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第五章

グランジエ領での日々

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 「明日の夕食は殿下はどうします?」

居間でゆっくりと座ってフロランとアルは話している。

「どう、とは?」

「俺、守護者様の所で野営するんで」

アルはフロランが一日置きに守護者の樹の所で野営する意味を悟った。マリアンヌが食堂で皆と食事が出来るようにと自分が外れているのだ。フロランとアルの目が合う。

「……相手にわかってもらおうとおもわないのか?」

アルがそう言うとフロランは面白気に唇を歪める。

「自分が好きでやってる事です。理解は求めてない」

「……なんかちょっと俺が悔しいんだが」

「被害者面されるのも見てて気持ちはよくないし。悲劇のヒロインごっこに付き合えるほど俺、気は長くないしで丁度いいんですよ、こういう距離」

「うちのレアは子犬みたな子だから甘えたい、真面目な話、遊びたいとか判りやすい子でな。だから8つ位かな、貴族子女との最初のお茶会があったんだ。その時はミシェル妃の親戚筋の子爵子息って事で出たんだ。色々遠い目になったよ」

アルが笑う。

「マリアンヌはそういう貴族子女に虐められて初等部で学校にいけなくなって。12~3くらいからマドレーヌと一緒なら王都にも行けるようになったんだけど。まぁ、そのおかげでマドレーヌにも多少の女の子らしさがりかいできたようだけど」

フロランが遠い目をする。

「今回の事でマリアンヌも被害者なのは判る、理解はしてます。でもこの嫌悪感は長年培ったものが噴出してるんで……子供時代にもっと爆発しておくべきでした」

フロランは溜息をつく。マリアンヌは一年遅れて生まれたマドレーヌと違い少し体が弱くて家族中のお姫様で育てた事やそれが故の万能感をもったまま初等部入学、女子からそうすかんを喰らっての挫折があり、クロードも母親も祖母もマリアンヌにかかりきりになったこと。

「そんなこんなで俺とマドレーヌはほっとかれました。俺はマドレーヌを祖父に任せて魔の森をふらふらすることが増えた。そこで精霊との契約があったりね」

アルはじっと耳を傾けている。

「精霊に言われてその日のうちに父親に精霊と契約したことを話したら、そく精霊に体を乗っ取られてたのが初めてだったかな。で、自分そういう体質であることや、近づいてはいけない場所の見極め何かを習いながら森をうろついて……、俺とマドレーヌは一緒にとあるクランに一年預けられたんだ。俺とクロードで行く予定だったけど、マドレーヌも行きたいってハンストに入ってね」

フロランは思い出して笑っている。

「まぁ、俺が森のベリーなんかをこっそりマドレーヌに食べさせてたのはじーちゃんは知ってたんだけど。で、マリアンヌが俺と二人は嫌だってごねてね。マリアンヌの言葉は無条件で聞き入れるクロードが自分の代わりにマドレーヌを預けろって言う事で二人でとあるクランについて春夏秋冬を狩りですごしたって感じ」

「兄弟って難しいよな」

アルはネイサンと他の兄弟との仲の悪さを思い出してふっと溜息を着いた。特にジュストとネイサンの中が悪いのだ。ミシェル妃と正妃の仲の悪さが影響しているのだろうな、とアルは思っている。

「今日はギルドの支部の食堂で喰うか」

アルの提案にフロランは乗った。



 支部の食堂に行くとどんちゃん騒ぎの最中で、そこにいた給仕人に訊ねると、

「前の領主様が皆のねぎらいにって今日一日の支払いを全部持ってくれるってんで皆でたのしんでるのさ。ほら、フロラン様も客人も」

と大きなエールのカップを渡される。何回目になるのか、かんぱーいと掛け声がかかり、皆一斉に杯を開けた。わーっと声が上がり、そこここに勝手におつまみが配られ、腹に溜まる肉や大きく武骨なパンもチーズも配られている。
 フロランとアルは笑いあってその群れに二人で混ざった。
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