悪役令嬢は帰り咲く

鳥栖

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2章 華栄の君に告ぐ

その3

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 その日の放課後、私はアリアをこっそりと中庭に呼び出した。

ノートの切れ端をすれ違い様に渡して、誰にも詳細を話さないよう中庭に来て欲しいと伝えたのだ。

 中庭には花壇があり色とりどりの花が咲き乱れている。アフターヌーンティーを楽しむ生徒を時々見かけるが今日の中庭には誰もおらず、ただ花が風に揺れていた。

 後ろから足音が聞こえて振り返る。アリアが歩いてくるのが見えた。

乙女ゲームとは何か、それが自分の知っているものであればなぜ、どうして知っているのか聞かなければならない。

緊張と興奮で胸が高鳴る。

「お待たせして申し訳ありませんプラナ様」

アリアが微笑む。

「来てくれてありがとう、アリアさん」
「ところで、今日貴女が寝ぼけて言ったことについて聞きたいのだけれど」

 緊張して早口になっているのが自分でもわかる。

口の中の水分がなくなり舌がうまくまわらない気がしている。日を改めてお茶にでも誘えばよかったかと今更後悔する。

「ええ、乙女ゲームについてですよね」

「ところでプラナ様、貴女は誰ですか?」

アリアは微笑んだままだ。

「…私は佐倉柚。研究者をしてた。」

そう告げるとアリアはパッと笑った。

「やっぱり!!わぁ~!!日本人なんだ!
感動~!私はね、私はねっ麻野瑞希!」

急にテンションが上がり頬を上気させた彼女に驚く。
 
「えへへ、すみません。私以外に転生者がいると思わなくて…」

少し申し訳なさそうな顔をしてアリアが話しかけてくる。

「ところで、佐倉さんの推しって誰だったんですか?」

「は?」

「え?」

「推し?」

質問の意味がわからず聞き返す。推しの意味はわかるが質問の今がわからない。

(この人急になんで推し聞いてくるの?)

疑問をそのまま口に出す。

「推しってジャニーズ的な?」

「は?…えぇ!?」

彼女は1人で何かを理解したらしく、そんな、とか嘘でしょ、とか呟いている。情報共有は大事ってクトゥルフセッションで言われなかったの、なんてツッこむ。

私もいわゆるオタク文化に親しむタイプの人間だったのだ。生前(?)はゲームが好きだった。モン◯ン、ポケ◯ン、どう◯、など様々なゲームをプレイした。

(ノベルゲーはあんまりやらなかったけど、
また冒険の旅にでたいなぁ…これも発展させたい文化の1つよね、ふふふ)

などと感傷に浸る。また目標が増えてしまった。S◯itchやりたい。

「あの~…華栄の君に告ぐ、って、知ってますか…」

途切れ途切れにアリアがいう。知らない。

「知らない!でも推し語りなら聞くよ!」

楽しかったゲームたちを思い出しながら答える。

「あの…ここ…乙女ゲームの世界なんです…」

アリアが申し訳なさそうな顔をしてそう告げた。



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