ファントムレイド

高町 凪

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解明編

ファントムの正体・続の2

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美雨の持つアビリティ、癒しとブレシング祝福ヒールでみんなの傷を癒してから、倒れている人のもとへ急ぎ向かう一行。おおよそ25歳前後の男性で、もう息を引き取っていた。

「凜様、このことを千雨さんに伝えたほうがよろしいかと」
「うん、身元をすぐに調べてもらって。あと、彼がアビリティを10歳で発現していたかも含めて」
「了解しました」

そう言って紅羽は千雨に連絡した。その間にこちらでも調べられることは調べておこうと、凜は遺体に近づく。

「・・・お前たちはあまり驚かないのだな、凜」
「そうかな、十分驚いているけど。ただ、ここに向かう途中、ファントムの正体についてある程度予想はしていたからね」
「それが見事に的中した・・・と」
「そういうこと。・・・ほんと、イヤになるね。まあ確信はあるけど確たる証拠はないってのが現状だから、どのみち信たちに調べてもらわないとね」

いいながら遺体を確認するが、目立った証拠などは見当たらないため、あとは彼らに任せようと判断した。

「なあ、さっきから何の話だよ。俺にもわかるように説明してほしいんだが」
「私もお願いするわ」
「ああうん、樹とアリア、美雨にもまだ話してないもんね。ただとりあえず、一度家に戻ろうか。落ち着いてからゆっくり話をしたい」
「凜様、後のことは千雨さんたちがやってくれるとのことなので、私たちはもう撤収しましょう」
「了解」

紅羽の報告にそう返した凜は、皆とともに葉織家に帰るのだった。


「―――というのが、俺の予想。んで、さっき遺体がファントムと入れ替わるように倒れていたのを見て、確信を持てたってわけ」

凜が立てていた予想を皆に説明すると、にわかには信じられない、というより信じたくないといった気持ちのほうが強いだろうか。茜も危惧したことだが無理もない。なにせそれが本当なら、自分たちは元は人間だったものを殺していたのだから。

「そしてそれがⅩの仕業でもあると」
「うん、それについてはまだ予想の範疇を出ない。直に見たわけでもないしね。まあこれ以上使わせたくもないけど」
「そうですね、そんな恐ろしいアビリティがあるなら、一刻も速く何とかしないと」
「だがⅩだってことあるごとにこっちに接触してくるわけじゃねぇ。何か対策を練らないとな」
「どうにかしておびき寄せる?」
「Ⅹがこちらに接触したくなる何かが私たちにあるかしら」

うーん、と呻りながら考える一同。すると茜が何かを思い出し、口を開く。

「そういえばお兄ちゃん、Ⅹが言ってたよね、自分の正体が“100年前の彗星が持つ力の集合体”だって。もしかしてそこにヒントがあったりしないかなぁって思うんだけど」
「ん・・・・なるほど」

どこか思い当たることがあるのか、得心がいった様子でうなずき、今後の方針を決めた。

「よし、ひとまずその彗星について調べよう。茜が言ったように、何かⅩが興味を引くようなものがあるかもしれない」
「そうですね、では私は千雨さんに、アライブの資料を可能な限り送ってもらえるようお願いしてみますね」
「うん、よろしく。送ってもらったら紅羽とアリアでその資料を漁ってくれる?」
「オッケーよ、まかせて」
「了解しました」
「樹と善治郎、茜は信たちと協力して、今まで通りファントムの対処を」
「よっしゃ! まかせな!」
「承知した」
「俺と美雨は・・・そうだな、サボるか」
「・・・りょ」
「「「「「こらこらこら!!!!!」」」」」

まじめな空気から一転、凜と美雨の唐突なボケに他全員が突っ込む。

「り・ん・さ・ま!」
「ジョ、ジョーダンですよジョーダン」
「笑えません、美雨ちゃんもです」
「「はい、すみません」」

紅羽のあまりの形相っぷりにさすがにこれ以上はまずいと悟り、素直に謝る二人。

「まあサボるのは冗談で、俺たちは彗星が落ちたとされる離島に行ってくるよ。直接見れば何かわかるかもしれない」
「・・・・・・と言いつつ、二人で旅行、なんてことないですよね?」
「・・・そんなわけ」
「あ~! 今少し間がありましたよ! なんですか今の間は!」
「だ、だからそんなわけないじゃん! 疑いすぎだってば!」

凜と紅羽がギャァギャァと言い争いを始めたのを無視して、アリア、茜、美雨は話をしていた。

「けどいいなぁ美雨ちゃん。お兄ちゃんと二人きりで旅行なんて」
「だから旅行じゃないでしょう。と言いたいところだけど、実際旅行のようなものよね」
「うう、羨ましいけど、でも美雨ちゃんならいいかな」
「・・・? どうして?」
「だって二人とも家族なのに、そういうのまだ一回もしてないでしょ?」
「確かにそうね。せっかくいい機会なのだから、目一杯楽しんでくるといいわよ」
「・・・ん、楽しんでくる。ありがと、二人とも」

アリアと茜の言葉に嬉しそうに美雨は返した。そこに樹と善治郎も加わった。

「こっちのことは気にすんなよ、何とでもなっからよ」
「ふふっ、そういうことだ。最近は出来ていなかっただろうから、たくさん凜に甘えてくるといい」
「・・・うん。樹と善治郎も、ありがと」
「しっかし、あの二人はまだやってんのか」
「相変わらず仲いいわね、凜と紅羽は」

未だに言い争っている凜と紅羽に、一同は呆れていたのだった。



3日後、残る者たちに後を任せ、凜と美雨は目的地である離島に船で向かっていた。

「・・・そういえば、その離島のこと、ずっと“離島”って呼んでるけど、名前は無いの?」
「ああ、無いんだよね。もっと言うと、そもそもその離島がどこにあるのかも、一般には公開されてないんだ」
「・・・どうして?」
「まあ、それが原因で人間はアビリティなんてものを使えるようになったんだ。相当危険視しても余りあるだろうし、そんな危険な場所を一般公開なんてして、問題が起きたら国にとって事だからね」
「・・・そっか」
「ただ、それだけじゃない。さらに言えば、普通に離島へ近づこうとしても、できないらしい。信から聞いたんだけど、もう目と鼻の先だってところまで行くと、気が付いたら船が引き返すように反対方向を向いてたんだって」
「・・・・・・アビリティ?」
「その話が本当なら、多分ね。そしてそんな芸当ができるのはおそらくⅩだろう」
「・・・だから、ここに来た?」
「そう。絶対に何かあると思うんだよね」
「・・・でも、それならどうやって近づくの?」
「ん~、一応考えはあるけど、実際にアビリティを見てから判断するよ。それまでは・・・よっと」

隣に座っていた美雨を膝に乗せ、抱えるように腕を回した。

「・・・どしたの」
「ふふ、最近あんまりこうする機会無かったから。いや?」
「・・・ううん、このままがいい」

そう言って凜の腕を掴む。そのまま二人は窓から見える美しい景色を堪能したのだった。
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