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おっさん、悪魔の囁きを聞く
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「前に言ったろうが、俺は長期休暇の度に里帰りして、温泉に入りに来てるの」
あぁ、前の飲みの時にそう言ってたような。
「そうだったな、俺は親父の体調が良くないって聞いて飛んで帰って来たんだ」
「何、おやっさんの体調悪いの?」
「いや、ただのギックリ腰だったんだってさ。昨日治ったって」
「なんだ、良かった。前、会った時にお前のクビの事を伝えたら元気に怒ってたから」
「あー! 教えたのはお前だったのか。そのおかげで、今日、出合い頭に一発殴られたんだぞ」
恨めしい目で良太を見たが涼しい顔で流されたが、さらに愚痴を言うのはやめておいた。
せっかくの親友との温泉だし愚痴で浸かるのは勿体ない。
子供の頃は良太とよく二人でここで浸かった。
この景色を眺めながら色々と語り合いふざけたもんだ。
懐かしさに思いを馳せていると良太が思い出したように言ってきた。
「そういや、お前がこっちに帰って来ていると、向こうで綾華ちゃん寂しがってんじゃないのか?」
「あぁ、俺に付いてきた」
「はぁ? 実家に?」
「うん、おかげで姉貴からも一発貰う羽目になった。ついでに部屋も一緒にされて困ってる」
最初は唖然とした顔だったが、次第に良太は爆笑し腹を抱えて笑い出す。
仏頂面の俺の背中をビシバシ叩き、目に涙を浮かべていた。
「良太、痛いって。裸の背中に平手打ちは痛いって!」
「ワリいワリい。今年一の爆笑もんだったから。にしても良かったじゃんお前」
「何が?」
「これでようやく童貞卒業出来るだろ?」
「ぶ!? 無い無い無い無い無い無い無い無い無い無い無い! 絶対ない!」
「……お前、どんだけヘタレだよ。せっかく、お袋さんが万全のセッティングをこしらえてくれたのに」
いやいやいや、どんなにお膳立てをされても手を出せるわけなかろうに。
明らかに淫行条例案件ですよ。第一、四条総裁からも俺を信頼しているって念を押されてるのに
「つか、綾華ちゃんがいるのに、わざわざ大浴場に入りに来たの?」
「うん、当り前だろ」
「ハァァァァァァァァァ……、馬鹿だなぁお前。なんで部屋付きの露天風呂を使わないんだよ」
「いや、あれってカップル用だし」
「ヘタレ。アンポンタン。熟成童貞。普通、男女が一つの部屋って言ったら部屋付きのだろ。綾華ちゃんもそっちを期待しているんじゃないのか?」
「いや、綾華に限ってそんなことないだろ」
と、言ったけど部屋で綾華が一通り部屋の中を確認したと言っていたな。
それに、風呂に入ろうと言った時の綾華のあの反応。
あぁ、なるほど、そりゃ赤面するか……しくじった。
「馬鹿だなぁ。綾華ちゃんだって年頃の女の子だぞ。お前、四条家のお嬢様だってことで変に美化してないか? どんなに純粋培養に育てようとも、情報過多なインターネット時代なんだし、お嬢様同士の日常生活にそっち系の話題が出てても不思議じゃないだろ。お嬢様校も純粋培養な子ばかりじゃないだろ」
「いや、否定は出来んけどさ」
確かに美化しているかもしれない。四条家や学内の綾華を見てれば誰でもそうなるだろう。
でも、二人で一緒の部屋であることを無邪気に喜んでいる綾華に限って、男女の何たるかを知っているなんて想像がつかない。
「だとしてもだなぁ……」
「はぁ……、冤罪以来のお前のヘタレっぷりは筋金入だからな。昔なら真っ先に飛びついてたろうが」
「昔は俺も若かったし、同世代同士でなら何の問題もないじゃん。綾華は十六歳だぞ?」
「だから?」
「倫理的にダメじゃん」
「お互い好き同士なら問題だろ」
「いや、向こうの親御さんに悪いじゃん」
「そんなもん、お互いが黙ってれば問題ないだろ」
「発覚したら淫行で捕まるじゃん」
「それもお互いが黙ってれば問題ないだろ。てか、発覚しても綾華ちゃんの親が揉み消すだろ」
ああ言えばこう言う、悪魔の囁きが凄い。
俺が理性を総動員して我慢しようと思っているのに。
「まあ、お前がどんだけ理性で抑えようとしても、童貞がどこまで我慢できるか見ものだな」
「どういう事だよ?」
「だって、お前さ、まだ家族以外の女性と布団を並べて寝たことないだろ?」
「う……」
「しかも、相手は美少女。浴衣の似合う和風美人。風呂上がりの艶っぽい姿。ご飯を食べて体力万全。暗がりでも分かる綾華ちゃんの寝息と甘い匂い。お前、我慢できんの?」
……出来ないかも知れません。
あぁ、前の飲みの時にそう言ってたような。
「そうだったな、俺は親父の体調が良くないって聞いて飛んで帰って来たんだ」
「何、おやっさんの体調悪いの?」
「いや、ただのギックリ腰だったんだってさ。昨日治ったって」
「なんだ、良かった。前、会った時にお前のクビの事を伝えたら元気に怒ってたから」
「あー! 教えたのはお前だったのか。そのおかげで、今日、出合い頭に一発殴られたんだぞ」
恨めしい目で良太を見たが涼しい顔で流されたが、さらに愚痴を言うのはやめておいた。
せっかくの親友との温泉だし愚痴で浸かるのは勿体ない。
子供の頃は良太とよく二人でここで浸かった。
この景色を眺めながら色々と語り合いふざけたもんだ。
懐かしさに思いを馳せていると良太が思い出したように言ってきた。
「そういや、お前がこっちに帰って来ていると、向こうで綾華ちゃん寂しがってんじゃないのか?」
「あぁ、俺に付いてきた」
「はぁ? 実家に?」
「うん、おかげで姉貴からも一発貰う羽目になった。ついでに部屋も一緒にされて困ってる」
最初は唖然とした顔だったが、次第に良太は爆笑し腹を抱えて笑い出す。
仏頂面の俺の背中をビシバシ叩き、目に涙を浮かべていた。
「良太、痛いって。裸の背中に平手打ちは痛いって!」
「ワリいワリい。今年一の爆笑もんだったから。にしても良かったじゃんお前」
「何が?」
「これでようやく童貞卒業出来るだろ?」
「ぶ!? 無い無い無い無い無い無い無い無い無い無い無い! 絶対ない!」
「……お前、どんだけヘタレだよ。せっかく、お袋さんが万全のセッティングをこしらえてくれたのに」
いやいやいや、どんなにお膳立てをされても手を出せるわけなかろうに。
明らかに淫行条例案件ですよ。第一、四条総裁からも俺を信頼しているって念を押されてるのに
「つか、綾華ちゃんがいるのに、わざわざ大浴場に入りに来たの?」
「うん、当り前だろ」
「ハァァァァァァァァァ……、馬鹿だなぁお前。なんで部屋付きの露天風呂を使わないんだよ」
「いや、あれってカップル用だし」
「ヘタレ。アンポンタン。熟成童貞。普通、男女が一つの部屋って言ったら部屋付きのだろ。綾華ちゃんもそっちを期待しているんじゃないのか?」
「いや、綾華に限ってそんなことないだろ」
と、言ったけど部屋で綾華が一通り部屋の中を確認したと言っていたな。
それに、風呂に入ろうと言った時の綾華のあの反応。
あぁ、なるほど、そりゃ赤面するか……しくじった。
「馬鹿だなぁ。綾華ちゃんだって年頃の女の子だぞ。お前、四条家のお嬢様だってことで変に美化してないか? どんなに純粋培養に育てようとも、情報過多なインターネット時代なんだし、お嬢様同士の日常生活にそっち系の話題が出てても不思議じゃないだろ。お嬢様校も純粋培養な子ばかりじゃないだろ」
「いや、否定は出来んけどさ」
確かに美化しているかもしれない。四条家や学内の綾華を見てれば誰でもそうなるだろう。
でも、二人で一緒の部屋であることを無邪気に喜んでいる綾華に限って、男女の何たるかを知っているなんて想像がつかない。
「だとしてもだなぁ……」
「はぁ……、冤罪以来のお前のヘタレっぷりは筋金入だからな。昔なら真っ先に飛びついてたろうが」
「昔は俺も若かったし、同世代同士でなら何の問題もないじゃん。綾華は十六歳だぞ?」
「だから?」
「倫理的にダメじゃん」
「お互い好き同士なら問題だろ」
「いや、向こうの親御さんに悪いじゃん」
「そんなもん、お互いが黙ってれば問題ないだろ」
「発覚したら淫行で捕まるじゃん」
「それもお互いが黙ってれば問題ないだろ。てか、発覚しても綾華ちゃんの親が揉み消すだろ」
ああ言えばこう言う、悪魔の囁きが凄い。
俺が理性を総動員して我慢しようと思っているのに。
「まあ、お前がどんだけ理性で抑えようとしても、童貞がどこまで我慢できるか見ものだな」
「どういう事だよ?」
「だって、お前さ、まだ家族以外の女性と布団を並べて寝たことないだろ?」
「う……」
「しかも、相手は美少女。浴衣の似合う和風美人。風呂上がりの艶っぽい姿。ご飯を食べて体力万全。暗がりでも分かる綾華ちゃんの寝息と甘い匂い。お前、我慢できんの?」
……出来ないかも知れません。
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