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おっさん、綾華に悲しまれる
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「そうですわ。若宮様も一度いらしてくださいませ」
「ん? 何処に?」
「クリスマス礼拝にですわ。とても聖歌を歌う時なんて幻想的で素敵ですのよ。本当は文化祭にもお招きしたいのですが、今年分の申請は終わってしまってますの」
「ぶ!? いや、さすがにそれはダメでしょ」
「何故ですの?」
「いや、だってこんなおっさんだよ?」
「許可証の条件に年齢制限はありませんわ」
「いや、そういうことじゃなくてね。ほら、俺って教養とかもないし」
「許可証の条件に学歴制限はありません事よ」
遠回しに行きたくないって言ってるのに、この子わかってくれない。
一般紙庶民の俺なんかが上流階級の祭りに参加したら、絶対に蔑みの的だし綾華の品格に傷がつくっちゅうねん。
俺の外見的に美女と野獣というより、美女と野ブタだし。
ここは男らしくハッキリと断らないと
「ほら、俺なんかが綾華さんの紹介で参加したなんて周りに知られてたら恥でしょ? それにそういう場所に俺などんてふさわしくないし行っても浮くだけだからさ」
途端に暖かった部屋の温度が一気に下がり、和やかな雰囲気が張り詰めたのが肌で感じられた。
原因は明確だ、今まで笑顔だった綾華の笑顔が凍り付いている。
やがって、笑顔が消え愛らしい目が細められ抑制のない口調になった。
「おっしゃっている意味が良く分かりませんの」
「いや、そのままの意味で……」
「どうして、わたくしが若宮様の事を紹介することが恥になりますの?」
「いや、こんなおっさん……」
更に部屋の温度が数度下がった。
今度は細められた目に悲しみの色が浮かび、うっすらと涙が浮かんできた。
だぁ~、駄目だ駄目だ分かった分かった、俺が我慢して参加すればいいんだろ。
「いや、俺が悪かった。忘れてくれゴメン」
とりあえず、謝ったが部屋の沈黙の重さは変わらない。
外の雨は相変わらず激しいはずなのに、先ほどよりも遠く聴こえる。
綾華はうっすらと浮かべた涙を引っ込めることもなく、真っすぐ俺を見つめてきている。
温かみと悲しさが交互に、時には入り混じったような感じの瞳だ。
理由は良く分からないが、十六歳の女の子を確実に傷付けたことだけは分かる。
俺がフォローなり場を和めさせる様な事を言わなければいけないんだろう。
だが、何を言えば良いのか分からん。
綾華に返す言葉に詰まっていると和室の外から声がかけられた。
『お嬢様、お待たせいたしました。桜庭でございます、お迎えに上がりました』
綾香が柔和な表情にスッと戻り、部屋の温度もいくばくか常温に近づいた。
ノックに綾華が応えると和室のドアが開かれると、外にリムジンが止まっているのが見えた。
茶器を片付けを手伝おうとしたが、綾華は「わたくしの役目ですわ」と言い、先にリムジンの乗っているように勧めてきた。
ちなみに今回は足が痺れた様子はなく、テキパキと茶器を片付けていた。
俺は言われた通り、先にリムジンに乗り込もうとした時に桜庭さんが耳打ちしてくる。
「若宮様は考えすぎではないですか。お嬢様は人を色眼鏡などで見たりは致しません」
「あー、どこら辺から聞いていたんですか」
「そうですなぁ、お嬢様が足を痺れさせたっぽい辺りからですかな」
「そんな、前から……」
軽く恨めしく桜庭さんを見たが、本人は素知らぬ顔だった。
まあ、桜庭さんの思惑はともかくとして、あのタイミングで声をかけてもらえたのは助かった。
四十歳にもなりながら気の利いた言葉も浮かばなかった、情けないな。
茶器を片付けて車内に入ってきた綾華は普段の綾華だった。
桜庭さんと談笑する綾華は和やかで、俺に話を振ってくる時にも笑顔だった。
フラれた話題に対してなんて答えたかはあまり覚えていない。
屋敷に戻る時間は短いはずなのに、俺には長く感じられた。
「ん? 何処に?」
「クリスマス礼拝にですわ。とても聖歌を歌う時なんて幻想的で素敵ですのよ。本当は文化祭にもお招きしたいのですが、今年分の申請は終わってしまってますの」
「ぶ!? いや、さすがにそれはダメでしょ」
「何故ですの?」
「いや、だってこんなおっさんだよ?」
「許可証の条件に年齢制限はありませんわ」
「いや、そういうことじゃなくてね。ほら、俺って教養とかもないし」
「許可証の条件に学歴制限はありません事よ」
遠回しに行きたくないって言ってるのに、この子わかってくれない。
一般紙庶民の俺なんかが上流階級の祭りに参加したら、絶対に蔑みの的だし綾華の品格に傷がつくっちゅうねん。
俺の外見的に美女と野獣というより、美女と野ブタだし。
ここは男らしくハッキリと断らないと
「ほら、俺なんかが綾華さんの紹介で参加したなんて周りに知られてたら恥でしょ? それにそういう場所に俺などんてふさわしくないし行っても浮くだけだからさ」
途端に暖かった部屋の温度が一気に下がり、和やかな雰囲気が張り詰めたのが肌で感じられた。
原因は明確だ、今まで笑顔だった綾華の笑顔が凍り付いている。
やがって、笑顔が消え愛らしい目が細められ抑制のない口調になった。
「おっしゃっている意味が良く分かりませんの」
「いや、そのままの意味で……」
「どうして、わたくしが若宮様の事を紹介することが恥になりますの?」
「いや、こんなおっさん……」
更に部屋の温度が数度下がった。
今度は細められた目に悲しみの色が浮かび、うっすらと涙が浮かんできた。
だぁ~、駄目だ駄目だ分かった分かった、俺が我慢して参加すればいいんだろ。
「いや、俺が悪かった。忘れてくれゴメン」
とりあえず、謝ったが部屋の沈黙の重さは変わらない。
外の雨は相変わらず激しいはずなのに、先ほどよりも遠く聴こえる。
綾華はうっすらと浮かべた涙を引っ込めることもなく、真っすぐ俺を見つめてきている。
温かみと悲しさが交互に、時には入り混じったような感じの瞳だ。
理由は良く分からないが、十六歳の女の子を確実に傷付けたことだけは分かる。
俺がフォローなり場を和めさせる様な事を言わなければいけないんだろう。
だが、何を言えば良いのか分からん。
綾華に返す言葉に詰まっていると和室の外から声がかけられた。
『お嬢様、お待たせいたしました。桜庭でございます、お迎えに上がりました』
綾香が柔和な表情にスッと戻り、部屋の温度もいくばくか常温に近づいた。
ノックに綾華が応えると和室のドアが開かれると、外にリムジンが止まっているのが見えた。
茶器を片付けを手伝おうとしたが、綾華は「わたくしの役目ですわ」と言い、先にリムジンの乗っているように勧めてきた。
ちなみに今回は足が痺れた様子はなく、テキパキと茶器を片付けていた。
俺は言われた通り、先にリムジンに乗り込もうとした時に桜庭さんが耳打ちしてくる。
「若宮様は考えすぎではないですか。お嬢様は人を色眼鏡などで見たりは致しません」
「あー、どこら辺から聞いていたんですか」
「そうですなぁ、お嬢様が足を痺れさせたっぽい辺りからですかな」
「そんな、前から……」
軽く恨めしく桜庭さんを見たが、本人は素知らぬ顔だった。
まあ、桜庭さんの思惑はともかくとして、あのタイミングで声をかけてもらえたのは助かった。
四十歳にもなりながら気の利いた言葉も浮かばなかった、情けないな。
茶器を片付けて車内に入ってきた綾華は普段の綾華だった。
桜庭さんと談笑する綾華は和やかで、俺に話を振ってくる時にも笑顔だった。
フラれた話題に対してなんて答えたかはあまり覚えていない。
屋敷に戻る時間は短いはずなのに、俺には長く感じられた。
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