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内緒話 2
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「で、プロスペール殿下から言われているのはトリアが卒業後、第二正妃様を殿下の元に引き取るつもりだからトリアをその侍女としてあちらの国に呼ぶ、と」
ポールはこめかみを揉む。
「最終手段だけどね、って笑っておられたけど」
「兄上ならやる。保証する」
アルチュールがぼそりと言う。
「王太子を自分の傀儡にする方法とか考えてそうだな、兄上」
「あっちの国の魔導はこちらとレベルが違うから手段がありそうで怖い」
アルベールの軽口に皆ふふと笑う。背筋に少し寒いものを残したまま。
「トリアは恋愛とか性欲とか欠けてるからアプローチは難しいと思いますよ。でも周りが押したらそのまま結婚位はするようなところもありますね」
シャルルが今までヴィクトリアと接していた感想を述べる。
「サラと一緒になって、……あの子は基本的に男性全般に欲情してるようなところがあるんで比較ですけども」
「サラは……そういう成功体験があって男とそう接すると望んだものが手に入る、って学習してるんだろうな」
ポールの言葉にアルチュールもアルベールも身に覚えのある令嬢達を思い浮かべている。
「トリアは容姿で選ばれる事も口説かれることも体験してるのになぁ」
「……トリア、『何を言ってるのだろう』としか思ってないですよ。僕が一緒でも口説いてくる男は多かったですからね。お忍びで行った他国でもそうでしたし」
ポールは疑問に思っていた事を聞く。
「シャルルは全くトリアに手を出さず?キスすらも?」
「してませんよ。トリアが全く興味なかったですしね。手は繋いでますね。トリアは僕のお姉さん、だと自認してる節もありましたから。僕自身もあんまりそう言うことに興味ない方ですし」
ポールがふーと息を吐く。
「だからデュカス子爵家はああなのか」
「ボク一代で終わらせるつもりの家ですからねぇ。あれでいいんです」
シャルルは笑っている。
「僕が侮られてる間は王太子殿下も動きやすいですしね。おかげで情報がザクザクと書類ベースで集まってきてます」
「……僕らの婚活の話をしに来たのにプロスペール兄上の悪事暴露かつ今後の相談会になっちまってる」
アルチュールが笑う。シャルルも笑っている。
「デュカス子爵邸に呼んでお話でもいいんですけど……」
「サラが興奮するからやめとけ。……プロスペール殿下がそちらに行くときはどうなってるんだ、サラは」
ポールがやんわりと止める。シャルルに対してポールはざっくばらんである。子供の時からの口調と変わっていない。
「あー、野生の勘があるのかどれだけ美形でも兄上は怖いみたいで近寄りません」
ポールとシャルルは苦笑する。男とみれば落とせるかどうか試すような気質があるサラがプロスペールほどの美貌の男に近づかないというのはかなり珍しい図ではあった。
「兄上は……めったに見ないくらいにこやかに笑ってるんですけどね」
「それ俺でも怖い」
アルチュールが笑う。
「トリアは平気だな、プロスペール殿下がどんな機嫌でも」
「だから兄上のお気に入りなんですよ、トリア」
「……王太子にはかなり機嫌が悪い対応してるんだがな、トリア」
「トリアと王太子合わせたんですか?」
アルベールが驚く。
「ああ。ライザが連れてくるらしい。寮にいるのに都度都度帰宅させられてると」
「……ライザ姉さんどうにかした方がいいかも」
「結婚したら新婚旅行でプロスペール殿下の所に連れて行く。女王の話し相手で半年ほど置いて帰る。……それで矯正出来ねば、ま、色々と」
ポールは冷たい目で言い放つ。
「ポール殿と姉上は恋愛結婚だと聞きましたが」
「幼馴染でな。……俺が3つの時にライザが『結婚相手』って俺の事を決めたらしい。でずっと俺とライザの事は既成事実だったんだよ、王家ではね」
ポールがふっと笑う。
「いや、正妃様と陛下の間では、だな。他の側妃様や第二正妃様は幼子の戯言扱いだったんだ」
ポールはそのまま続けた。
「俺の縁談は3つから今まで沸いては潰れてるのさ。正妃様とライザの嫌がらせでね。ただシャルルとトリアの縁談のおかげで表立っての婚約者騒動はおさまったし、どちらをバイユ公爵家に片付けるのが得か、正妃様と陛下が水面下でごちゃごちゃしてたらしい。父上は両方潰したかったみたいだけど」
そこまでの本音をぶっちゃけたくせにポールはしれっと呟いた。
「ま、俺を好きだって言うライザを可愛いと思わなくもないよ」
ポールはこめかみを揉む。
「最終手段だけどね、って笑っておられたけど」
「兄上ならやる。保証する」
アルチュールがぼそりと言う。
「王太子を自分の傀儡にする方法とか考えてそうだな、兄上」
「あっちの国の魔導はこちらとレベルが違うから手段がありそうで怖い」
アルベールの軽口に皆ふふと笑う。背筋に少し寒いものを残したまま。
「トリアは恋愛とか性欲とか欠けてるからアプローチは難しいと思いますよ。でも周りが押したらそのまま結婚位はするようなところもありますね」
シャルルが今までヴィクトリアと接していた感想を述べる。
「サラと一緒になって、……あの子は基本的に男性全般に欲情してるようなところがあるんで比較ですけども」
「サラは……そういう成功体験があって男とそう接すると望んだものが手に入る、って学習してるんだろうな」
ポールの言葉にアルチュールもアルベールも身に覚えのある令嬢達を思い浮かべている。
「トリアは容姿で選ばれる事も口説かれることも体験してるのになぁ」
「……トリア、『何を言ってるのだろう』としか思ってないですよ。僕が一緒でも口説いてくる男は多かったですからね。お忍びで行った他国でもそうでしたし」
ポールは疑問に思っていた事を聞く。
「シャルルは全くトリアに手を出さず?キスすらも?」
「してませんよ。トリアが全く興味なかったですしね。手は繋いでますね。トリアは僕のお姉さん、だと自認してる節もありましたから。僕自身もあんまりそう言うことに興味ない方ですし」
ポールがふーと息を吐く。
「だからデュカス子爵家はああなのか」
「ボク一代で終わらせるつもりの家ですからねぇ。あれでいいんです」
シャルルは笑っている。
「僕が侮られてる間は王太子殿下も動きやすいですしね。おかげで情報がザクザクと書類ベースで集まってきてます」
「……僕らの婚活の話をしに来たのにプロスペール兄上の悪事暴露かつ今後の相談会になっちまってる」
アルチュールが笑う。シャルルも笑っている。
「デュカス子爵邸に呼んでお話でもいいんですけど……」
「サラが興奮するからやめとけ。……プロスペール殿下がそちらに行くときはどうなってるんだ、サラは」
ポールがやんわりと止める。シャルルに対してポールはざっくばらんである。子供の時からの口調と変わっていない。
「あー、野生の勘があるのかどれだけ美形でも兄上は怖いみたいで近寄りません」
ポールとシャルルは苦笑する。男とみれば落とせるかどうか試すような気質があるサラがプロスペールほどの美貌の男に近づかないというのはかなり珍しい図ではあった。
「兄上は……めったに見ないくらいにこやかに笑ってるんですけどね」
「それ俺でも怖い」
アルチュールが笑う。
「トリアは平気だな、プロスペール殿下がどんな機嫌でも」
「だから兄上のお気に入りなんですよ、トリア」
「……王太子にはかなり機嫌が悪い対応してるんだがな、トリア」
「トリアと王太子合わせたんですか?」
アルベールが驚く。
「ああ。ライザが連れてくるらしい。寮にいるのに都度都度帰宅させられてると」
「……ライザ姉さんどうにかした方がいいかも」
「結婚したら新婚旅行でプロスペール殿下の所に連れて行く。女王の話し相手で半年ほど置いて帰る。……それで矯正出来ねば、ま、色々と」
ポールは冷たい目で言い放つ。
「ポール殿と姉上は恋愛結婚だと聞きましたが」
「幼馴染でな。……俺が3つの時にライザが『結婚相手』って俺の事を決めたらしい。でずっと俺とライザの事は既成事実だったんだよ、王家ではね」
ポールがふっと笑う。
「いや、正妃様と陛下の間では、だな。他の側妃様や第二正妃様は幼子の戯言扱いだったんだ」
ポールはそのまま続けた。
「俺の縁談は3つから今まで沸いては潰れてるのさ。正妃様とライザの嫌がらせでね。ただシャルルとトリアの縁談のおかげで表立っての婚約者騒動はおさまったし、どちらをバイユ公爵家に片付けるのが得か、正妃様と陛下が水面下でごちゃごちゃしてたらしい。父上は両方潰したかったみたいだけど」
そこまでの本音をぶっちゃけたくせにポールはしれっと呟いた。
「ま、俺を好きだって言うライザを可愛いと思わなくもないよ」
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