公爵令嬢姉妹の対照的な日々 【完結】

あくの

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王と王妃

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 陛下の私用の応接室で二人は無言だった。正確に言えばもう一人いる『王妃』殿下がぺらっぺらとしゃべっている。ヴィクトリア達と対立する、王太子派の筆頭エルメ公爵家の養女になり公爵令嬢として王家に嫁した男爵令嬢、それが王妃だった。
 最初は王妃に首ったけだった陛下はさっさと長男次男長女をもうけたものの王妃の底の浅さと宰相以外の重要な陛下の元学友兼側近との怪しい関係に嫌気がさし、今現在は王妃とは犬猿の仲となっている。

「うちの王太子の側妃の手続きに来たのよね、今日」

「いえ、僕との婚約です。書類を出しにきました」

ダニエルがはっきり言う。

「トリアちゃん、嘘でしょ?」

「いえ。本日成立したお話です」

王妃はワナワナと震え出す。ヴィクトリアは微かに香る香水に少し嫌悪感を抱いた。

「ヴィクトリア・バイユ、貴方は王太子の側妃よ。こんな子供の婚約者じゃない」

「私とダニエル様の婚約は成立してると思われます。なんなら書類がもう出てるかと。王弟殿下が提出に行かれました」

 王妃はかっと目を見開いてヴィクトリア達に何も言わず部屋を出て行った。
 ダニエルと二人首を傾げていると陛下と王弟殿下が仲良さそうに入ってきた。かと思うと陛下の眉間に皺が寄る。

「この部屋に王妃が来たか?」

陛下がヴィクトリアとダニエルに向かって訊ねる。二人は声を出さずに頷いた。

「ああ、二人とも楽にするがいい。ここは完全に私的な空間だから礼儀なども気にする必要はない。長ったらしい挨拶も省略だ」

ヴィクトリアとダニエルが立ち上がろうとしているのを陛下は手で制する。

「このお茶と菓子を調べろ。あと窓を開けて空気を入れ替える」

護衛を兼ねている侍従が動く。そっとメイドが動こうとすると陛下が指示をする。

「そこのメイド、王妃に買収されているのは本当のようだな。調べろ」



 陛下がふーと息を吐いた。

「夫婦喧嘩に巻き込んですまないね。……しかし王妃あの女、この部屋には勝手に入ってはいかんと取り決めてあったんだがな。いい機会だな」

最後の一言はヴィクトリアとダニエルには聞こえなかったが王弟殿下には聞こえていた。そして王弟殿下は小さく頷いた。

「さて、ヴィクトリア嬢、色々我らの都合に巻き込んで済まぬ」

「シャルル様との婚約から、のお話ですね?」

ヴィクトリアは臆せず陛下を見る。陛下はおでこに手をあてて大笑いした。

「悪かった、そこまで聡いとは思っていなかった」

「いえ、……父と王妃様の事をクロエ妃殿下に伺って推察したまでです」

「そうだな。……シャルルの事を相談すると言ってサヴェージを呼びつけて。サヴェージとは学生時代から悶着があったようでな。我が阿呆であったからあのようなものを王妃にしてしもうた……」

 陛下は遠い目になる。学園の特待生だった王妃は身分が低いせいかざっくばらん、無邪気な所が魅力であった。その当時プロスペールのいる国ではない隣国の王女と婚約をしていた。陛下はその婚約を破棄し、王妃を王妃として手に入れた。
 その後、己の側近の半数以上と関係があった事や元婚約者で従妹の兄、従兄との爛れた関係などが影から報告が続々上がってきて王妃との関係は破綻を迎えた。
 その間に王太子、第二王子、第一王女が二人の間にはできていた。第一王女、ライザが出来たあとに王弟殿下に陛下は相談する。王妃の香水の香りを嗅ぐと理性があいまいになりあらがい難い、と。
 王弟殿下は眉唾だ、と思いながら第三妃にそういう香水はあるのか?と訊ねると裏で魔族が細々と作っている、と答えが帰ってくる。『個人個人の合わせて作るものでおいそれとは手が出ないものです。あと大量の魔力が必要なので魔族しか作れないとのこと』第三妃はそういう。陛下が王妃の香水でそういう風になると説明をすると第三妃は頭を抱えていたが、自分付きのメイドに銘じて後の第5妃の伯爵令嬢を呼び出した。
 この第5妃は薬師の家の令嬢ですぐに解毒の茶を用意すると言って、本当に用意して持ってきた。それから半月、陛下は第3妃の元に通う。これで王妃と第3妃の間に大きな亀裂が入った。
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