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クランに関わる人間関係
34 北の侯爵の領地の出来事 1
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「さすがに春が近いな」
ヴァイキーが雪の下にあった山菜に気が付く。
「それ見つけたら摘んどいて。持って帰ると宗介がてんぷらにしてくれるって」
最近のレッド、ヴァイキー、カイは拠点から北の侯爵の元へ出勤していた。北の侯爵は拠点と自宅の一室を門で繋げてもらって抜き打ちで拠点を訪れるのを楽しみにしていた。
何の事はない、宗介と飲む東の国の酒が目当てだったのである。
「ふむ。なら私が草摘みをしておこう。君らは銀狼狩りにいそしんでくれ」
「銀狼が狼人だったら?」
侯爵にレッドが確認を取る。
「生きて捕縛……じゃなくて丁重に連れてきてくれ。狼化できる人間なら王族か王族の血が入った高位貴族なので我が領を荒らす理由を訊ねたい」
「りょーかい」
「おらよ」
レッド達に捉えられた一人の狼人がいた。名前はシルバーだと言ったのでレッドは顔を顰める。
「ヤなやつ思い出した」
「あっちはこういう事しないだろ?」
「するわけがねぇ。あいつは道徳的な所はうるさい。ゴールディの方が緩い」
「あっちのシルバーは怠惰なだけか」
魔剣トラヴィスがかかかっと笑っている。侯爵も三人も慣れたものだが狼人シルバーはこの場にいる人数外の声に驚く。
「で、あの狼がこの人?」
そんな狼人の驚きを無視して侯爵が訊ねる。
「正確には飼い主。狼は前庭に土でドーム作って空気穴開けて入れてある。……坊主も登れないようにしてあるから」
「お心遣い痛み入る」
侯爵はふっと息を吐く。侯爵とアイリスの間の子供は今5才でいたずら盛りである。普段は裏庭で遊んでいるが気まぐれに前庭にも来るので狼の織などがあれば手を突っ込んで仕舞う事は想像に難くない。
「坊主も元気だからな。明日は里山に連れて行こうか?」
カイが提案すると侯爵も頷く。
「妻が喜ぶ。というか近いうちに拠点に連れて行っても?」
「遊ぶなら拠点がいいか。雪ないからな。あと奥方が風呂を所望だっけ?」
「そう。うち、改築中だからな」
「おい」
狼人が声を上げる。
「お前ら、ぺらぺら喋りやがって」
「ん?君もしゃべりたいのかな?」
侯爵がしれっと揶揄う。ヴァイキーがその場から離れている事に狼人は気が付かない。
「なんでこの土地を荒らすとか訊かないのか?」
狼人がさげすむように言うとレッドが答えてやる。
「本当の事を言うかどうかなんてわからないからな。その名前は擬態が上手い奴の名前だし」
「お前、シルバーって名前に恨み持ちすぎだろう」
狼人が呆れたように返すと、ヴァイキーと一緒に長い銀髪の性別の判らない麗しさの男が入って来た。
「僕の名前が何だって?」
ヴァイキーが雪の下にあった山菜に気が付く。
「それ見つけたら摘んどいて。持って帰ると宗介がてんぷらにしてくれるって」
最近のレッド、ヴァイキー、カイは拠点から北の侯爵の元へ出勤していた。北の侯爵は拠点と自宅の一室を門で繋げてもらって抜き打ちで拠点を訪れるのを楽しみにしていた。
何の事はない、宗介と飲む東の国の酒が目当てだったのである。
「ふむ。なら私が草摘みをしておこう。君らは銀狼狩りにいそしんでくれ」
「銀狼が狼人だったら?」
侯爵にレッドが確認を取る。
「生きて捕縛……じゃなくて丁重に連れてきてくれ。狼化できる人間なら王族か王族の血が入った高位貴族なので我が領を荒らす理由を訊ねたい」
「りょーかい」
「おらよ」
レッド達に捉えられた一人の狼人がいた。名前はシルバーだと言ったのでレッドは顔を顰める。
「ヤなやつ思い出した」
「あっちはこういう事しないだろ?」
「するわけがねぇ。あいつは道徳的な所はうるさい。ゴールディの方が緩い」
「あっちのシルバーは怠惰なだけか」
魔剣トラヴィスがかかかっと笑っている。侯爵も三人も慣れたものだが狼人シルバーはこの場にいる人数外の声に驚く。
「で、あの狼がこの人?」
そんな狼人の驚きを無視して侯爵が訊ねる。
「正確には飼い主。狼は前庭に土でドーム作って空気穴開けて入れてある。……坊主も登れないようにしてあるから」
「お心遣い痛み入る」
侯爵はふっと息を吐く。侯爵とアイリスの間の子供は今5才でいたずら盛りである。普段は裏庭で遊んでいるが気まぐれに前庭にも来るので狼の織などがあれば手を突っ込んで仕舞う事は想像に難くない。
「坊主も元気だからな。明日は里山に連れて行こうか?」
カイが提案すると侯爵も頷く。
「妻が喜ぶ。というか近いうちに拠点に連れて行っても?」
「遊ぶなら拠点がいいか。雪ないからな。あと奥方が風呂を所望だっけ?」
「そう。うち、改築中だからな」
「おい」
狼人が声を上げる。
「お前ら、ぺらぺら喋りやがって」
「ん?君もしゃべりたいのかな?」
侯爵がしれっと揶揄う。ヴァイキーがその場から離れている事に狼人は気が付かない。
「なんでこの土地を荒らすとか訊かないのか?」
狼人がさげすむように言うとレッドが答えてやる。
「本当の事を言うかどうかなんてわからないからな。その名前は擬態が上手い奴の名前だし」
「お前、シルバーって名前に恨み持ちすぎだろう」
狼人が呆れたように返すと、ヴァイキーと一緒に長い銀髪の性別の判らない麗しさの男が入って来た。
「僕の名前が何だって?」
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