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第一章
マドレーヌの父親
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まだ、魔獣退治の時期は終わっていないし、アランの勝手でアルノー家に連れてこられてグランジエ家の兄妹は領地に戻った。アルノー家からのアレンが取り立てた婚約の違約金と共に、アレンからのマリアンヌに対する婚約の打診と共に。
『即、婚約とはいいませんが、マリアンヌ嬢と知り合う機会を下さい』
と本人からの手紙をクロードは預かってきた。
グランジエ家当主、ウージェーヌは難しい顔をしている。
「一度けちの着いた家との婚約かぁ」
「とうさん、マリアンヌも悪い気はしてなさそうです。何度か話した印象は地味だけど地に足着いた男ですよ。……あのくらい落ち着いた男ならマリアンヌともやっていけそうだとは思う」
ウージェーヌは重々しく、本人はそのつもりで、頷いた。がどうにも軽く見えるのがこの家の父親、ウージェーヌであった、背が高く、筋肉質ではあるが細身でかなり色の薄い金髪と紫に近い青い目の優男である。そう、マドレーヌによく似ている。
これでも腕の良い狩人である。今期の魔獣退治は冒険者をあまり雇っておらず、日々疲れ切った顔で遅くまで魔獣を狩っている。
「俺とフロランも帰ってきてるし、マリアンヌもいるし。冒険者の数考えたらマリアンヌだけでもいけるから母上にも出てもらうしじい様も使おう」
クロードが決める。
「とうさんは……今日は休んで明日は王都に飛んでくれ。公爵様がお待ちだし」
「えー、めんどい」
「おやじ……」
「ま、金を取り戻してくれたクロードに免じて行ってくるよ。クロード、ありがとうな」
「お、おう」
濃い金茶の髪に青い瞳のクロードは、少し照れたようでふてくされてもみえるが、父親は照れているだけだと欲さ狩ってた。
「そうだ、とうさん」
「ん?」
「マドレーヌには王都から動かないように指示をしました。……んで、通信費は全部グランジエ家につけるように、王都のギルドと話をつけてあります」
「おお、いい手配だね。……マドレーヌの事だから釘を刺しとかないと、動き回るからな」
親子は顔を見合わせて笑った。
「マドレーヌは行動的だからな」
「とうさん……良いように言いすぎ。俺はちょっと胃が痛い」
ウージェーヌは肩を竦める。
「あの子は生まれる性別間違えたんだろう。……やっぱ、冒険者か騎士か、進路はどっちかだな。令嬢としての将来は潰れてるからね」
「そう、ですね……」
正確ではないが出奔した令嬢の行く末暗い。婚約なぞ二度とないだろう。それこそクロードやフロラン、マリアンヌの縁談にも影を落すであろうと予想されている。それを考えるとマリアンヌの求婚者がアルノーの長男というのは都合は悪くないな、とウージェーヌは頭を掻きながら考えていた。
「後は頼んだよ」
ウージェーヌは妻好みの紫に金の組みひもと合わせたシンプルなスタンドカラーの上着と同じ色合いのパンツを合わせて忙しくて切れなかった髪をスーツと同じ色合いのリボンでまとめている。クロードはあれで4人の子持ちかぁと父親を眺めていた。
ウージェーヌがギルドに着くと見覚えのある冒険者集団達が居た。
「ウジェ、いいタイミングだな」
その集団の代表がウージェーヌに説明する。
「公爵さんと伯爵さんからの依頼で手伝いに来た。ギルドの依頼票は出てないしどうしたもんかってって想ったら呼び出されてね。『諸々の詫びの一つだ』って俺達が手伝いに来たのさ」
ウージェーヌは人好きのする笑顔を浮かべた。
「正直ありがたい。……うちからもボーナス出すから、励んでくれ」
「おうよ。マリアンヌちゃんのウサギのパイも楽しみだ」
ウージェーヌは本気でいい顔で笑う。
「それ、マリアンヌに言ってやってくれ。喜ぶから」
『即、婚約とはいいませんが、マリアンヌ嬢と知り合う機会を下さい』
と本人からの手紙をクロードは預かってきた。
グランジエ家当主、ウージェーヌは難しい顔をしている。
「一度けちの着いた家との婚約かぁ」
「とうさん、マリアンヌも悪い気はしてなさそうです。何度か話した印象は地味だけど地に足着いた男ですよ。……あのくらい落ち着いた男ならマリアンヌともやっていけそうだとは思う」
ウージェーヌは重々しく、本人はそのつもりで、頷いた。がどうにも軽く見えるのがこの家の父親、ウージェーヌであった、背が高く、筋肉質ではあるが細身でかなり色の薄い金髪と紫に近い青い目の優男である。そう、マドレーヌによく似ている。
これでも腕の良い狩人である。今期の魔獣退治は冒険者をあまり雇っておらず、日々疲れ切った顔で遅くまで魔獣を狩っている。
「俺とフロランも帰ってきてるし、マリアンヌもいるし。冒険者の数考えたらマリアンヌだけでもいけるから母上にも出てもらうしじい様も使おう」
クロードが決める。
「とうさんは……今日は休んで明日は王都に飛んでくれ。公爵様がお待ちだし」
「えー、めんどい」
「おやじ……」
「ま、金を取り戻してくれたクロードに免じて行ってくるよ。クロード、ありがとうな」
「お、おう」
濃い金茶の髪に青い瞳のクロードは、少し照れたようでふてくされてもみえるが、父親は照れているだけだと欲さ狩ってた。
「そうだ、とうさん」
「ん?」
「マドレーヌには王都から動かないように指示をしました。……んで、通信費は全部グランジエ家につけるように、王都のギルドと話をつけてあります」
「おお、いい手配だね。……マドレーヌの事だから釘を刺しとかないと、動き回るからな」
親子は顔を見合わせて笑った。
「マドレーヌは行動的だからな」
「とうさん……良いように言いすぎ。俺はちょっと胃が痛い」
ウージェーヌは肩を竦める。
「あの子は生まれる性別間違えたんだろう。……やっぱ、冒険者か騎士か、進路はどっちかだな。令嬢としての将来は潰れてるからね」
「そう、ですね……」
正確ではないが出奔した令嬢の行く末暗い。婚約なぞ二度とないだろう。それこそクロードやフロラン、マリアンヌの縁談にも影を落すであろうと予想されている。それを考えるとマリアンヌの求婚者がアルノーの長男というのは都合は悪くないな、とウージェーヌは頭を掻きながら考えていた。
「後は頼んだよ」
ウージェーヌは妻好みの紫に金の組みひもと合わせたシンプルなスタンドカラーの上着と同じ色合いのパンツを合わせて忙しくて切れなかった髪をスーツと同じ色合いのリボンでまとめている。クロードはあれで4人の子持ちかぁと父親を眺めていた。
ウージェーヌがギルドに着くと見覚えのある冒険者集団達が居た。
「ウジェ、いいタイミングだな」
その集団の代表がウージェーヌに説明する。
「公爵さんと伯爵さんからの依頼で手伝いに来た。ギルドの依頼票は出てないしどうしたもんかってって想ったら呼び出されてね。『諸々の詫びの一つだ』って俺達が手伝いに来たのさ」
ウージェーヌは人好きのする笑顔を浮かべた。
「正直ありがたい。……うちからもボーナス出すから、励んでくれ」
「おうよ。マリアンヌちゃんのウサギのパイも楽しみだ」
ウージェーヌは本気でいい顔で笑う。
「それ、マリアンヌに言ってやってくれ。喜ぶから」
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