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おっさん、綾華に暴走される
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「若宮様はわたくしの人生に色を与えてくださいましたわ」
「……どういうこと?」
「……お兄様が亡くなられて以来、わたくしの目に映るのはすべて灰色の風景ばかりでしたの。比喩じゃありませんのよ。本当に色がなかったんですの。学校や友人、お父様やお母様と話している時でさえすべて灰色に見えていましたの。そんな中、あの公園で若宮様に助けられた時、唐突にすべてに色が戻りましたの」
……重い、重すぎる。
気持ちはわかるし境遇には同情するけど重いよぉ、二十代の頃なら綾華を守る気満々になっただろうけど。
綾華は顔を赤らめ、ちょいちょい早口になりながら続けてくる。
「それに周りの殿方がわたくしを見捨てていく中、若宮様だけはお助けくださいましたわ。でも、そのせいで若宮様の人生に取り返しのつかないことを……」
「あー、いや、その辺りのことは気にしないでいいよホント。人間、どうにでも生きていけるし」
「そんなこと駄目ですわ! 若宮様の大切な人生ですのよ」
だから、重いってそういうの、人生もっとフランクでいいじゃん。
真っすぐな思春期のせいか、純粋培養で育ったせいか、あるいはその両方のせいか、真っすぐな生き方しか知らないんだろうなぁ。
四条総裁が言う世間知らずっていうのはこういうところも含むのかな。大人になればいずれ学ぶ価値観だろうけど、綾華の場合はこのまま生きていきそうだ。
人間起きて半畳寝て一畳、生きているだけ丸儲けなんだけどなぁ。
俺がここで断ったらまた綾華の人生が灰色になるかもしれない。
とりあえず好かれているというより、白馬の王子様的な立ち位置だなこれは。
恋は盲目、恋愛フィルターで俺を美化して見ているだけだ。
二年半も一緒に居れば恋愛フィルターの効果も徐々に薄れるだろし、その時に俺の性格や外見を冷静に見れば気持ちも冷めるだろう。
色が戻った状態で冷めれば、綾華はどこぞのイケメン御曹司と交際するだろう。
その時に俺は二年半貯めた貯蓄で適当に生きればいい。
それが綾華にとって一番幸せな生き方だろう。
「ありがとう、綾華さんの言うとおりだ。お互い自分の人生は大切にしないとな」
「そうですわ。わたくしに出来る事があれば何でもおっしゃってくださいませ。出来れば、その将来的に……」
綾華はうるんだ目で顔を赤くし、俺を見つめてきた。
「ま、まあそういうのは段階を踏んでいこうか。人生何があるかわからないから」
俺は背中に汗をかきながら、綾華を優しく諭した。
ここで変に言質を取らせて関係を固めてしまっては将来に禍根を残すだろうし、綾華は冷静になるべきだ。
いい子なんだが若干暴走気味な気もする。
「わたくし、友人からは尽くすタイプと言われてますのよ。若宮様にふさわしい女性になれるように頑張りますわ。横に並んでも恥ずかしくない妻にならないといけませんことね」
大丈夫、むしろ並んで恥ずかしいのは俺の方だから。
美女と野獣カップルとよく言われるケースがあるが、あれは男性側が何かしらの社会的ステータスを持っているから成り立つのであって、無職の太った中年男では成り立つはずもない。
せめて、歌って踊れる中年とかダンディな中年男ならともかく、不摂生で太ってて頭髪も薄い俺では釣り合うはずもない。
下手に綾華の意見を否定するのも意味がないだろうなぁ。
俺が否定して綾華が簡単に納得するなら、ここまで暴走気味な言葉も出てこないだろうし。
ビジネスの場ならともかく、プライベートな場で男と女が口論しても勝つのは女だ。
自慢じゃないが俺はビジネスの場でも、女性と議論して勝てたことはない。
「そういや、綾華さんは好きな男性のタイプってあるの?」
「今まで考えたことはありませんわ。身内を除けば男性と接する機会はありませんでしたのよ。殿方と付き合ってらっしゃる友人は何人かいますけど、わたくしは今まで意識した事もありませんでしたもの」
「あぁ、白菊女学園って幼稚園から大学までのエスカレータ式女子校だっけ。そりゃ、男と知り合うことってなかなかないよね」
「そうでもありませんのよ。確かに普段では学校で知り合う機会はありませんけど、年に一般開放する文化祭やクリスマス礼拝などで訪れる殿方もいらっしゃいます」
「そうか、お嬢様と付き合いたいって連中はその機会に頑張るわけか」
「そういう方々もいらっしゃるでしょうけど、交際目的の方々は少数派かと存じます」
「なんで?」
「在校生以外の参加者は、在校生からの参加許可証が必要ですの。参加許可証には紹介者の指名が記入されていますので、身元確認がしっかりされている人以外は参加できませんのよ」
なるほど、お嬢様方が紹介する人たちなら身元は保証されてるし、同じ世界のお坊ちゃま連中だろう。
お坊ちゃま連中はモテモテで周りに女性を侍らせてファンクラブまであるって、ドラマや漫画で言われてるから交際相手には苦労しないのだろう。
いいなぁ、羨ましい。
そんな俺の内心を知らずに、綾華は何か明暗を思いついたという風に両手を胸の前で叩きながら笑顔で言ってきた。
「……どういうこと?」
「……お兄様が亡くなられて以来、わたくしの目に映るのはすべて灰色の風景ばかりでしたの。比喩じゃありませんのよ。本当に色がなかったんですの。学校や友人、お父様やお母様と話している時でさえすべて灰色に見えていましたの。そんな中、あの公園で若宮様に助けられた時、唐突にすべてに色が戻りましたの」
……重い、重すぎる。
気持ちはわかるし境遇には同情するけど重いよぉ、二十代の頃なら綾華を守る気満々になっただろうけど。
綾華は顔を赤らめ、ちょいちょい早口になりながら続けてくる。
「それに周りの殿方がわたくしを見捨てていく中、若宮様だけはお助けくださいましたわ。でも、そのせいで若宮様の人生に取り返しのつかないことを……」
「あー、いや、その辺りのことは気にしないでいいよホント。人間、どうにでも生きていけるし」
「そんなこと駄目ですわ! 若宮様の大切な人生ですのよ」
だから、重いってそういうの、人生もっとフランクでいいじゃん。
真っすぐな思春期のせいか、純粋培養で育ったせいか、あるいはその両方のせいか、真っすぐな生き方しか知らないんだろうなぁ。
四条総裁が言う世間知らずっていうのはこういうところも含むのかな。大人になればいずれ学ぶ価値観だろうけど、綾華の場合はこのまま生きていきそうだ。
人間起きて半畳寝て一畳、生きているだけ丸儲けなんだけどなぁ。
俺がここで断ったらまた綾華の人生が灰色になるかもしれない。
とりあえず好かれているというより、白馬の王子様的な立ち位置だなこれは。
恋は盲目、恋愛フィルターで俺を美化して見ているだけだ。
二年半も一緒に居れば恋愛フィルターの効果も徐々に薄れるだろし、その時に俺の性格や外見を冷静に見れば気持ちも冷めるだろう。
色が戻った状態で冷めれば、綾華はどこぞのイケメン御曹司と交際するだろう。
その時に俺は二年半貯めた貯蓄で適当に生きればいい。
それが綾華にとって一番幸せな生き方だろう。
「ありがとう、綾華さんの言うとおりだ。お互い自分の人生は大切にしないとな」
「そうですわ。わたくしに出来る事があれば何でもおっしゃってくださいませ。出来れば、その将来的に……」
綾華はうるんだ目で顔を赤くし、俺を見つめてきた。
「ま、まあそういうのは段階を踏んでいこうか。人生何があるかわからないから」
俺は背中に汗をかきながら、綾華を優しく諭した。
ここで変に言質を取らせて関係を固めてしまっては将来に禍根を残すだろうし、綾華は冷静になるべきだ。
いい子なんだが若干暴走気味な気もする。
「わたくし、友人からは尽くすタイプと言われてますのよ。若宮様にふさわしい女性になれるように頑張りますわ。横に並んでも恥ずかしくない妻にならないといけませんことね」
大丈夫、むしろ並んで恥ずかしいのは俺の方だから。
美女と野獣カップルとよく言われるケースがあるが、あれは男性側が何かしらの社会的ステータスを持っているから成り立つのであって、無職の太った中年男では成り立つはずもない。
せめて、歌って踊れる中年とかダンディな中年男ならともかく、不摂生で太ってて頭髪も薄い俺では釣り合うはずもない。
下手に綾華の意見を否定するのも意味がないだろうなぁ。
俺が否定して綾華が簡単に納得するなら、ここまで暴走気味な言葉も出てこないだろうし。
ビジネスの場ならともかく、プライベートな場で男と女が口論しても勝つのは女だ。
自慢じゃないが俺はビジネスの場でも、女性と議論して勝てたことはない。
「そういや、綾華さんは好きな男性のタイプってあるの?」
「今まで考えたことはありませんわ。身内を除けば男性と接する機会はありませんでしたのよ。殿方と付き合ってらっしゃる友人は何人かいますけど、わたくしは今まで意識した事もありませんでしたもの」
「あぁ、白菊女学園って幼稚園から大学までのエスカレータ式女子校だっけ。そりゃ、男と知り合うことってなかなかないよね」
「そうでもありませんのよ。確かに普段では学校で知り合う機会はありませんけど、年に一般開放する文化祭やクリスマス礼拝などで訪れる殿方もいらっしゃいます」
「そうか、お嬢様と付き合いたいって連中はその機会に頑張るわけか」
「そういう方々もいらっしゃるでしょうけど、交際目的の方々は少数派かと存じます」
「なんで?」
「在校生以外の参加者は、在校生からの参加許可証が必要ですの。参加許可証には紹介者の指名が記入されていますので、身元確認がしっかりされている人以外は参加できませんのよ」
なるほど、お嬢様方が紹介する人たちなら身元は保証されてるし、同じ世界のお坊ちゃま連中だろう。
お坊ちゃま連中はモテモテで周りに女性を侍らせてファンクラブまであるって、ドラマや漫画で言われてるから交際相手には苦労しないのだろう。
いいなぁ、羨ましい。
そんな俺の内心を知らずに、綾華は何か明暗を思いついたという風に両手を胸の前で叩きながら笑顔で言ってきた。
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