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第四章

薔薇の温室

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 マドレーヌ達は領地に戻ったがエディとロゼはこのシーズン中は北の領地に留まるという。クラン全体で北の領地を手伝う事に決まったのだ。マドレーヌも学業の遅れを取り戻したら週末は北に行くとロゼに言った。
 しかし約束は果たされなかった。補習で週末のうち一日は潰れるわ、空いている日は都度都度、レアやセイラ妃とのお茶会だった。
 こうやってお茶会に呼ばれている間。陛下がエリクや父親やジェラールと共に動いている事を知らなかった。お茶会はネイサンとロクサーヌも一緒だった。

「ネイサン、香水変えたの?」

「代えてないよっていうか香水つけてない」

「へぇ、いままで焦げたような嫌な臭いがしてたけど、今日は何にも匂わないよ」

レアの眼が丸くなっている。ロクサーヌがにっこり笑った。

「うちに来てから食べる野菜もふえたからかも。ブロッコリーも食べられるようになったしね」

ネイサンが顔を赤くする。

「ばらさないでよ」

ロクサーヌとネイサンは仲が良い。

「ネイサン殿下、変わられましたね」

マドレーヌがぼそっと言い、ネイサンの顔はますます赤くなる。

「あの……その……」

「もう気にしてませんから。……ロクサーヌ先輩の為だって判りましたし」

「本当にごめんなさい」

ネイサンはがばっとテーブルに手を突き頭を下げた。

ネイサンとロクサーヌとセイラ妃が話しているのでレアとマドレーヌはレアの育てている薔薇を見に行った。温室で育てているので今の季節なのに美しく咲き誇っている。マドレーヌもレアも他人の視線を感じるがそこには誰もいなかった。

「マドレーヌ」

「レア様」

せーの。と二人が振り返った所には誰もいなかった。そこには無属性の大精霊と守護者がいたがレアにもマドレーヌにも姿がみえない。

『勘のいい娘たちだな』

守護者の言葉に大精霊は頷いた。二人はなにか内緒話をして大精霊はふわふわとどこかに行った。守護者はマドレーヌたちとは違う位置の薔薇を見に行った。人だった時の妻に捧げられた薔薇だった。この薔薇の逸話のような美しく気高い女ではなかった。マリアンヌのような家仕事が好きで正妃になるような女ではなかった。華やかさに欠けると言われ守護者の幼馴染だったベルティエ家の少女にいびり倒され、枯れていったような女だった。
 出も白ってところは彼女に似合うなと考えていた。

「なんだ、またあんたか。貴族さんとかにみつからんようにな」

武骨な庭師だった。守護者を王宮に来てる貴族かなんかだとおもっているようだった。守
護者は頷くとゆるりと歩いて行った。
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