助けたご令嬢に惚れられた〜非モテ親父の何処がいいんだ?〜

水河忍

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おっさん、綾華にイチャつかれる

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 照れくさいし断りたいが、ここで断ったら綾華のテンションだだ下がりである。
 これから一週間は一緒の部屋で過ごすのに、それはマズイ。
 客観的に見れば四十のおっさんが浴衣姿の女子高生にアーンされるのはキモさ確定だが止む得ない。

「う、うん。じゃあ、あ、アーン」
「はい、アーン」

 嬉しそうに箸でハマグリをつまみ、俺の口元へ運ぶ綾華。
 意識するまでもない、多分俺は顔がデレデレだ。
 何しろ、人生初のアーンだ。ましてや相手は美少女の綾華である。
 これで顔が緩まない男などいようか。いや、いないだろう。

「はむ、うん美味い」

 しまった、勢い余って綾華の箸も口に含んでしまった。
 思わず、箸を変える様に綾華に言おうと思ったが、幸せそうな綾華はそのまま俺に向かって口を慎ましく開けてきた。
 えっと、これはあれか。俺にもアーンしてというおねだりか?

 ……するの? マジで? 四十のおっさんが十六歳の女子高生にアーンするの?

「英二様、アーンですわ」
「お、おう。じゃあ、アーン」

 俺も自分の皿からハマグリをつまみ、綾華の口元へ運んだ。
 俺の時と同じように綾華は俺の箸ごと口に含み、箸をそっと抜くと幸せそうにハマグリを咀嚼する。

 ……なんだろう、超むず痒い。
 さらに人生初の間接キスである。学生の頃、女子とペットボトルを回し飲むなんて夢のまた夢だった俺。
 人生初の間接キスの相手が綾華だなんて夢にも思わなんだ。
 当の綾華は間接キスなんて気づいてもいない。
 黙りこくっていると照れくささ倍増なので、とりあえず話題を振らねば。

「う、美味いなこれ。実家の厨房で時々つまみ食いしていたけど好きなんだよなぁ」
「お好きですのね。家に帰りましたら同じものをご用意いたしますわ」
「作れるの? 結構、下処理とか凝っているはずだよコレ」
「そうですわね。ここまでの味を出すのは難しいと思いますので、出来れば後で習いたいですわ」

 綾華は上品に味を確かめながら頷いている。まるで、自分で作るかの様な仕草だ。

「もしかして、自分で作ろうとしている?」
「はい、英二様の好きな食べ物ということであれば将来に備えてキチンと覚えておきませんと」
「将来の事はさておき、綾華って料理できたの?」
「もちろんですわ。淑女たる者、どの様な料理でも作れるようにというのが学園の教えです」
「和洋中どれでも?」
「えぇ、中等部の頃から調理実習は必須で六年かけてプロの料理人の方々から手ほどきを受けますの」

 マジか。すげぇなお嬢様校。セレブなお嬢様方は料理をお抱えのシェフに任せきりってイメージだったのに。
 財力もあって手料理も完璧とか隙が無さすぎじゃなかろうか。
 感心している俺にお代わりのビールを注いでくれる。

「英二様、もう一度、ハイ、アーン」
「ア、アーン」
「うふふ、わたくし幸せですわ。この様に英二様と二人っきりのお部屋でお食事なんて」

 二人っきりの部屋だから少しは貞操の危機感を持ってね綾華さん。
 こちとら、理性を保つのに大変なんですから。
 酒も料理も進み食べ終わる頃には、酔いも回り気分も良かった。
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