10 / 15
2章 華栄の君に告ぐ
その6
しおりを挟む教室に入りアリアはどこかと見回すと、いつも通り後ろの方にいた。
今ならこの席に座った理由がわかる。攻略対象の様子を、もしかしたらいるかもしれない転生者を探していたのだろう。
(毎日最前列にいたのに急に最後列のアリアの隣に行ったら流石に怪しいよね…)
そう思っていつも通り、最前列の真ん中の席に座る。
自分が別の令嬢であればあまり気にされなかったかもしれないが、私は王子の婚約者であり目立つのだ。
それに昨日ロベルトにアリアの肩を掴むところを目撃されているため、警戒されるかもしれない。
肩を掴むことくらいで大袈裟かもしれないが、おそらくアリアはヒロインだ。どんな補正がかかるかわからない。
(あーあ…早くお昼にならないかな…)
そんなことを考えながら授業を受ける。
(授業自体はこの世界のことが知れていいんだけど…)
いかんせん文明レベルが違うのだ。現代人としてはツッコミを入れたくなってしまう。
(天動説なんて何百年前の話なのよ…それに生命が自然発生するわけないじゃない…)
心の中で毒を吐く。
現代の生活を送りたい私にとっては頭が痛いことだ。
そんなことを考えていると授業の終わりの鐘が鳴る。昼休みのようだ。
(アリアに話を聞きたい!!)
そう思ったのだが、リリアンに笑顔で声をかけられてしまった。
(ああぁぁ…今日はアリアと食べたいの、なんて言えない…)
不自然な行動は慎むべきだろう。何か策はないものか、と考える。
(2人でいても不自然ではなく、それに話を聞かれにくいところ…)
アリアの家に行くことは簡単だったが、目立つ目立つのだ。平民であろうと王子の婚約者の髪色ぐらいは知っているだろうし、銀髪なんて貴族社会にもスターチス家の人間くらいなのだ。
(…そういえば学園の舞踏会があったわね)
今週末、つまり4日後。学園で初夏の舞踏会が開かれる。普通の舞踏会であれば婚約者であるロベルトについて回らなければならないだろうが、今回は親睦を深めるという名目なのでアリアと話していても違和感はない筈だ。
プラナは舞踏会でアリアから情報を聞き出そうと思い、それまでは普通の日常生活を送ることにした。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
18
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる