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2章 華栄の君に告ぐ
その5
しおりを挟むーーーここが乙女ゲームの世界だったなんて
昨日判明した衝撃の事実。しかもアリアが途中でロベルトに連れて行かれてしまったがために主人公すらわからない。問題が山積みだった。
(…まずは情報を整理しなければ)
登校するために馬車に揺られながら考える。
(ここは乙女ゲーム、ということは攻略対象がいるのよね?)
(乙女ゲームということはイケメンが出てくるはず…)
自分の身の回りの男性の顔を思い浮かべる。
(おそらくロベルトは攻略対象よね…だって王子だもの…)
(……………攻略対象が私の婚約者?)
点と点が結びついていく。
自分が暖かな雰囲気を纏う女ではないこと、入学式の日、アリアが私の名前を知っていたこと、馬車に乗せたことに動揺していたことーーそして昨日ロベルトが婚約者の私ではなく初対面に近いはずのアリアを心配したこと。
「もしかして私…ライバル令嬢に転生してる…?」
思考を巡らせてたどり着いたこと、
一つ目は、おそらくアリアが主人公だということ
二つ目は、おそらくロベルトは攻略対象と
いうこと
三つ目は、私がおそらくライバルキャラだということ
四つ目は、おそらくこの学園が乙女ゲームの舞台だということ
確証はないが、大きく間違ってはないだろう。前世は研究者。考察は得意だ。
そこまで思い至りふと不安がよぎる。
(…ライバルキャラって幸せになれるの?)
前世は事故死、今世でも暗い運命が待ち受けている、なんてあまりにも悲惨だ。
それに私はこのゲームを知らない。幼少期から何かを極めてきたわけではない。チートもない。
しかも文明レベルは大体中世ヨーロッパ。
実際の中世ヨーロッパとは確かにちょっと違う。けれども街中に排泄物が撒き散らされていない程度で、トイレは水洗ではないし、
電気はなく夜はランプを灯す。
貴族だったからこそ少しの不自由で済んでいたのだ。
そもそも、妃にならなければこの文明レベルを国ごと現代並みにすることも叶わない。
(どうしよう…)
ーー頭を抱えた私のことなど気にもかけずに御者は馬車を学園へと進ませていくのだった。
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