悪役令嬢は帰り咲く

鳥栖

文字の大きさ
6 / 15
2章 華栄の君に告ぐ

その2

しおりを挟む

 学園生活、同世代の友人と長い時間同じ空間で生活するというのは新鮮だった。これまで王妃となるべく生活してきたため生活の中に娯楽と呼ばれるものは殆どなかった。

 教育と教養、そして社交。それだけでプラナの人生は構成されてきた。同世代の女の子はみんなライバルであったため王子の婚約者として決定されるまでは腹の探り合い、蹴落とし合いで友情なんて育める環境ではなかった。

「ねぇ、今度一緒に演劇でも見に行きませんこと!?」
「行きましょうよ!ねぇ、プラナ様も楽しそうだと思いますわよね?」
「もちろん!」

(女の子どうしてキャッキャするの楽しい~~~!!)

 学園生活を初めて一月、初めての友人とも言える令嬢と遊びにいく計画を立てていた。

 このあたりは現代とあまり変わらないのだろう。グループが出来上がり、休み時間になると集まってお喋りするのだ。

 プラナの属するグループは4人で構成されておりいずれも公爵家の令嬢であった。

巻き髪が可愛いリリアンと、まつ毛が長いガーネット、それに制服にフリルやパールをちりばめてドレスのように仕立てたジーナ。
それが「イツメン」というやつだった。

 もちろん婚約者として王子といることもあるのだが、王子とは恋愛関係ではなかった。王子の方も穏やかな関係であれば良いと思っているのか、それとも単に王妃に恋愛など求めていないのかはわからなかったが2人は非常に穏やかな、言ってしまえばビジネスパートナーのような関係を築いていた。

 アリアは友人は多いもののどこかのグループに属しているわけではないようだった。

(愛し子ゆえの博愛主義なのかしらね?)

 アリアの入学理由は「愛し子であるから」らしかった。魔法のないこの世界で唯一魔法が使えるのが愛し子らしい。

アリアは10歳の時に力に目覚め、疫病とその薬について予言し、去年予言が現実となったことで愛し子として認められたらしかった。

(やっぱり貴族の中に混じるのは大変よね…)

わかるわかる!と心の中でうなずきつつ、会話の途中にアリアの方を見る。

今日は疲れているのかアリアは机に突っ伏していた。







 休み時間が終わりに近づき、授業の準備をするために自分の机へと戻る。

チャイムと共に先生が教師に入ってきた。

「…ぉ、おとめげーむっっ!!!」

(おとめげーむ?…乙女ゲーム!?)

 前世でしか聞いたことのない単語に驚き振り返る。突っ伏していたアリアがガタッと音を立てて立ち上がったところだった。

アリアはキョロキョロと辺りを見回して、照れたような笑いを浮かべる。

「えへへ…すみません寝ぼけたみたいです…
恥ずかしい…」

そう言って頬を赤らめるアリアを見て他の貴族たちはクスクスと笑っていたが私は笑えなかった。

 すると、アリアと目が合う。

 ハッとして椅子に座り直し平静を装うが、
おかしな顔をしていたのは明らかだろう。

授業の内容なんて少しも頭に入ってこなかった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

悪役令嬢の独壇場

あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。 彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。 自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。 正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。 ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。 そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。 あら?これは、何かがおかしいですね。

処理中です...