ファントムレイド

高町 凪

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解明編

ファントムの正体・続の1

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善治郎、アリア、樹、美雨チームのファントム戦は、更に苛烈を極めていた。

「やぁぁぁぁぁぁ!!!」

アリアは小型のファントムを一太刀で斬りふせると、背後を振り向き銃を2発発砲し、更に2匹倒す。
しかし・・・。

「あー! もう! どれだけ出てくるのよ!?」
「・・・っ。ほんとにキリがない」

倒せども倒せども次のファントムが出現し、まるで数が減らないのだ。

「こうなったら・・・」
「・・・? どうするの?」
「こうするの・・・よ!!」

アリアは銃口を宝剣メルセディアに向けると、銃弾を宝剣に撃ち込んだ。すると宝剣は光を帯び、徐々にその光が大きくなっていった。そしてその宝剣を掲げると、光は天へと昇って行った。

「喰らいなさい! わたしのアビリティ!・・・メルセディア・レイン!!」

光が昇った天から何かが降ってくる音がした。ファントムたちが空を見上げると、そこには無数の巨大な光の剣が降り注いできていた。あまり知性のないファントムでも本能による危険察知くらいはできる。そのファントムたちがまずいと判断するほどの大きさと数なのだが、すでに逃げ場はなく、光の剣は次々とファントムを串刺しにしていった。

光の剣が降り終わると、アリアと美雨の周囲に生き残ったファントムは一匹もいなかった。

「・・・・ふぅ、よし! 何とかなったわね!」
「・・・アリアのアビリティ、強いけど、結構ごり押し感あるよね」
「うっ、い、いいでしょ別に。それこそ樹ほどじゃないんだから」
「・・・あれは比べていい対象じゃない気が」
「はいはい、何とかなったからいいの。それより速くあっちの二人の方に行くわよ」
「・・・ラジャ」



善治郎、樹の方も、かなりの激戦を繰り広げていた。しかし他のチームと違う点があるのだが。

「ちっ、何なんだこいつ。今までのファントムの中でも別格じゃねぇか」
「ああ、今までファントムにアビリティを使わせることなく倒し切れていたが、こいつはどうやらそうもいかないみたいだな」

そう、二人が相手にしているファントムは一匹なのだが、このファントムが今まで出現したファントムの中でも、比較にならないほどの力を持っていた。すでにアビリティを発動している樹の攻撃が通らず、まるでダメージを吸収しているかのような感覚。おそらくこれがこのファントムのアビリティなのだろう。さらに3メートルはあろう巨体でありながら、俊敏な動きと鋭い攻撃を繰り出すため、そもそもこちらが仕掛ける隙さえない。

「くそ、どうするよ、善治郎」
「・・・樹、周囲の警戒を頼む。俺がやろう」

そういうと樹は抜き身の刀を構えて前に出る。

「・・・っ! わかったぜ」

樹は善治郎の言葉の意味を瞬時に理解し、素直に従った。そんな樹をよそに、善治郎は一度深呼吸をすると、目の前のファントムを見据えて。

「アビリティ、発動・・・明鏡止水」

アビリティを発動した。しかし見た目にたいした変化はなく、刀に薄い青色の光が纏っているだけだった。一瞬警戒したファントムだが、気にしすぎだと判断したか善治郎に迫り鋭い攻撃を仕掛ける。
そして善治郎に当たった――そう思った瞬間、姿

するとファントムの背後から善治郎の声が聞こえてきた。

「ふふっ、残念だがそこではないよ」
「・・・・・ッ!? グルゥ」
「何が起きたかわからない・・・といったところか。まあ、無理もない。たいして知性のないお前に理解できるとも思えないからな」

そういうと善治郎は刀を上段に構える。

「一つだけ言っておくと、今この刀の切れ味は相当高まっている。もしかしたら、架空上のオリハルコンでさえ、切れるかもしれないほどに・・・な」

静かにそう言うと地を強く踏み込んでファントムに迫り、一閃する。真ん中から真っ二つに切り裂かれたファントムは、地に倒れ伏した。

「ふむ、久々にやったが、どうやら上手くいったようだ」
「やっぱすげぇな、あんたのアビリティは」
「なに、樹の方こそ、その頑丈さは俺のアビリティでも切るのは難しそうだ」
「あんたが言っても嫌味にしか聞こえねぇが」

そう言いながら周辺警戒をする樹。
そこへアリアと美雨が合流した。

「二人とも、無事?」
「ああ、何とかな、そちらも終了したか」
「・・・ん、モーマンタイ」
「うし、まだ大将たち来てねぇが、ひとまず連絡し・・・・て」
「? どうしたのよ、樹」

何やら言いよどむ樹の視線を追いながら背後を振り返ると、なんと善治郎が倒したはずのファントムが二つに別れたはずの体を再生しながら立ち上がったのだ。

「・・・・ッ!! な、なによこれ」
「ッ!? いかん、全員下がれ!!」

言うや否や下がろうとする一同だが、ファントムはすでに巨大な腕を横に振りかざし、善治郎たちを薙ぎ払った。

「うぉぉぉぉっ!?」
「キャァァァァ!!」
「・・・・・・っ!」
「ぬう!?」

たった一撃で大きく吹き飛ばされ、全員かなりのダメージを追ってしまった。ファントムはすかさず、倒れている美雨から仕留めようと肉迫する。

「・・・っ!! いかん!! 美雨!!」
「美雨!! 逃げて!!」
「・・・ックソ!! 動けよ俺!!」

美雨以外の三人は思うように体が動かず、美雨に逃げるよう促すが、美雨は何とか立ち上がると刀を構えた。

「・・・私も、暁の一人だから。皆を、守ってみせる!」




今までも、ファントム戦で似た場面はいくつかあった。その時は凜が助けてくれたから何とかなってきたが、今その凜はいない。仲間は皆倒れてしまっている。動けるのは私だけ。ならやるしかない。

私は呼吸を整え、迫りくるファントムを見据える。

(・・・凜が前に言ってたっけ)

ふと、前に凜から教えてもらったことを思い出した。

『美雨、戦いにおいて大事なのは単純な力はもちろんだけど、何より心だ。いついかなる状況でも心を落ち着かせて、冷静に、けれど熱を保ったままでいる。この状態を維持するんだ。・・・・はは、まあ言うは安しかな。ようするに・・・』

「・・・絶対生き残る。この気持ちを忘れないようにする。だよね、凜」

私は長さ1メートル弱ある刀――紅葉もみじを右中段より少し斜め上に構えた。




「あの構えって・・・」
「ああ、大将の天葉流の構えだ」
「まさか、もう習得したというのか」

三人が驚いている中、ついに目の前まで来たファントムに美雨はそれでも落ち着いて構えを崩さず・・・そして。

「天葉流二の型・死線疾風しせんしっぷう

気が付くと美雨は紅葉を振り切った状態でファントムの背後に立っていた。慌ててファントムはすぐさま美雨に向き直ろうとするが、しかし両腕両足が切り飛ばされていたため、叶わなかったのだ。

「・・・・・ッ!!!???」

すぐに再生しようとするファントムだが、そんなことをさせるわけもなく、美雨はさらに抜刀の構えに移り技を放つ。

「天葉流三の型・七剣抜刀しちけんばっとう

抜刀してからさらに神速の六連撃を繰り出し、ファントムの巨体をバラバラにした。さすがに脳までもバラバラになっては再生もできず、今度こそファントムは死を迎えた。
美雨はその様子を見ることもなく、紅葉を納刀していた。

「・・・・ふぅ、つかれた」

目の前の出来事に驚きながらも、何とか体を動かし美雨に近づく三人。

「美雨、あなたいつの間にあんなに強くなってたの!?」
「ああ、めちゃくちゃ驚いたぜ!」
「・・・ん、凜との修行のおかげ」
「ふふ、美雨の努力あってのことだ、胸を張るといい」

自分を褒めてくれる三人に美雨は少しだけ照れたように頬を赤くしていた。するとそこへようやく凜達が合流した。

「悪い、遅くなった・・・と、もう終わったみたいだね」
「凜! 聞いてよ、美雨がね!!」

アリアはまだ興奮が冷めないのか、なぜか美雨の功績を自慢げに語っていた。

「なんでアリアちゃんが得意げなのかしら」
「あはは」
「それより大将、ずいぶん遅かったじゃねぇの」
「ああ、悪い、ここに来る途中でまたファントムが出現したものだから、その対処に追われてて」
「・・・ふむ、やはり急激に増えてきたな、ファントムの出現数」
「ええ、今日だけで一体何匹倒したか・・・」
「やっぱりお兄ちゃんが言った通りなのかな?」
「・・・なんの話?」
「ええ、実は・・・」

と紅羽が言いかけたところで、アリアが突然大きな声を上げた。

「ああ~~~~!! み、ちょ、みんな見て!! あれ!!」
「ちょ、なんだよいきなりうるせぇな」
「いいから、あれ! あれ!」

皆がアリアが指を指す方を見ると、先ほどファントムが死んだ場所に、その姿はなく、代わりに別の存在が横たわっていた。

「・・・・え」
「どういう・・・こと」
「こいつぁ・・・」
「・・・・・凜、まさか先ほどの話は」

皆があまりのことに驚いている中、凜は極めて冷静な声で言った。

「・・・どうしてこう、イヤな予想ばかり当たるかね」

皆が見ている先には、・・・。
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