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五章 ルサールカ
二
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魔法には、低級、初級、中級、上級に、破級というものがある。低級魔法は適性がなくとも使える初歩の初歩。初級から先は適性がなければ話にならない。そして破級を扱える者は、滅多にいない。
破級魔法とは、高い適性と修練の極致。一つでも扱えるとあらば国を挙げて囲われる、それくらい貴重かつ危険なものだ。それこそ、全ての魔女の母と称された神代の大魔女でさえ三つ覚えるだけで限界だったのだ。
「『鳴け、哭け、啼け、泣け。歌え、謳え、吟え、唱え。臨み望み絶えよ、その名はルサールカ』!!」
死ぬかと思った、というか多分人間の姿だったら死んでた。ノーイが広間に踏み入った瞬間の思考はそれだった。詠唱短縮で破級魔法の重ねがけなど、前代未聞のことだったから。
叫ぶように、嘆くように、朗々と紡ぎ切ったダンジョンの主人が成したのは破級闇魔法と破級魂魔法。その足下から広がる闇色は、世界の全てを呑み込み沈める死の淵だ。普通の人間は言うに及ばず、死に耐性のあるモンスターでさえ即死する最悪の魔法。
とはいえ、ノーイには闇魔法も魂魔法も効かない。そのように、定義されている。故に、主人が対峙している相手に気取られないよう、満ちる闇色に紛れて歩を進めた。
「んげっ!?」
ばしっ、と手で口を塞ぐ。幸い、気づかれた様子はないが、ノーイはぎゅっと目を閉じて何もかもを見ないふりをした。が、そうしていても何も解決しないため、嫌々ながら目を開けた。
燃え盛る炎のような赤毛、紺色の眼の中には星の煌めき――星魔法を極めた証たる輝き。内側に星図が刺繍された大きな帽子と魔力を蓄えた鉱石が縫い込まれた黒衣は、当代の大魔女にしか許されぬ武装にして正装。
そう、かつて勇者と共に魔王を討伐した大魔女、その人だ。死の淵に足を浸さぬよう、愛用の箒に跨がり宙に浮かんでいる。その視線はダンジョンの主人に据えられており、少なくとも今すぐにノーイの存在がばれることはなさそうだ。
「何で大魔女が……」
また、主人も流石に大魔女相手に余裕はないようで、ノーイがいることには気づいてなさそうだ。ぱちぱち、とまばたきしたノーイは、何をどうすれば自分は生きていられるだろうかと思考を巡らせた。
破級魔法とは、高い適性と修練の極致。一つでも扱えるとあらば国を挙げて囲われる、それくらい貴重かつ危険なものだ。それこそ、全ての魔女の母と称された神代の大魔女でさえ三つ覚えるだけで限界だったのだ。
「『鳴け、哭け、啼け、泣け。歌え、謳え、吟え、唱え。臨み望み絶えよ、その名はルサールカ』!!」
死ぬかと思った、というか多分人間の姿だったら死んでた。ノーイが広間に踏み入った瞬間の思考はそれだった。詠唱短縮で破級魔法の重ねがけなど、前代未聞のことだったから。
叫ぶように、嘆くように、朗々と紡ぎ切ったダンジョンの主人が成したのは破級闇魔法と破級魂魔法。その足下から広がる闇色は、世界の全てを呑み込み沈める死の淵だ。普通の人間は言うに及ばず、死に耐性のあるモンスターでさえ即死する最悪の魔法。
とはいえ、ノーイには闇魔法も魂魔法も効かない。そのように、定義されている。故に、主人が対峙している相手に気取られないよう、満ちる闇色に紛れて歩を進めた。
「んげっ!?」
ばしっ、と手で口を塞ぐ。幸い、気づかれた様子はないが、ノーイはぎゅっと目を閉じて何もかもを見ないふりをした。が、そうしていても何も解決しないため、嫌々ながら目を開けた。
燃え盛る炎のような赤毛、紺色の眼の中には星の煌めき――星魔法を極めた証たる輝き。内側に星図が刺繍された大きな帽子と魔力を蓄えた鉱石が縫い込まれた黒衣は、当代の大魔女にしか許されぬ武装にして正装。
そう、かつて勇者と共に魔王を討伐した大魔女、その人だ。死の淵に足を浸さぬよう、愛用の箒に跨がり宙に浮かんでいる。その視線はダンジョンの主人に据えられており、少なくとも今すぐにノーイの存在がばれることはなさそうだ。
「何で大魔女が……」
また、主人も流石に大魔女相手に余裕はないようで、ノーイがいることには気づいてなさそうだ。ぱちぱち、とまばたきしたノーイは、何をどうすれば自分は生きていられるだろうかと思考を巡らせた。
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