろう。
終わってもいいとは思っているが、何もいま彼女を傷つけてまでする事じゃない。
それよりも、今は真面目な質問だ。
「あのさ、前に俺の人生をお世話するって言ってたでしょ。その、なんで俺なの? 俺じゃなくても若くて格好良くて頭もいい人たちは沢山いるでしょ」
そう、亡くなった兄の代わりなら俺じゃなくてもいいはずだ。
亡くなった兄ですら、年齢を計算すると二十六,七で俺よりも一回り以上若い。
何も好き好んで、こんな頭髪の薄い太ったおっさんを選ばなくてもいいだろうに。
綾華は困った顔で顔を赤らめながらも真剣に考えてくれているが、よくよく考えれば恋人同士ですら照れる困った質問か。
ましてや、俺は恋人でもないし流れのままに傍にいるだけで、一緒に住まわせてもらっているだけなのに。
明らかにデリカシーのない質問だ。
質問をとり消そうかと思った時、綾華は優しい目で俺を見てきた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
バイト先の先輩ギャルが実はクラスメイトで、しかも推しが一緒だった件
沢田美
恋愛
「きょ、今日からお世話になります。有馬蓮です……!」
高校二年の有馬蓮は、人生初のアルバイトで緊張しっぱなし。
そんな彼の前に現れたのは、銀髪ピアスのギャル系先輩――白瀬紗良だった。
見た目は派手だけど、話してみるとアニメもゲームも好きな“同類”。
意外な共通点から意気投合する二人。
だけどその日の帰り際、店長から知らされたのは――
> 「白瀬さん、今日で最後のシフトなんだよね」
一期一会の出会い。もう会えないと思っていた。
……翌日、学校で再会するまでは。
実は同じクラスの“白瀬さん”だった――!?
オタクな少年とギャルな少女の、距離ゼロから始まる青春ラブコメ。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる