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結婚の申し込み
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王宮で忙しくしているポールにシャルルから呼び出しがかかった。
プロスペールの呼び出しかと思って王宮のシャルル個人の部屋に向かう。
「このケーキはサラが焼いたものだよ」
シャルルは小さなカップケーキを出してくる。
「お菓子は作るのに料理は全くで」
相変わらずぷにぷにした腹のシャルルは苦笑する。
「味は普通だから」
そういうシャルルと直角の位置に双子の王子が二人とも座っている。
「プロスペール殿下のお呼びかと思いました」
「……兄上もそろそろ動きそうではあるかな。王太子がトリアを側妃に所望しててね」
「やりませんよ。王太子の側妃にするならあの時にシャルル殿下と結婚させてます」
ボールは躊躇わずに返事をした。シャルルは苦笑いしている。
「僕は兄上にサラを抑えとけって言われてるからね。バイユ公爵家からはポールを貰ってるからトリアまで王族にしたらバランスがって兄上が言ってる。アルベール兄上、アルチュール兄上そういう話をしたいんですよね?」
シャルルは自分で淹れたコーヒーを口にする。ポール達のコーヒーもシャルルが淹れたもので、コーヒー豆の良い点を存分に引き出している、店を出せるレベルのものであった。
「サヴェージ殿にポールと話せって言われた」
「サヴェージ殿のやってることを俺かアルベールが引き継ぐ。どちらかは王族を降りて母方の伯父の養子になる。嫡男はいるので冒険者になるのにも都合がいい」
ポールは双子をじっと見る。
「半年、後半年で僕とライザが結婚する。それまでにトリアがイエスといえば結婚すると良い。それまでにトリアをイエスと言わせられなければ卒業と同時にプロスペール殿下の元にトリアは送る。女王の元で好きにしてもらう」
ポールの返事だ。
「……トリアに縁談は?」
「来てる。二人の母方の実家のユーロ侯爵家嫡男からも来てる。今のところ、最有力候補だ。今週末、いつもの本屋で見合いだよ。ジェローム、婚約したのにまだゴネてるみたいだけど。とうとうジェロームは本屋に出入り禁止になってる」
ポールの言葉にシャルルは苦笑いをしている。ジェロームとシャルルはあまり仲が良くない。子供の頃からシャルルの出自を馬鹿にしてきたからだ。プロスペールに懐いているシャルルが気に食わなかったジェロームが陰でこそこそ広めまくったおかげでシャルルの悪評は子供なりの社交界でひろがっていった。
思春期になった頃には言い出しっぺが誰か忘れられていて『愚鈍な第六王子』と広まったのだ。正妃もその評判だけを知っていたのでビクトリアを第六王子から取り上げ自分の息子、王太子に宛がうつもりになっている。
正妃自身は仕事ができる人で目はしも効く。ただプロスペールという黒幕に良いようにされている事に気が付いていない。またプロスペールが王弟と組んでいる事にも。
王弟は公爵閣下となったのは彼自身が王家の影の統括だったからだ。第4、第5王子の母親は王弟の下についている侯爵家の娘で王の監視のための後宮入りであった。
プロスペールの母親は外交上の事で国に嫁してきた外国の王族で第二正妃、という苦しい言い訳の立場の人であった。ただし、おとなしく目立たない人だったので正妃がいきり立つ事はなかった。
何度も増やされる側妃に正妃は頭を痛めていた。王はそれしか考えないのか、と。そしてシャルルの母親が妊娠し平民だったので急遽、正妃の遠縁の死にかけた準男爵の養女として後宮に上がったのだ。王が学生だった頃、お忍びで街の食堂で働く孤児のシャルルの母親と出来上がり成人後も、王位に着いた後も『偶に』通っていたのだ。そろそろ年金でも与えてと考えていた時の第六王子妊娠であった。
平民の孤児であるが故にマナーも知らず、侍女にも冷たくされてストレスがたまったシャルルの母親は自分の息子を害し現在は完全に王に見捨てられ後宮の片隅にいる。
そこにシャルルは私室を作り偶に母親を慰めている。また、アルベール達の母親が個人的にシャルルの母を庇護する立場に立候補した。
「あまりに陛下が身勝手で母上が怒っているらしいよ」
アルチュールは人ごとのように言う。ライザを筆頭に8人の姫と6人の王子を成した陛下は父親としては尊敬されていないな、とポールは考えた。
プロスペールの呼び出しかと思って王宮のシャルル個人の部屋に向かう。
「このケーキはサラが焼いたものだよ」
シャルルは小さなカップケーキを出してくる。
「お菓子は作るのに料理は全くで」
相変わらずぷにぷにした腹のシャルルは苦笑する。
「味は普通だから」
そういうシャルルと直角の位置に双子の王子が二人とも座っている。
「プロスペール殿下のお呼びかと思いました」
「……兄上もそろそろ動きそうではあるかな。王太子がトリアを側妃に所望しててね」
「やりませんよ。王太子の側妃にするならあの時にシャルル殿下と結婚させてます」
ボールは躊躇わずに返事をした。シャルルは苦笑いしている。
「僕は兄上にサラを抑えとけって言われてるからね。バイユ公爵家からはポールを貰ってるからトリアまで王族にしたらバランスがって兄上が言ってる。アルベール兄上、アルチュール兄上そういう話をしたいんですよね?」
シャルルは自分で淹れたコーヒーを口にする。ポール達のコーヒーもシャルルが淹れたもので、コーヒー豆の良い点を存分に引き出している、店を出せるレベルのものであった。
「サヴェージ殿にポールと話せって言われた」
「サヴェージ殿のやってることを俺かアルベールが引き継ぐ。どちらかは王族を降りて母方の伯父の養子になる。嫡男はいるので冒険者になるのにも都合がいい」
ポールは双子をじっと見る。
「半年、後半年で僕とライザが結婚する。それまでにトリアがイエスといえば結婚すると良い。それまでにトリアをイエスと言わせられなければ卒業と同時にプロスペール殿下の元にトリアは送る。女王の元で好きにしてもらう」
ポールの返事だ。
「……トリアに縁談は?」
「来てる。二人の母方の実家のユーロ侯爵家嫡男からも来てる。今のところ、最有力候補だ。今週末、いつもの本屋で見合いだよ。ジェローム、婚約したのにまだゴネてるみたいだけど。とうとうジェロームは本屋に出入り禁止になってる」
ポールの言葉にシャルルは苦笑いをしている。ジェロームとシャルルはあまり仲が良くない。子供の頃からシャルルの出自を馬鹿にしてきたからだ。プロスペールに懐いているシャルルが気に食わなかったジェロームが陰でこそこそ広めまくったおかげでシャルルの悪評は子供なりの社交界でひろがっていった。
思春期になった頃には言い出しっぺが誰か忘れられていて『愚鈍な第六王子』と広まったのだ。正妃もその評判だけを知っていたのでビクトリアを第六王子から取り上げ自分の息子、王太子に宛がうつもりになっている。
正妃自身は仕事ができる人で目はしも効く。ただプロスペールという黒幕に良いようにされている事に気が付いていない。またプロスペールが王弟と組んでいる事にも。
王弟は公爵閣下となったのは彼自身が王家の影の統括だったからだ。第4、第5王子の母親は王弟の下についている侯爵家の娘で王の監視のための後宮入りであった。
プロスペールの母親は外交上の事で国に嫁してきた外国の王族で第二正妃、という苦しい言い訳の立場の人であった。ただし、おとなしく目立たない人だったので正妃がいきり立つ事はなかった。
何度も増やされる側妃に正妃は頭を痛めていた。王はそれしか考えないのか、と。そしてシャルルの母親が妊娠し平民だったので急遽、正妃の遠縁の死にかけた準男爵の養女として後宮に上がったのだ。王が学生だった頃、お忍びで街の食堂で働く孤児のシャルルの母親と出来上がり成人後も、王位に着いた後も『偶に』通っていたのだ。そろそろ年金でも与えてと考えていた時の第六王子妊娠であった。
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そこにシャルルは私室を作り偶に母親を慰めている。また、アルベール達の母親が個人的にシャルルの母を庇護する立場に立候補した。
「あまりに陛下が身勝手で母上が怒っているらしいよ」
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