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第三章

魔力は吸収される

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 意外とぐっすり寝たアルはすっきりと起きた。身支度を自分で済ませて客間に向かう。客間の長椅子の上にはジェラール、一人掛けの椅子の上にウージェーヌ、エリクはおらず男二人共かなり深い眠りについている。
 男性の使用人が静かにアルを食堂に案内してくれる。食堂は騎士達で溢れていた。

「アル殿下」

フロランが声をかける。

「朝食は守護者様の所に行きませんか」

「いいな」

フロランが近くにいた使用人になにか言う。

「朝食とおやつをバスケットに詰めてくれますよ。今日はベリーのパイがあるそうです」

前日の陰惨な空気は払拭され日常の空気が戻ってきている。



 守護者の樹の横にテーブルと椅子、ハンモックが用意されてる。

「ちょっといいシェリーもありますよ」

その言葉でぽやぽやと守護者が出てくる。フロランはにっこりして精霊と遊ぶ時用の小さ
な器をマジックボックスから出す。

「これだと直接使えるだろうと精霊が言ってます」

精霊が予備の器を守護者用にしろとフロランに指示していたのだ。この小さな器たちはマリアンヌとマドレーヌのお人形用のものだったがマドレーヌは5つになるかならぬかで人形を卒業したし、マリアンヌもさすがに現在は使っていない。

アルが見ると守護者は満足そうだ。

「それ持ち帰ってくださいね。グラスとティーカップと小皿くらいしかないですけど」

「……王宮にいる守護者は普通のサイズなんだが」

アルが言う。

「そうなんですか。……えーと」

守護者が言った事をアルが伝える。

「このセットはここでつかう特別なものにしたい。ついてはフロラン殿の管理下に置いておいてくれと」

「わかりました、今日はここでゆっくりされるんですよね?」

「守護者がそう望んでるからそうする予定」

フロランが頷く。

「まずは朝食にしましょう、シェリーと猪肉のハムで」

アルも頷く。フロランは細いスプーンを使って上手に小さなグラスにシェリーを注ぐ。

「猪肉は」

「ここの魔の森じゃないところで狩ったものです。領内で動物の被害も結構あるんで俺かクロードが出ることが多いですね。……腕的に歯マドレーヌで十分なんですが農民の方だとマドレーヌだと不安みたいで。……オヤジが行っても不安そうにする人は結構いますね」

クロードとフロランは祖父に似ているのでウージェーヌより随分男性的である。ウージェーヌの年齢を考えると中性的なのに気持ち悪くないのは逆に気持ち悪いのではとアルはぼんやり考えていた。

「ウジェ殿は……守護者とか精霊とか見えてるみたいだな」

アルの言葉にフロランが頷く。

「認めた事はないんですけどね。あの人は神官長や冒険者の魔法使いに魔法を習ったりしててよくわかんないんですよね。俺達は攻撃魔法を使うと思わぬ被害を出したりするから早々に魔法は諦めるんですけど……。だから生活魔法なんかは使い放題になるわけで」

アルはうんうんと頷いている。

「俺もマドレーヌ嬢に習って生活魔法を覚えたよ。王宮では生活魔法なんて使う事ないしな」

「そういうのは全部使用人が?」

アルは皮肉に笑う。

「どうもな、魔法で出来る事を手仕事で他人にさせる事を『贅沢』というらしい」


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