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おっさん、亜季に綾華を取られる
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なんとなく照れくさい気まずい雰囲気の中、不意に扉がノックされた。
来客は亜紀であり、扉を開けると遠慮なくズカズカと入ってきた。
「何か用か?」
「用がないと来ちゃいけない? もしかしてぇ、お楽しみタイム突入寸前だった?」
「馬鹿野郎、茶化しに来たのかお前は」
「アハハ、ごめんごめん。いや、綾華ちゃんにキチンとお礼と明日もよろしくてきな?」
亜紀は手早く人数分のお茶を淹れながら、俺と綾華に「お構いなく」と座る様に言ってきた。
いや、ここは俺らの部屋だから。何故、お前が仕切る。
「どうぞ、粗茶ですが」
「お前、自分の旅館のお茶を粗茶って言っちゃいかんだろ」
そう軽口を返しながら一口飲んだ。うん、綾華が淹れたほどでないが美味い。
ただ、それを口に出したら最後、何を返されるか怖いので正直には言わない。
綾華は何故か俺と亜紀のやり取りを羨ましそうに見てきた。
「英二様と亜紀様は仲がよろしいんですのね」
「まあ、叔父さんには子供の頃によく遊んでもらったし、旅館に引っ越してきてからは叔父さんが出ていくまで一緒に住んでたからね。てか、亜紀様とか止めて? 呼び捨てでいいよ?」
「いえ、呼び捨ては失礼かと」
「綾華ちゃん、かったいなぁ。せめて『さん』付けにして? でないと、綾華ちゃんと喋らないよ?」
「う、では亜紀さんで」
亜紀の強引な手法で綾華が珍しく戸惑った表情を見せたので、思わず吹き出してしまった。
そんな俺にすねた表情を見せる綾華。
綾華の周りには上品な友達ばかりなので、綾華には亜紀みたいな普通の同年代の友達が必要かもな。
「オッケー。綾華ちゃん、厨房のヘルプマジありがとうね。本当に助かったわ、料理上手なんて羨ましいなぁ。叔父さんの将来も安泰だねぇ」
亜紀が意味深な視線を向けてくる。亜紀の揶揄するところを察した綾華は顔を赤らめた。
オイコラ、変な雰囲気に持っていくんじゃねえよ。変に綾華の期待度を高めさすな。
「言う事終ったなら、さっさと自分の部屋に戻れ。俺たちは風呂も夕飯もまだなんだぞ」
「ハイハイ、お邪魔虫ですいませんねぇ。あ、綾華ちゃんお風呂一緒に入らない? 同い年の子とお風呂入る機会ってなかなかなくてさ」
誘われると思ってなかったのであろう、きょとんとした顔で綾華は俺を見てきた。
女子同士なんだから気軽に一緒に入ればいいのにと思ったが、そこはお嬢様。
あまり親しくない人と一緒にお風呂というシチュエーションに慣れていないのかもしれない。
しょうがなく、綾華に助け船を出そうかと思った矢先の亜紀のダメ押し一言。
「なんなら、お風呂場で叔父さんのヤンチャ話や好みとか色々と教えてあげるよ?」
「ぜひ! お風呂をご一緒させてくださいませ!!!」
おい、何を餌に綾華を釣ってるんだよ。
「やった。じゃあ、十五分後に大浴場でね」
亜紀はスキップしながら部屋を出て行くと、綾華はすぐに手早く準備を始めた。
心なしか嬉しそうである。
今からでも止めようかと思ったが、綾華と亜紀が仲良くなるのは悪い事ではないだろう。
何を吹き込まれるかは怖いところだが仕方ない。
苦笑しながら俺も大浴場へと向かった。
来客は亜紀であり、扉を開けると遠慮なくズカズカと入ってきた。
「何か用か?」
「用がないと来ちゃいけない? もしかしてぇ、お楽しみタイム突入寸前だった?」
「馬鹿野郎、茶化しに来たのかお前は」
「アハハ、ごめんごめん。いや、綾華ちゃんにキチンとお礼と明日もよろしくてきな?」
亜紀は手早く人数分のお茶を淹れながら、俺と綾華に「お構いなく」と座る様に言ってきた。
いや、ここは俺らの部屋だから。何故、お前が仕切る。
「どうぞ、粗茶ですが」
「お前、自分の旅館のお茶を粗茶って言っちゃいかんだろ」
そう軽口を返しながら一口飲んだ。うん、綾華が淹れたほどでないが美味い。
ただ、それを口に出したら最後、何を返されるか怖いので正直には言わない。
綾華は何故か俺と亜紀のやり取りを羨ましそうに見てきた。
「英二様と亜紀様は仲がよろしいんですのね」
「まあ、叔父さんには子供の頃によく遊んでもらったし、旅館に引っ越してきてからは叔父さんが出ていくまで一緒に住んでたからね。てか、亜紀様とか止めて? 呼び捨てでいいよ?」
「いえ、呼び捨ては失礼かと」
「綾華ちゃん、かったいなぁ。せめて『さん』付けにして? でないと、綾華ちゃんと喋らないよ?」
「う、では亜紀さんで」
亜紀の強引な手法で綾華が珍しく戸惑った表情を見せたので、思わず吹き出してしまった。
そんな俺にすねた表情を見せる綾華。
綾華の周りには上品な友達ばかりなので、綾華には亜紀みたいな普通の同年代の友達が必要かもな。
「オッケー。綾華ちゃん、厨房のヘルプマジありがとうね。本当に助かったわ、料理上手なんて羨ましいなぁ。叔父さんの将来も安泰だねぇ」
亜紀が意味深な視線を向けてくる。亜紀の揶揄するところを察した綾華は顔を赤らめた。
オイコラ、変な雰囲気に持っていくんじゃねえよ。変に綾華の期待度を高めさすな。
「言う事終ったなら、さっさと自分の部屋に戻れ。俺たちは風呂も夕飯もまだなんだぞ」
「ハイハイ、お邪魔虫ですいませんねぇ。あ、綾華ちゃんお風呂一緒に入らない? 同い年の子とお風呂入る機会ってなかなかなくてさ」
誘われると思ってなかったのであろう、きょとんとした顔で綾華は俺を見てきた。
女子同士なんだから気軽に一緒に入ればいいのにと思ったが、そこはお嬢様。
あまり親しくない人と一緒にお風呂というシチュエーションに慣れていないのかもしれない。
しょうがなく、綾華に助け船を出そうかと思った矢先の亜紀のダメ押し一言。
「なんなら、お風呂場で叔父さんのヤンチャ話や好みとか色々と教えてあげるよ?」
「ぜひ! お風呂をご一緒させてくださいませ!!!」
おい、何を餌に綾華を釣ってるんだよ。
「やった。じゃあ、十五分後に大浴場でね」
亜紀はスキップしながら部屋を出て行くと、綾華はすぐに手早く準備を始めた。
心なしか嬉しそうである。
今からでも止めようかと思ったが、綾華と亜紀が仲良くなるのは悪い事ではないだろう。
何を吹き込まれるかは怖いところだが仕方ない。
苦笑しながら俺も大浴場へと向かった。
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