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2章 華栄の君に告ぐ
番外編:ロベルト目線
しおりを挟むこの国に第一王子として生を受け、それからずっとこの国のためになるよう生きてきた。
慈悲深く見える表情、深い知識、穏やかな性格。別に無理をしているわけではない。
生まれた時からそうなるしかなかったのだ。
そう生きるしかなかったのだ。
なぜなら僕は将来王になるから。僕の人生は民に捧げるべきものであるから。
婚約者はプラナ・スターチスという令嬢
だった。どうでも良かった。
聡明で見目麗しい彼女は国母としてふさわしい人間だと思う。
王妃としてふさわしいなら誰でもいい。
穏やかで、問題を起こさないなら誰でも良かった。
ーーーー中庭を散歩している時、2人の女の子が目に入った。どちらも見知った顔だ。
片方はプラナ、もう片方はアリア・シーネリアとかいう女子生徒だ。
プラナは婚約者だし、アリア・シーネリアは愛し子として以前会ったことがある。
愛し子は国にとって利益をもたらす存在なのだ、父にも他国に逃すようなことはするな、と言われている。
オドオドとした様子のアリア・シーネリアにプラナは………胸ぐらを掴もうとしたのだろうか?肩のあたりに手をかけた。
「何をしているんですか?」
プラナが驚いた顔をして手を引いた。
「…何もしてませんわ」
そう言うが歯切れが悪く、視線も合わすことをしない。
「貴女はただ人と話すだけで人の肩に手をかけるのですか」
そんな令嬢はいないだろう。プラナは焦っているように見える。
「それに随分と歯切れが悪いように感じますが」
ああ、彼女がそんなことをする人間だったなんて。
落胆。彼女とは今まで良い関係を築いてきたと思う。お互いに、お互いの事に興味がなくやるべきことをこなす、という関係だ。
「あの!私は大丈夫ですよ?」
アリア・シーネリアが慌てたように言う。
考えが顔に出ていたのだろうか?笑顔を取り繕いアリア・シーネリアに声をかける。
「そうですか。シーネリアさん、少しよろしいですか?」
用なんてなかったが、体裁の話だ。明らかに怯えている、きっと僕の婚約者に脅されたのだろう彼女を未来の王として、見過ごすのは
良くないだろう。
「はい…大丈夫です…」
アリアが答える。とりあえず場所を変えようと歩き出す。カフェにでも行こうかな。
「大丈夫だった?」
にこりと笑ってアリア・シーネリアに語りかける。
ここは学園内のカフェで、僕たちは王族用の少し奥まった、周りから見えにくい席に座っている。机の上にはバターも砂糖もたっぷり使われたクッキーが置いてある。
「本当に話していただけなんですよ?プラナ様はお優しい方ですから。」
「本当に?プラナがその…人に掴みかかろうとするところなんて見たことがないのだけれど」
「それについてもきっと誤解で!」
どんな誤解があると言うんだろう?プラナの性格からして激情することなどないと思う。
だからその時の感情だけで動くなんて思えないのだけれど。
「そうですか?」
そう言ってアリア・シーネリアを見やる。
アリア・シーネリアはにっこりと笑って、
「大丈夫ですよ?たとえ誤解じゃなかったとしても、コリウス様が助けてくださいましたし!」
と答える。
(護りたいなぁ)
不意にそんな感情がよぎる。
今のはなんだったのだろう。今までこんなふうに思う相手はいなかった。
アリア・シーネリアは確かに可愛らしい外見をしているが飛び抜けて可愛いというわけではない。
まさか、まさかこれが恋というものなのだろうか?
「貴女に怪我がなくて良かった。」
まさか婚約者を決めた後に僕は恋をしたのだろうか?
「お気遣いありがとうございます!コリウス様」
僕は今どんな顔をしているのだろうか?
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