39 / 61
おっさん、麗奈と語らう
しおりを挟む
麗華とはあの一件以来だ。
「あ、ごめ、いや、申し訳ない、考え事をしていまして、西園寺さん」
「ご無理なさらず、若宮様の普段通りの口調で良いですのよ」
「ありがとう、敬語とか苦手で。綾華と話している時も敬語なんて使わないし」
そんな俺を軽やかに微笑みながら麗奈は居ずまいを正してきた。
そして、腰を九十度に曲げて俺に頭を下げてきた。
一瞬、何をしているのか分からなかったが謝られていると分かったのは、麗奈の言葉を聞いてからだ。
「まずは先日のご無礼、誠に申し訳ございません。あの後、小林はきつく叱り執事見習いへ降格させました」
「あ、あの事ね。いいよ、もう気にしていないから頭を上げてくれ」
「いえ、あの場で当家に恥をかかせないために泥まで被っていただき、父からも会えば必ず謝罪とお礼をと申し使っておりますの」
「わ、分かったから、とりあえず頭上げて? ね? ね?」
ちなみに、西園寺家のためではなく四条家のためなんだけどね。
綾華といい雪菜といい麗奈といい、お嬢様方は勘違いが激しいな。
そんなことよりも、まずいのはこの状況。
天下の西園寺家のご令嬢が学校の敷地内で見知らぬおっさんに頭を下げている。
しかも、人ごみの多い中庭の噴水。これはもう大事件である。
恐る恐る周りを見ると、案の定、注目を集めていた。
「まあ、ご覧あそばせ、西園寺様が」
「西園寺様が頭を下げるなど、何処の名家の御曹司なのかしら」
「どなたかあの方のお名前をご存知あって?」
御曹司じゃありません。しがない社畜だった薄ハゲ中年です!
しかも、一ヶ月前までは三段腹の親父でした!
周りの声に心の中で反論しつつ、なんとか麗奈に頭を上げてもらった。
「今後、何か困ったことがあれば、おっしゃってくださいね。最大限、ご協力差し上げますわ。ところで、若宮様はこちらからどちらへ?」
「綾華に講堂に来る様に言われているんだけど、広すぎて何処にあるか見当がつかなくてね」
「当校を初めの方が迷わず講堂へ行くのは難しいですわ。ご案内して差し上げますわ」
「あ、ありがとう。このままだと一時間かけても辿り着ける自信ないから頼むわ」
麗奈と一緒に校内を歩き始めて、自分の失敗に気づいた。
麗奈の注目度が半端ないのである。西園寺家という肩書きもあるだろうけど、それを抜きにしても絶世の美少女。
そんな麗奈と男が歩いていれば、否応なしに勘繰られる。ましてや、さっきの出来事を見ていた連中からすればなおさらだろう。
俺を四条家の関係者だと知っているのは極少数だし、痩せてから学校に来たのは初めてだし。
ん? そういえば、なんで麗奈は俺が分かったんだろう。
「あ、ごめ、いや、申し訳ない、考え事をしていまして、西園寺さん」
「ご無理なさらず、若宮様の普段通りの口調で良いですのよ」
「ありがとう、敬語とか苦手で。綾華と話している時も敬語なんて使わないし」
そんな俺を軽やかに微笑みながら麗奈は居ずまいを正してきた。
そして、腰を九十度に曲げて俺に頭を下げてきた。
一瞬、何をしているのか分からなかったが謝られていると分かったのは、麗奈の言葉を聞いてからだ。
「まずは先日のご無礼、誠に申し訳ございません。あの後、小林はきつく叱り執事見習いへ降格させました」
「あ、あの事ね。いいよ、もう気にしていないから頭を上げてくれ」
「いえ、あの場で当家に恥をかかせないために泥まで被っていただき、父からも会えば必ず謝罪とお礼をと申し使っておりますの」
「わ、分かったから、とりあえず頭上げて? ね? ね?」
ちなみに、西園寺家のためではなく四条家のためなんだけどね。
綾華といい雪菜といい麗奈といい、お嬢様方は勘違いが激しいな。
そんなことよりも、まずいのはこの状況。
天下の西園寺家のご令嬢が学校の敷地内で見知らぬおっさんに頭を下げている。
しかも、人ごみの多い中庭の噴水。これはもう大事件である。
恐る恐る周りを見ると、案の定、注目を集めていた。
「まあ、ご覧あそばせ、西園寺様が」
「西園寺様が頭を下げるなど、何処の名家の御曹司なのかしら」
「どなたかあの方のお名前をご存知あって?」
御曹司じゃありません。しがない社畜だった薄ハゲ中年です!
しかも、一ヶ月前までは三段腹の親父でした!
周りの声に心の中で反論しつつ、なんとか麗奈に頭を上げてもらった。
「今後、何か困ったことがあれば、おっしゃってくださいね。最大限、ご協力差し上げますわ。ところで、若宮様はこちらからどちらへ?」
「綾華に講堂に来る様に言われているんだけど、広すぎて何処にあるか見当がつかなくてね」
「当校を初めの方が迷わず講堂へ行くのは難しいですわ。ご案内して差し上げますわ」
「あ、ありがとう。このままだと一時間かけても辿り着ける自信ないから頼むわ」
麗奈と一緒に校内を歩き始めて、自分の失敗に気づいた。
麗奈の注目度が半端ないのである。西園寺家という肩書きもあるだろうけど、それを抜きにしても絶世の美少女。
そんな麗奈と男が歩いていれば、否応なしに勘繰られる。ましてや、さっきの出来事を見ていた連中からすればなおさらだろう。
俺を四条家の関係者だと知っているのは極少数だし、痩せてから学校に来たのは初めてだし。
ん? そういえば、なんで麗奈は俺が分かったんだろう。
0
あなたにおすすめの小説
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる