19 / 116
三章 ペイン
三
しおりを挟む
ノーイは自称あまりかしこくないので、一つに注意を奪われるともう一つが抜け落ちる。現役魔王軍だった頃は、生き延びることに必死だったためそれはもう有能であったが――今はそこまで気を張る必要もないため。
「しまったお前が来てたんだった」
「おかえりなさい」
「おかえりなさぁい」
「おかえりなのじゃ」
「いや一人増えてる!?」
しんどいし重いからと全身鎧を脱ぎ捨て、石化の瞳を研究室に持ち帰ったノーイを出迎えたのは三人。大神官(の仕事は最近どうなのと聞いたらにこ……とあの感情の読みにくい微笑みで返された)のシェムハザと伝言係を務めていたサキュバスには覚えがあるのだが、もう一人は珍客である。
「こやつ中々見所があるな! 魔王様が御存命であれば、有能な魔道師として推挙してやったものを……」
「絶対にありえないしやめてあげて」
「おや、私を気遣って……?」
「話がややこしくなるから止めろって話!」
「ノーイ様ぁ、もう持ち場に戻ってもいいですかぁ?」
「いいよありがとな他のヤツにもよろしく言っといて」
「はぁい」
ぱたぱたと飛び去るサキュバスを見送れば、そこにはシェムハザと――上半身は裸、下半身が巨大な蜘蛛の姿をした美少女。彼女の名はペイン、元魔王軍四天王、つまりはノーイの元同僚である。
「しかし、沼のもやるではないか!」
「何を?」
「次代の魔王様を守り育てているなど、我等にも声をかけてくれれば」
「いやそういうつもりは全然ですね」
「我等も次代の魔王様を慈しみ育てたいのじゃ! まぁ、方向性は先代様とは異なるようじゃが……」
「ほら見て、元魔王軍の皆、お前みたいに話聞かないんだよ」
「ペインちゃんは大魔女に焼き殺されたとばかり思っていたのでびっくりしましたね」
「もうそこまで仲良く!? 話聞かないヤツ同士って仲良くなるのも早いの!?」
「我等は我等であるからな! その時の核が焼かれようと我等が一匹でも残っておればこの通りよ!」
仲良くなった魔道師にならば秘密を話しても良かろうとばかりにぺらぺらと喋り続けるペイン。にこにこ笑って話を聞いているシェムハザが、いつ大神官として再び牙を剥くかと怯えているのはノーイ一人である。
「しかし前の我等の死因まで知っておるとは、ますます大神官みたいじゃな! あの場には勇者どもと我等しかいなかったはずじゃが……」
「あーっとペインは何で今ここにいるんだ!? お前はほらあの、前に死んでから出てきてなかったじゃん!?」
「うん? あぁ、このダンジョンの噂を聞いてな。次代の魔王様がいらっしゃるのではないかと思って来たのじゃ! そうしたら案の定、先代様の右腕たるお前が」
「まだオレに仇をなすその称号……!!」
頭を抱えてうずくまるノーイに、にこにこ笑っているシェムハザ。きらきらした目で次代の魔王への期待を語るペイン――ここには、他人の話をきちんと聞ける者はいないのであった。
「しまったお前が来てたんだった」
「おかえりなさい」
「おかえりなさぁい」
「おかえりなのじゃ」
「いや一人増えてる!?」
しんどいし重いからと全身鎧を脱ぎ捨て、石化の瞳を研究室に持ち帰ったノーイを出迎えたのは三人。大神官(の仕事は最近どうなのと聞いたらにこ……とあの感情の読みにくい微笑みで返された)のシェムハザと伝言係を務めていたサキュバスには覚えがあるのだが、もう一人は珍客である。
「こやつ中々見所があるな! 魔王様が御存命であれば、有能な魔道師として推挙してやったものを……」
「絶対にありえないしやめてあげて」
「おや、私を気遣って……?」
「話がややこしくなるから止めろって話!」
「ノーイ様ぁ、もう持ち場に戻ってもいいですかぁ?」
「いいよありがとな他のヤツにもよろしく言っといて」
「はぁい」
ぱたぱたと飛び去るサキュバスを見送れば、そこにはシェムハザと――上半身は裸、下半身が巨大な蜘蛛の姿をした美少女。彼女の名はペイン、元魔王軍四天王、つまりはノーイの元同僚である。
「しかし、沼のもやるではないか!」
「何を?」
「次代の魔王様を守り育てているなど、我等にも声をかけてくれれば」
「いやそういうつもりは全然ですね」
「我等も次代の魔王様を慈しみ育てたいのじゃ! まぁ、方向性は先代様とは異なるようじゃが……」
「ほら見て、元魔王軍の皆、お前みたいに話聞かないんだよ」
「ペインちゃんは大魔女に焼き殺されたとばかり思っていたのでびっくりしましたね」
「もうそこまで仲良く!? 話聞かないヤツ同士って仲良くなるのも早いの!?」
「我等は我等であるからな! その時の核が焼かれようと我等が一匹でも残っておればこの通りよ!」
仲良くなった魔道師にならば秘密を話しても良かろうとばかりにぺらぺらと喋り続けるペイン。にこにこ笑って話を聞いているシェムハザが、いつ大神官として再び牙を剥くかと怯えているのはノーイ一人である。
「しかし前の我等の死因まで知っておるとは、ますます大神官みたいじゃな! あの場には勇者どもと我等しかいなかったはずじゃが……」
「あーっとペインは何で今ここにいるんだ!? お前はほらあの、前に死んでから出てきてなかったじゃん!?」
「うん? あぁ、このダンジョンの噂を聞いてな。次代の魔王様がいらっしゃるのではないかと思って来たのじゃ! そうしたら案の定、先代様の右腕たるお前が」
「まだオレに仇をなすその称号……!!」
頭を抱えてうずくまるノーイに、にこにこ笑っているシェムハザ。きらきらした目で次代の魔王への期待を語るペイン――ここには、他人の話をきちんと聞ける者はいないのであった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サディストの私がM男を多頭飼いした時のお話
トシコ
ファンタジー
素人の女王様である私がマゾの男性を飼うのはリスクもありますが、生活に余裕の出来た私には癒しの空間でした。結婚しないで管理職になった女性は周りから見る目も厳しく、私は自分だけの城を作りまあした。そこで私とM男の週末の生活を祖紹介します。半分はノンフィクション、そして半分はフィクションです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる