43 / 58
王と王妃
しおりを挟む
陛下の私用の応接室で二人は無言だった。正確に言えばもう一人いる『王妃』殿下がぺらっぺらとしゃべっている。ヴィクトリア達と対立する、王太子派の筆頭エルメ公爵家の養女になり公爵令嬢として王家に嫁した男爵令嬢、それが王妃だった。
最初は王妃に首ったけだった陛下はさっさと長男次男長女をもうけたものの王妃の底の浅さと宰相以外の重要な陛下の元学友兼側近との怪しい関係に嫌気がさし、今現在は王妃とは犬猿の仲となっている。
「うちの王太子の側妃の手続きに来たのよね、今日」
「いえ、僕との婚約です。書類を出しにきました」
ダニエルがはっきり言う。
「トリアちゃん、嘘でしょ?」
「いえ。本日成立したお話です」
王妃はワナワナと震え出す。ヴィクトリアは微かに香る香水に少し嫌悪感を抱いた。
「ヴィクトリア・バイユ、貴方は王太子の側妃よ。こんな子供の婚約者じゃない」
「私とダニエル様の婚約は成立してると思われます。なんなら書類がもう出てるかと。王弟殿下が提出に行かれました」
王妃はかっと目を見開いてヴィクトリア達に何も言わず部屋を出て行った。
ダニエルと二人首を傾げていると陛下と王弟殿下が仲良さそうに入ってきた。かと思うと陛下の眉間に皺が寄る。
「この部屋に王妃が来たか?」
陛下がヴィクトリアとダニエルに向かって訊ねる。二人は声を出さずに頷いた。
「ああ、二人とも楽にするがいい。ここは完全に私的な空間だから礼儀なども気にする必要はない。長ったらしい挨拶も省略だ」
ヴィクトリアとダニエルが立ち上がろうとしているのを陛下は手で制する。
「このお茶と菓子を調べろ。あと窓を開けて空気を入れ替える」
護衛を兼ねている侍従が動く。そっとメイドが動こうとすると陛下が指示をする。
「そこのメイド、王妃に買収されているのは本当のようだな。調べろ」
陛下がふーと息を吐いた。
「夫婦喧嘩に巻き込んですまないね。……しかし王妃、この部屋には勝手に入ってはいかんと取り決めてあったんだがな。いい機会だな」
最後の一言はヴィクトリアとダニエルには聞こえなかったが王弟殿下には聞こえていた。そして王弟殿下は小さく頷いた。
「さて、ヴィクトリア嬢、色々我らの都合に巻き込んで済まぬ」
「シャルル様との婚約から、のお話ですね?」
ヴィクトリアは臆せず陛下を見る。陛下はおでこに手をあてて大笑いした。
「悪かった、そこまで聡いとは思っていなかった」
「いえ、……父と王妃様の事をクロエ妃殿下に伺って推察したまでです」
「そうだな。……シャルルの事を相談すると言ってサヴェージを呼びつけて。サヴェージとは学生時代から悶着があったようでな。我が阿呆であったからあのようなものを王妃にしてしもうた……」
陛下は遠い目になる。学園の特待生だった王妃は身分が低いせいかざっくばらん、無邪気な所が魅力であった。その当時プロスペールのいる国ではない隣国の王女と婚約をしていた。陛下はその婚約を破棄し、王妃を王妃として手に入れた。
その後、己の側近の半数以上と関係があった事や元婚約者で従妹の兄、従兄との爛れた関係などが影から報告が続々上がってきて王妃との関係は破綻を迎えた。
その間に王太子、第二王子、第一王女が二人の間にはできていた。第一王女、ライザが出来たあとに王弟殿下に陛下は相談する。王妃の香水の香りを嗅ぐと理性があいまいになりあらがい難い、と。
王弟殿下は眉唾だ、と思いながら第三妃にそういう香水はあるのか?と訊ねると裏で魔族が細々と作っている、と答えが帰ってくる。『個人個人の合わせて作るものでおいそれとは手が出ないものです。あと大量の魔力が必要なので魔族しか作れないとのこと』第三妃はそういう。陛下が王妃の香水でそういう風になると説明をすると第三妃は頭を抱えていたが、自分付きのメイドに銘じて後の第5妃の伯爵令嬢を呼び出した。
この第5妃は薬師の家の令嬢ですぐに解毒の茶を用意すると言って、本当に用意して持ってきた。それから半月、陛下は第3妃の元に通う。これで王妃と第3妃の間に大きな亀裂が入った。
最初は王妃に首ったけだった陛下はさっさと長男次男長女をもうけたものの王妃の底の浅さと宰相以外の重要な陛下の元学友兼側近との怪しい関係に嫌気がさし、今現在は王妃とは犬猿の仲となっている。
「うちの王太子の側妃の手続きに来たのよね、今日」
「いえ、僕との婚約です。書類を出しにきました」
ダニエルがはっきり言う。
「トリアちゃん、嘘でしょ?」
「いえ。本日成立したお話です」
王妃はワナワナと震え出す。ヴィクトリアは微かに香る香水に少し嫌悪感を抱いた。
「ヴィクトリア・バイユ、貴方は王太子の側妃よ。こんな子供の婚約者じゃない」
「私とダニエル様の婚約は成立してると思われます。なんなら書類がもう出てるかと。王弟殿下が提出に行かれました」
王妃はかっと目を見開いてヴィクトリア達に何も言わず部屋を出て行った。
ダニエルと二人首を傾げていると陛下と王弟殿下が仲良さそうに入ってきた。かと思うと陛下の眉間に皺が寄る。
「この部屋に王妃が来たか?」
陛下がヴィクトリアとダニエルに向かって訊ねる。二人は声を出さずに頷いた。
「ああ、二人とも楽にするがいい。ここは完全に私的な空間だから礼儀なども気にする必要はない。長ったらしい挨拶も省略だ」
ヴィクトリアとダニエルが立ち上がろうとしているのを陛下は手で制する。
「このお茶と菓子を調べろ。あと窓を開けて空気を入れ替える」
護衛を兼ねている侍従が動く。そっとメイドが動こうとすると陛下が指示をする。
「そこのメイド、王妃に買収されているのは本当のようだな。調べろ」
陛下がふーと息を吐いた。
「夫婦喧嘩に巻き込んですまないね。……しかし王妃、この部屋には勝手に入ってはいかんと取り決めてあったんだがな。いい機会だな」
最後の一言はヴィクトリアとダニエルには聞こえなかったが王弟殿下には聞こえていた。そして王弟殿下は小さく頷いた。
「さて、ヴィクトリア嬢、色々我らの都合に巻き込んで済まぬ」
「シャルル様との婚約から、のお話ですね?」
ヴィクトリアは臆せず陛下を見る。陛下はおでこに手をあてて大笑いした。
「悪かった、そこまで聡いとは思っていなかった」
「いえ、……父と王妃様の事をクロエ妃殿下に伺って推察したまでです」
「そうだな。……シャルルの事を相談すると言ってサヴェージを呼びつけて。サヴェージとは学生時代から悶着があったようでな。我が阿呆であったからあのようなものを王妃にしてしもうた……」
陛下は遠い目になる。学園の特待生だった王妃は身分が低いせいかざっくばらん、無邪気な所が魅力であった。その当時プロスペールのいる国ではない隣国の王女と婚約をしていた。陛下はその婚約を破棄し、王妃を王妃として手に入れた。
その後、己の側近の半数以上と関係があった事や元婚約者で従妹の兄、従兄との爛れた関係などが影から報告が続々上がってきて王妃との関係は破綻を迎えた。
その間に王太子、第二王子、第一王女が二人の間にはできていた。第一王女、ライザが出来たあとに王弟殿下に陛下は相談する。王妃の香水の香りを嗅ぐと理性があいまいになりあらがい難い、と。
王弟殿下は眉唾だ、と思いながら第三妃にそういう香水はあるのか?と訊ねると裏で魔族が細々と作っている、と答えが帰ってくる。『個人個人の合わせて作るものでおいそれとは手が出ないものです。あと大量の魔力が必要なので魔族しか作れないとのこと』第三妃はそういう。陛下が王妃の香水でそういう風になると説明をすると第三妃は頭を抱えていたが、自分付きのメイドに銘じて後の第5妃の伯爵令嬢を呼び出した。
この第5妃は薬師の家の令嬢ですぐに解毒の茶を用意すると言って、本当に用意して持ってきた。それから半月、陛下は第3妃の元に通う。これで王妃と第3妃の間に大きな亀裂が入った。
13
あなたにおすすめの小説
【完結】一番腹黒いのはだあれ?
やまぐちこはる
恋愛
■□■
貧しいコイント子爵家のソンドールは、貴族学院には進学せず、騎士学校に通って若くして正騎士となった有望株である。
三歳でコイント家に養子に来たソンドールの生家はパートルム公爵家。
しかし、関わりを持たずに生きてきたため、自分が公爵家生まれだったことなどすっかり忘れていた。
ある日、実の父がソンドールに会いに来て、自分の出自を改めて知り、勝手なことを言う実父に憤りながらも、生家の騒動に巻き込まれていく。
果たされなかった約束
家紋武範
恋愛
子爵家の次男と伯爵の妾の娘の恋。貴族の血筋と言えども不遇な二人は将来を誓い合う。
しかし、ヒロインの妹は伯爵の正妻の子であり、伯爵のご令嗣さま。その妹は優しき主人公に密かに心奪われており、結婚したいと思っていた。
このままでは結婚させられてしまうと主人公はヒロインに他領に逃げようと言うのだが、ヒロインは妹を裏切れないから妹と結婚して欲しいと身を引く。
怒った主人公は、この姉妹に復讐を誓うのであった。
※サディスティックな内容が含まれます。苦手なかたはご注意ください。
笑い方を忘れた令嬢
Blue
恋愛
お母様が天国へと旅立ってから10年の月日が流れた。大好きなお父様と二人で過ごす日々に突然終止符が打たれる。突然やって来た新しい家族。病で倒れてしまったお父様。私を嫌な目つきで見てくる伯父様。どうしたらいいの?誰か、助けて。
悪夢から逃れたら前世の夫がおかしい
はなまる
恋愛
ミモザは結婚している。だが夫のライオスには愛人がいてミモザは見向きもされない。それなのに義理母は跡取りを待ち望んでいる。だが息子のライオスはミモザと初夜の一度っきり相手をして後は一切接触して来ない。
義理母はどうにかして跡取りをと考えとんでもないことを思いつく。
それは自分の夫クリスト。ミモザに取ったら義理父を受け入れさせることだった。
こんなの悪夢としか思えない。そんな状況で階段から落ちそうになって前世を思い出す。その時助けてくれた男が前世の夫セルカークだったなんて…
セルカークもとんでもない夫だった。ミモザはとうとうこんな悪夢に立ち向かうことにする。
短編スタートでしたが、思ったより文字数が増えそうです。もうしばらくお付き合い痛手蹴るとすごくうれしいです。最後目でよろしくお願いします。
【完結】地味な私と公爵様
ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。
端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。
そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。
...正直私も信じていません。
ラエル様が、私を溺愛しているなんて。
きっと、きっと、夢に違いありません。
お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
元王太子妃候補、現王宮の番犬(仮)
モンドール
恋愛
伯爵令嬢ルイーザは、幼い頃から王太子妃を目指し血の滲む努力をしてきた。勉学に励み、作法を学び、社交での人脈も作った。しかし、肝心の王太子の心は射止められず。
そんな中、何者かの手によって大型犬に姿を変えられてしまったルイーザは、暫く王宮で飼われる番犬の振りをすることになり──!?
「わん!」(なんでよ!)
(『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる