助けたご令嬢に惚れられた〜非モテ親父の何処がいいんだ?〜

水河忍

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おっさん、綾華が可愛い

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「綾華に頼んでみるか?」
「あの子、料理できるの???」
「確か中学校の頃から授業で和洋中のプロたちから料理習っているんだってさ」
「マジで? あんな可愛くて料理の腕が凄いって完璧じゃん」

 ダメもとで頼んでみると言い、亜紀は館内に戻っていった。
 俺はスコップを掴み、今度は旅館周りの除雪に向かう。
 レモンティーの温かさが無くならないうちに作業を再開しなければ、また体が冷えてしまう。

 玄関周りと同じ要領で旅館周りも黙々と進めていく。
 一日でもサボると、次の日に自然のしっぺ返しをくらう。
 雪が押しつぶされて固くなるわ重くなるわ、一日さぼっただけで普段の三倍はキツくなる。

 今夜は身体バキバキで明日は筋肉痛だな。
 午後は屋根上と軒先の氷柱の処理もしないとなぁ。
 俺は止むことのない雪を見上げながらため息をついた。


□ □ □ □ □ □


 外が薄暗くなったので部屋に戻ると綾華は居なかった。
 仲居さんに聞くと手伝いを快諾してくれて、午後三時くらいから厨房で料理を手伝っているとのこと。
 その腕前たるや厨房スタッフも舌を巻く程らしい。

 大丈夫かな、料理の腕前が凄くても体力が心配だ。
 普段は家事なんてやらないお嬢様なのに。

 三十分くらい心配しながら待っていると綾華が戻ってきた。

「お疲れ、もう厨房は大丈夫なのか?」
「はい。料理の下準備は全て終わらせてきましたので、後は任せて今日は休んでくださいとのことでした」
「そうか、大活躍だったらしいじゃん。疲れたろ?」
「疲れはいたしましたが、それ以上に楽しかったですわ。皆さん、とてもお優しく接してくださって」
「そりゃ、綾華みたいな可愛い子がヘルプに入れば誰でも嬉しいだろうしな」

 その途端、綾華は顔を真っ赤にして俯いてしまった。
 何故か手をもじもじさせている。

 なんだろう、変なことを言っただろうか?

「どうした、綾華?」
「可愛いだなんて、初めて言われました」
「え、綾華なら周りの人たちから普通に言われているんじゃないか?」
「……英二様に初めて言われました」
「そ、そうだっけ?」
「ハイ……」

 そう言えば、綾華に面と向かって可愛いって言ったのは初めてかもしれないな。
 心の中でなら出会った当初から何回も言っていたけど。

「そうか、うん。いや、出会った頃から可愛いとはずっと思ってたよ」
「そんな何回も……。嬉しいけど恥ずかしいですわ」
「あ、じゃあ言わない方がいい?」
「英二様は意地悪ですわ。言われたほうが嬉しいに決まっております」

 ……どないせえっちゅうねん。

 こういう時どうすれば良いのか分からない。
 笑えばいいのだろうか?
 恋人同士ならここからイチャイチャタイム突入なのだろうが。
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